パパの腰を守れ!腰痛を防ぐ育児動作のキホン

パパの腰を守れ!腰痛を防ぐ育児動作のキホン

育児

目次[非表示]

  1. あれ?なんか最近腰が痛いな…
  2. 腰痛になりやすい育児・家事動作とは?
  3. 腰痛持ちパパは要チェック!こんな身体の使い方、していませんか?
    1. 抱き上げ動作
    2. オムツ替え
  4. 腰痛予防のためのお手軽ストレッチ
    1. ①梨状筋ストレッチ
    2. ②広背筋ストレッチ
  5. おわりに

あれ?なんか最近腰が痛いな…

育児に仕事に、と一日中忙しいパパ・ママの身体のお悩みでとても多いのが腰の痛み。実はふだん何気なく行っているお子さんの世話や家事の中には、気をつけて慎重にしないと腰に大きなダメージを与えてしまう危険な動作がトラップのようにたくさん隠れています。

特に乳児〜幼児の小さいお子さんをもつパパのお話を聞いてみると、ママよりもパワーがあるぶん、お世話をする時にあまり自分の姿勢を考えずに「エイヤッ」と力任せで強引な動きをしてしまい、腰を痛めている方が多いようです

そこで今回は、理学療法士の筆者が実際にリハビリの現場で腰痛に悩む患者さんに指導してきた内容をもとに、腰に負担をかけない身体の使い方、腰痛を予防するストレッチ方法などを紹介していきます。実は筆者も3児の子育て中(6歳、3歳、1歳)なので、実際に自分の体験談も含めてお話ししていきますよ。

腰痛になりやすい育児・家事動作とは?

腰の部分の背骨は「腰椎」と呼ばれており、横から見るとゆるやかに前にカーブした形状になっています。これを「生理的前弯」といいます。
腰を痛める動作の多くは、この自然なカーブが崩れて腰が反りすぎたり、逆に丸まりすぎてしまい、腰の筋肉に負担がかかることで起こっています。

パパが普段の生活でやってしまいがちなのは、腰が丸まった状態で腕や肩に力を入れてしまう動きです。特に赤ちゃんのお世話をする時に無意識のうちに腰を丸めてやってしまいがちな動きといえば…

「抱き上げ動作」「オムツ替え」の2つ


「腰が重たくて…」というパパに詳しく話を聞いてみると、こうした動作で腰に負担をかけ続けているケースがとても多いです。

では、実際に画像を見ながら「腰に負担がかかりやすいNG動作」と「腰に負担がかかりにくい理想的な動作」を比べて確認していきましょう。「あっ、この動きが腰痛の原因だったかも…」という発見があるかもしれませんよ。

腰痛持ちパパは要チェック!こんな身体の使い方、していませんか?

抱き上げ動作

お子さんにより個人差はあると思いますが、0歳から3歳くらいの時期は「トイレの便座の乗り降り」「お風呂での浴槽の出入り」「電動自転車の乗り降り」など、パパがお子さんを抱き上げる機会は日常生活でたくさんありますよね。

実は筆者も電動自転車に次女(3歳児)を乗せる際に、朝の忙しい時間帯だったこともあり、中腰で腕の力に任せて強引に持ち上げてしまい、腰に「ピキッ」と来たことがあります。幸い「ぎっくり腰未遂」でしたが、一瞬「やってしまったかな?」と冷や汗をかきました。

では、腰に負担がかかりやすい抱き上げ方を見てみましょう。
この画像のように赤ちゃんがパパの身体から離れているほど、腰にかかる負担は大きくなります。運動学的に説明すると、支点(腰椎)と作用点(赤ちゃんを持ち上げる手)の距離が長いほど、力点(腰の筋肉)にかかるストレスがかかっていることになります。
ですから、まず何より重要なのは赤ちゃんと自分の距離をできるだけ短くすること

そのためには上の画像のように片膝をついて、自分の体幹と赤ちゃんを密着させた状態で抱き上げる方法が効果的。腰が丸まらないように意識しながら下半身全体のパワーを使い、自分の身体に赤ちゃんを引き寄せるようにして立ち上がるイメージです。屋外など膝がつけない環境でも、片足を前に出して膝を曲げ重心を落とすことで、腰への負担はかなり減らすことができます。

こうした身体の使い方は「たかいたかい」など、パパが赤ちゃんを抱き上げて遊ぶ時にも同じように応用できますので、一度コツをつかんでしまうと、お子さんと遊ぶ時にもとても役立ちますよ。

腕力に自信があるパパの場合、ついつい手先の力でグイッと持ち上げたくなると思いますが、強引な動きを続けているといつかは腰を痛める日がやってきます。自分の身体を守るために上手な身体の使い方をマスターしていきましょう。

また、抱き上げる前に自分が動くスペースがあるかしっかり確認しておくことも大事です。浴槽の出入りや車の乗り降りなど、狭いスペースで抱き上げなければならないこともありますので、あらかじめ荷物を寄せて自分の動くスペースを確保するなど、事前のひと工夫で腰にかかる負担は大きく変わってきます。

