【専門家が解説】赤ちゃんの寝床は「ベッド」と「布団」どちらがいいの?

【専門家が解説】赤ちゃんの寝床は「ベッド」と「布団」どちらがいいの?

育児

目次[非表示]

  1. 赤ちゃんの寝床の種類
  2. 世界の赤ちゃんと日本の赤ちゃん
  3. 寝床の選び方
  4. 上手な布団の使い方
  5. 家族みんなが笑顔で過ごすために
赤ちゃんが健やかに成長していくには、十分な時間かつ良質な睡眠が不可欠。そうした睡眠を得るために親ができることは?そんなパパママの悩みを、妊婦と子どもの睡眠コンサルタントとして活動する和氣春花さんが解決するコラム連載。今回は「赤ちゃんの寝床」について解説いただきます。
家庭によって赤ちゃんの寝床事情はさまざま。ある先輩パパ(ママ)のお家ではベビーベッドを使っているけれども、別の先輩パパ(ママ)に聞くと、ベビーベッドでは赤ちゃんが寝てくれないためにすっかり物置になっているとか、寝床についてアドバイスを求めても人によって答えが違って、余計に悩んでしまうという経験をしたことはありませんか?

それ以外にも、布団で添い寝しているというお家もあれば、キングサイズやクイーンサイズのベッドに家族で寝ているというお家もあります。

また、欧米諸国では赤ちゃんは生まれてすぐに部屋を与えられて、両親の寝室とは別の子ども部屋で寝るのが多数派…というお話も、ご存知の方が多いかもしれないですね。

こういったさまざまな情報を耳にすると、いったいどんな寝床にすれば良いの? とますます疑問に思われるかもしれません。今回は、そんな「赤ちゃんの寝床」について解説をしていきます。

赤ちゃんの寝床の種類

一般的には赤ちゃんの寝床は3種類あります。
①ベビーベッド
②大人のベッド
③布団
さらに、これと掛け合わせる形で3種類の寝方があります。
①同室で添い寝
②同室で別の寝床
③別室
日本はお布団文化なので、赤ちゃんのうちから別室で寝かせるという習慣はまだまだ少なく、パパママ(もしくはママだけ)とお布団で添い寝しているご家庭が多いです。

世界の赤ちゃんと日本の赤ちゃん

日本の家庭では0~3歳の赤ちゃんが親と同じ部屋で寝ている割合が88.1%、添い寝の割合は69.7%という統計があります。
一方、米英豪では親と同じ部屋が22.0%、添い寝の割合は11.8%となっており、比較すると日本の赤ちゃんは親と一緒に寝ている割合が高く、睡眠に対する親の関与が高い傾向が見受けられます。

また、世界中の睡眠研究者が集まる学会で「アジアでは添い寝が一般的であり、日本ではほとんどの家庭で終夜添い寝であること、さらには4分の1の家庭では父親(夫)だけは別の部屋で寝ている」という話が出て会場がざわついていた、という話もあります。

日本では割とよく聞く話なのですが、世界の人からすると驚きの実態だそうです。確かに夫婦の関係を考えると同じ部屋のほうが推奨されるのでしょうが、仕事に行くパパをしっかり寝させてあげようという日本のママの配慮がこの実態からは伺えますね。

出典)子供の睡眠ガイドブックー眠りの発達と睡眠障害の理解ー(朝倉書店)

寝床の選び方

ここからは乳幼児睡眠コンサルタントの視点で「良い寝床」とは何かをご説明していきます。

米国小児科学会は「赤ちゃんの一番安全な寝床は親と同室で別の寝床で寝ること」としており、生後6ヶ月間、できれば1年間は同室で寝ることを推奨しています。

アメリカは日本と異なり、赤ちゃんが別室で寝る文化の国ですが、小児科学会から同室が推奨されたことで、パパママの認識も少しずつ変わってきているかと思います(別室がいけないということではありませんが、別室で寝る際はベビーモニターなどを設置して様子を見られるようにしておくことをおすすめします)。

これは何か突然のトラブルがあった際にも、同室のほうがすぐに気づくことができ、早めに対処することが可能だからです(乳幼児突然死症候群は生後6ヶ月以内の発症がほとんどとされています)。

赤ちゃんの寝床に最も大切なのは安全性です。安全性の確保された寝床とは、窒息の危険性がないこと、転落や誤嚥など怪我や事故の危険性がないこと、乳幼児突然死症候群のリスクが少ないこと、地震などの災害時の安全性が確保されていることなどが挙げられます。

これらを考慮すると最も安全なのは大人と同室でベビーベッドに寝ることです。ベッドの中に枕や柔らかいものを入れず、シーツをぴったりとして寝るのが最も安全だと言えます。

ですが、お布団でももちろんOKです。お布団の場合はハイハイやつかまり立ちなどをしてつまづいてしまうようなものを寝室に置かないこと、口に入れては危険なものに手が伸びないようにすることなど安全の配慮が必要になります。

大人のベッドで添い寝している方も少なくないとは思いますが、これは赤ちゃん用に作られた環境ではないため、転落の危険性やマットレスと壁の間に顔がはさまってしまったり、掛け布団をかぶってしまったりして窒息する危険性があります。添い寝をする場合は転落の心配がなく、距離をしっかり確保できるお布団をおすすめします。

赤ちゃん自身が快適に寝るためにも、パパやママが寝ながらハラハラドキドキしないためにも、安全な寝床の整備は非常に重要です。

上手な布団の使い方

お布団を並べて敷いていると、それぞれに布団が1枚ずつあったとしてもその境界を越えてパパやママのお布団に来てしまう子どもは多いです。

こうなると、パパやママの睡眠を妨害(突然の顔面かかと落としや寝つきのときにサワサワする癖など)されて、パパママの睡眠の質の低下が起こりやすく、また、赤ちゃん自身にとっても寝かしつけの癖がつきやすというデメリットもあります。

※寝かしつけの癖というのは、例えば添い乳やトントン、ママをサワサワしないと寝られないといったことです。
それを解決するためには、お布団で同室であっても境界線を引いて1人で寝られる空間を整備するのがおすすめです。

具体的にはベビーサークルで布団を囲う、というやり方です。
写真は我が家なのですが、我が家の場合は本当に寝室が狭いので少しでも空間を広くとるために2辺のみをサークルで仕切り、残りの2辺は元からの壁を使用しています。

スペースに余裕のある方は、しっかりと4辺囲っていただいた方が安定性は高いです。

ねんねトレーニング(子どもが1人で上手に寝つけるようになるためのトレーニング)を行う際にもこのように境界線が引かれていたほうが実行しやすく、成功への近道となります。

ベビーベッドはスペースが狭くて置けない!という方にはぜひ試していただきたい方法です。

家族みんなが笑顔で過ごすために

最初にも触れたとおり、日本では添い寝が主流です。添い寝は母乳育児をしているママにとっては夜間授乳がしやすく、添い乳もできるため楽な寝方ではあります。

安全性さえ保たれていれば、どれがいけないということはありません。ですが、いま快適な方法と将来的に快適になってくる方法は違ったりもします。

私自身、添い寝添い乳で寝かしつけをしていましたが、先ほどの写真のようにサークルで境界線を区切ったことで圧倒的に自分の睡眠の質が向上しました。子どもに触られない、邪魔されない、かかと落としが飛んでこないというのがこんなにも快適なのか…! と感動した覚えがあります。

夜間に母乳をあげることのないパパだからこそ、そういった長期的な視点で寝床の改善を検討してみるのも良いかもしれません。もちろん、いま頑張っているママへの労いの言葉やママの気持ちを汲み取ることは忘れないでくださいね!
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