【専門家監修】パパの授乳はメリットがたくさん!知っておきたい授乳のやり方とコツ

【専門家監修】パパの授乳はメリットがたくさん!知っておきたい授乳のやり方とコツ

育児

目次[非表示]

  1. 産後のお世話をママだけに任せると、ママの負担が激増!
  2. パパの授乳は、パパにも赤ちゃんにもメリットがある
  3. 搾乳した母乳や粉ミルクの与え方と注意点
    1. 搾乳した母乳の飲ませ方
    2. 粉ミルクの調乳方法
  4. パパ授乳を成功させるポイント
    1. ①そろそろかなと思ったら、作り始めよう
    2. ②哺乳瓶を冷やすときには、キャップ部分を水に浸さない
    3. ③安定した場所でゆったりと授乳を
    4. ④しっかり乳首をくわえさせ、哺乳瓶を傾ける
毎日の暮らしの「困った!」に役立つ技やコツをご紹介する連載「目指せ我が家のHERO!家族を助ける特技を作る」今回のテーマは「パパの授乳」です。

子育てにおいて、パパができないのは「母乳を出すこと」だけとも言われています。だからと言って赤ちゃんへの授乳をママに任せきりにしていると、ママの育児負担は軽減されず、また父子の愛情を深める機会も損なわれてしまいます。そこで今回は、パパが知っておきたい授乳のコツを、All About子育てガイドの高祖常子さんに解説していただきます。

産後のお世話をママだけに任せると、ママの負担が激増!

産後、赤ちゃんの授乳は約3時間おきでスタートします。3時間おきと聞くと「授乳の合間にいろいろできるじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、赤ちゃんの大きさにも個人差がありますし、1回に飲む量も毎回同じではありません。だから、3時間おきくらいではありますが、1時間から3時間おきくらいが目安となるわけです。

そして母乳の場合、1回の授乳時間は5分から15分程度。これも時間に幅があります。そして授乳の後は、赤ちゃんを縦に抱っこして、背中を下から上にさすって、げっぷをさせます。赤ちゃんは母乳やミルクを飲むときに、空気も一緒に飲み込んでしまっています。自分でげっぷが上手にできないので、げっぷを出すお手伝いをします。

げっぷさせないで寝かせると、ミルクを吐いてしまったり、吐いたものをのどに詰まらせてしまうこともあります。げっぷがなかなか出ないこともあり、でも5分も10分もさすってげっぷを出させる必要はありませんが、ここでもちょっと時間がかかります。そして、授乳の前後でおむつ替えしたり、寝かしつけていると、あっという間に1時間くらいたってしまうというわけです。

泣いたら抱っこや授乳が基本ですが、それを繰り返していると、ママは体を休める時間がほぼ無くなってしまいます。しかも産後のママは、出産によって(胎盤が剥がれ落ち、ホルモンバランスも大きく乱れているため)全治6~8週間ともいわれています。授乳の合間に家事をしようとすれば、フラフラの状態になってしまいます。

ということで、パパの積極的なサポートはとても重要です。

パパの授乳は、パパにも赤ちゃんにもメリットがある

パパが授乳を引き受けることによって、どんなメリットがあるのでしょうか。

授乳するときの抱っこは、赤ちゃんの顔を見ながらのとても近い関係。生まれたての赤ちゃんは視力が弱く、生後1~2カ月の赤ちゃんは40~50㎝くらいにあるものをじっと見つめます。これがまさに抱っこして授乳中の赤ちゃんとパパとの目線の距離になります。

しっかり抱っこされている安心感を得ながら、目線を合わせながらの授乳は、赤ちゃんに基本的信頼感のベースを育みます。時に、パパが抱っこすると赤ちゃんが泣いてしまうことがあるかもしれませんが、それは不安だからです。あきらめずに抱っこして経験を積めば、パパの抱っこに赤ちゃんも安心して泣かなくなるでしょう。

授乳や赤ちゃんのお世話をすることは、パパ自身にもメリットがあります。

男性が子育てを3カ月経験したあとの脳活動は、子どもに愛着を感じる部分などが活性化しているというデータがあります(福井大学子どもの心の発達研究センター)※。また、イスラエルの実験ですが、パパに15分間わが子と触れ合ってもらって、その後血液検査したところ、パパに体内でオキシトシンが増えていたということです(BIOL PSYCHIATRY 2012)※。さらにパパにあやされていた赤ちゃんのオキシトシンを調べると、赤ちゃんの体内でもオキシトシンが増えていることが確かめられたそうです。