オムツ替え

オムツ替えも腰に負担がかかりやすい動作の代表です。
この画像のように床にべたっと座った姿勢でのオムツ替えでは、背中が大きく丸まり、骨盤が後傾しやすくなるため、この状態で前に手を伸ばしてオムツを替えていると、腰の筋肉にはより大きな負担がかかってしまいます。

では背中が丸まらないように、正座した状態でのオムツ替えはどうでしょうか。骨盤自体は正座することで安定感がありますが、この画像のように背骨全体が丸まりやすくなるため、結局は腰を痛めやすくなってしまいます。
子育てパパにおすすめなのは下の画像のような身体の使い方。
片方の足を立てて開くことで、赤ちゃんとパパとの距離をできるだけ近づけています。また骨盤の位置が安定することにより、背中の丸まりも改善しています。先ほどの2つの画像と比べ、腰の背骨のカーブが自然な状態になっているのが一目瞭然ですね。

なお、赤ちゃんの月齢が上がってくると、オムツ替え中に動き回ったり寝返りをしてしまう場合も増えてきます。このような場合も、パパが姿勢を崩して腕の力だけでおさえようとすると、腰周りの筋肉には大きな負担がかかります。面倒でもパパが自分の座る位置を修正して、できるだけ赤ちゃんに近づいてからオムツ替えの続きをするように習慣づけていきましょう。

ただし、「もともと腰痛がある」「ぎっくり腰を何度かしたことがある」というようなパパはオムツ交換台など、腰を痛めやすい前かがみの姿勢を避けることができる道具を使うのもひとつの方法です。ご自分の身体の状態に合わせて、部屋の環境や使うツールを検討してください。

腰痛予防のためのお手軽ストレッチ

腰痛を予防するストレッチというと、背骨に近いところの筋肉をほぐすことにどうしても目が向きがちですが、実は腰に隣接しているお尻周り、わき腹から背中にかけての筋肉をしっかり柔軟に保つことが、結果的に腰への負担を減らすことにつながります。

今回は筆者がリハビリの現場で実際に患者さんに教えているストレッチを2種類ご紹介します。どちらも場所を選ばず簡単にできるので、ぜひ今日から取り入れてみてくださいね。

①梨状筋ストレッチ

椅子に座った状態で下の画像のように膝を外側に開いた状態で左足を右太ももの上に載せます。そのまま身体を前にゆっくりと倒し、「痛きもちいい」ところでストップ。息を止めずにそのまま30秒キープします。次に、足を反対にして同じ動きを繰り返します。

このストレッチで、お尻の奥にある「梨状筋」という筋肉がゆっくり伸ばされます。梨状筋を柔らかく保つことで、立つ・歩くといった動作で腰にかかる衝撃がうまく緩衝され、腰への負担を軽くすることができます

※青矢印:動く方向 赤い丸:伸びる部位

②広背筋ストレッチ

まず、一般的なサイズのフェイスタオルをご用意ください。椅子に座り、タオルを丸めてピンと張った状態で頭の上に挙げます。ここから下の画像のように右肘を曲げながら身体を右側にひねっていきます。

上半身は「真横に倒す」というよりも「右後ろ側にねじりながら倒す」というイメージで行ってください。お尻のストレッチと同じように「痛きもちいい」ところでストップし、息を止めずにそのまま30秒キープします。次に、左肘を曲げながら身体を左側にねじり、反対側の広背筋もストレッチします。

このストレッチで、背中からわき腹にかけて走行している「広背筋」という筋肉がゆっくり伸ばされます。硬くなりがちな背中の筋肉が広い範囲でほぐれ、姿勢を伸ばし腰への負担を減らすことができます。タオルがたるんでしまうと伸び感が少なくなりますので、ピンと張った状態で行うように意識しましょう。

※青矢印:動く方向 赤い丸:伸びる部位

どちらのストレッチも自宅はもちろん、会社のデスクや公園のベンチなど、椅子に座れる環境であればどこでもできますので、気軽に試してみてくださいね。

左右両方のストレッチを1セットとして、1日3回を目標に生活に取り入れてみましょう。1週間も続けると、身体の変化が感じられるようになってくると思いますよ。

おわりに

今回ご紹介したように、子育てパパの腰の痛みは何気ない育児中の身体の使い方が原因になっていることが多いものです。同じことはママの腰痛にも当てはまりますので、ぜひママにもこの記事で紹介した身体の使い方やストレッチをシェアしてみてくださいね。

※本稿における専門家による情報は、診断行為や治療に代わるものではなく、また正確性や有効性を保証するものではありません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、病院を受診し医師から適切な診断と治療を受けるようにしてください。

参考文献:J. Castaing,J. J.Santini 共著 井原秀俊,中山彰一,井原和彦 共訳「図解 関節・運動器の機能解剖 上肢・脊柱編」(協同医書出版社、1986)

文・写真:奥山和人