もしもパートナーに突然先立たれて、一人で子どもを育てることになったら？　どんな人にも、決して起こりえないことではありません。

今まで当たり前のように交わしていた会話ができなくなり、大切な人がいなくなった部屋には埋めようのない“空白”が生じる。そして、会社で働きながら男手一つで子どもを世話しなければいけない…。

そうしたシングルファザーの苦難と、それでも親子で懸命に生きていく姿を描いた、重松清原作の映画『ステップ』が7月17日（金）から劇場で公開されます。パパにとって涙なしでは見られないこの作品の見どころをご紹介します。

結婚3年目、30歳という若さで妻の朋子を病気で突然亡くした健一。物語はその1年後に健一が再出発を決意するところから幕を開けます。

営業部から総務部に異動することでフレックス勤務を活用し、2歳の娘・美紀を保育園に預けながら仕事と子育てを両立させようとしますが、時間のやりくりは毎日ギリギリ。会社では早く帰ることへの負い目を感じ、家でも心休まる暇がなく家事の合間についうたた寝。さらに娘がイヤイヤ期に差しかかるなど、思うようにいかないことの連続にイライラすることも。それでも周りに支えられながら少しずつ前に進もうとする“残された者たち”の10年間の歩みを、温かく見守るように物語は綴られていきます。

自信が持てない子育ての悩みを打ち明けたくて、また突然先立たれた心の空白を埋めるかのように、遺影の妻と向き合いながら日々の生活を報告する健一。彼が否応なく迫られた“ワンオペ育児”の過酷さと相まって、見ているだけで胸が痛くなります。

子どもの異変に気づくことができなかったり、父親ではどうにもできないことに直面し思い悩む。それでも「男手一つの子育てをギブアップしたくない」という意地を貫き、苦難の数々と愚直に向き合いながら大切なことに気づいていく──。そうやって成功と失敗を体当たりで繰り返し、子どもを育てながら自らも父親として成長していく様は、正解のない子育てに悩むすべての人たちの共感を誘うことでしょう。

そんな主人公の健一を演じるのは、世代屈指の個性派俳優として知られる山田孝之。これまでエキセントリックな役柄を演じることが多かったものの、今回は実年齢と重なる等身大の男性。初のシングルファザー役ではあるものの、「素の山田孝之を出した」と自ら認めるほどの柔らかい表情で、一人のパパを自然体で熱演しています。

この物語が見る者の心を熱く揺さぶるのは、単なるパパの子育て奮闘記に収まっていないから。残された父と娘が、どのように妻の不在と折り合いをつけながら新たな一歩を踏み出していくかを、10年という歳月をかけて丹念に描いているところも大きな感動ポイントです。

この世からいなくなったとはいえ、家には妻の写真や暮らしていた痕跡があり、いるはずのない妻の気配も確かに漂っています。そうした環境の中で、妻が残された自分たちを見守ってくれていることをしっかり理解した上で、健一と美紀はこれからの家族のあり方を一緒に模索していくのです。物語のタイトルさながら、少しずつ前へ“ステップ”を踏み出し続けながら。

たとえ一足飛びに“ジャンプ”できなくても、ゆっくり一歩ずつ“ステップ”していけばいい。その積み重ねが家族の絆を深めるはず──。そんな希望のメッセージをじっくり噛みしめながら、夫婦の関係、そして親子の関係を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

『ステップ』（2020年） ／日本／ 上映時間：118分
■原作／重松 清「ステップ」（中公文庫）
■監督・脚本・編集／飯塚 健（『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』、『笑う招き猫』、『虹色デイズ』）
■出演／
山田孝之、田中里念、白鳥玉季、中野翠咲、伊藤沙莉、川栄李奈、広末涼子、余 貴美子、國村 隼　ほか
■主題歌／秦 基博「在る」（AUGUSTA RECORDS/UNIVERSAL MUSIC　LLC）
■製作プロダクション／ダブ
■配給／エイベックス・ピクチャーズ
■コピーライト：©2020映画『ステップ』製作委員会
■公式サイト／www.step-movie.jp
■公式SNS／@step2020movie
7月17日（金）全国ロードショー

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