
『I am Sam アイ・アム・サム』 | 親子の絆は「愛こそすべて」
“いい親”ってどんな親?
時々ふと思う。いい親ってどんな親だろう? 子どものために親ができることって何だろう?
子育てに決まった答えなんかないし、誰もが迷いながら試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。
でも、答えはなくてもヒントならあるはず。知的障害者の父と聡明な娘の絆を描いた『I am Sam アイ・アム・サム』は、そんな気づきをたくさん与えてくれる感動作です。
ビートルズの名曲カバーと共に謳う父娘の深い絆
知能が7歳程度のサムは、ホームレス女性との間に赤ちゃんを授かり、ルーシーと名づけた娘を男手一つで育てることに。サムの惜しみない愛情と仲間たちの協力もあって、ルーシーは愛らしく成長していきます。
しかし7歳の誕生日を迎えて父の知能を追い越すようになったルーシーは、サムの養育能力を疑う児童福祉局によって保護されてしまいます。
突如引き離されてしまった2人の運命は、「もしも自分がサムの立場だったら」と想像すると、胸をかきむしられるような思いになること必至。父の知能を追い越すことを恐れて勉強を拒んだり、何度も逃亡を繰り返すルーシーがとにかく健気で、撮影時に6歳だった子役ダコタ・ファニングの名演技と相まって涙なしでは見られません…。
そうした感動をさらにかき立てる隠れた主役が、全編に流れるビートルズのカバー曲の数々。単なるBGMにとどまらず、その歌詞でキャラクターたちの心情を雄弁に物語ってくれます。
あなたの父親についてどう思う?と児童福祉局に尋ねられたルーシーが「愛こそはすべてよ」と答えるセリフに至るまで、全編に掛けられた“ビートルズの魔法”にもぜひ注目してください。
親子の関係は「愛こそがすべて」
敏腕弁護士を味方につけ、ルーシーを取り返す裁判に悪戦苦闘するサムですが、娘を愛する気持ちだけはどんな時も揺るぎません。こちらはビートルズの楽曲とは関係ありませんが、サムが娘に注ぐ愛情のカタチについて物語る印象的なセリフがあります。
「僕にはずっと考えてきたことがある。
いい親になるには、いったいどうすればいいかと。
その答えは、不変であること。
忍耐強いこと。
話しをよく聞くこと。
たとえ内容が分からなくても聞いている振りをすること。
それから、愛することだ」
完璧な親じゃなくていい。正面から向き合って惜しみなく注いだ愛情は、子どもの心の中で花開き、親子の絆を深いものにしてくれる。
父親として決して完璧とは言えないサムが身をもって証明してくれるからこそ、見ていて誰もがそう信じることができるはずです。
<作品情報>
『I am Sam アイ・アム・サム』(2001年) /アメリカ / 上映時間:133分
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