つまり、パパが赤ちゃんに関わるほど、両者のオキシトシンの分泌が増え、愛情やきずなが深まっていくと考えられています。

※参考文献
NHK出版(編集)・NHKスペシャル制作班(その他),2016『NHKスペシャル ママたちが非常事態! ? 夜泣き・イヤイヤ・人見知りにも理由があった! 最新科学でハッピー子育て』NHK出版

搾乳した母乳や粉ミルクの与え方と注意点

どちらの場合も、扱うときには、石鹸で手を洗い清潔な場所で行います。

搾乳した母乳の飲ませ方

母乳は搾乳後、速やかに専用の冷凍母乳バッグに入れて冷凍(-15℃以下)しておきます。冷凍母乳には、ママが搾乳した日時を記入しておき、搾乳後1週間めどで使うようにしましょう。

1. 解凍するときは、母乳バッグのまま水につけ数回水を取り替えます。
2. 解凍した母乳を、湯煎して約40℃程度(体温に近い温度)に温めます。
3. 成分が分離しやすいため、ゆっくり振り混ぜます。
4. 母乳バッグの下の切り込み部分を引き裂いて、哺乳瓶に注ぎます。
<注意>成分が変わってしまうため、熱湯や電子レンジでは解凍してはいけません。

※冷凍母乳の取り扱いガイド 出典:厚生労働省ホームページ(保育園向け)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0301-4b_18.pdf

粉ミルクの調乳方法

1. 飲用水を沸騰するまで沸かします。
2. 粉ミルクの容器に書かれている説明文を読み、必要な水の量と粉の量を確かめます。
3. 洗浄・殺菌した哺乳ビンに正確な量の沸かした湯を注ぎます。お湯は70℃以上に保ちます。沸かしてから30分以上放置した水を使うのはNGです。
4. 正確に量を測った粉ミルクを、哺乳ビンの中のお湯に加えます。
5. 哺乳瓶をゆっくり振って、粉ミルクを溶かします。
6. 哺乳瓶に流水をあてるか、冷水または氷水の入った容器に入れて、授乳できる温度まで冷やします。
7. 腕の内側に少量のミルクを垂らして、授乳に適した温度になっているか確認します。
<注意>調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは廃棄します。

※乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの概要(出典:厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/dl/070604-1a.pdf

パパ授乳を成功させるポイント

以下のポイントに気を付けて楽しく授乳しましょう。

①そろそろかなと思ったら、作り始めよう

冷凍母乳の解凍や、粉ミルクの準備には、ちょっと時間がかかります。あらかじめ作っておくことはできないのですが、赤ちゃんがぐずり始めるなど、「そろそろかな」と思ったらミルク作りをスタート。赤ちゃんがおなかをすかせてギャン泣きすると、焦ってしまいます。

②哺乳瓶を冷やすときには、キャップ部分を水に浸さない

哺乳瓶を冷やすときに、キャップ部分が水や氷に浸らないように注意しましょう。赤ちゃんは適温がお気に入りです。必ずパパの腕などで確認し、熱いミルクを与えないようにしましょう。

③安定した場所でゆったりと授乳を

パパがあわてながら授乳していると、赤ちゃんも安心して飲めません。安定した場所で、赤ちゃんの頭を肘の内側の関節部分に乗せ、手のひらでお尻を包み込むように抱いて、授乳しましょう。

④しっかり乳首をくわえさせ、哺乳瓶を傾ける

赤ちゃんが飲みやすいように、乳首をしっかりくわえさせるのがポイント。赤ちゃんの口がアヒルの口のような形になるのが目安です。哺乳瓶の傾きが足りないと空気をたくさん飲んでしまうので、乳首全体がミルクで浸るようにして授乳します。

授乳のときには、スマホなどいじらずに、赤ちゃんの顔を見ながら与えることが大事です。目が合ったら「おいしいねー」「たくさん飲んですごいねー」など、ぜひ赤ちゃんに声をかけましょう。赤ちゃんはまだ言葉を話すことができませんが、パパの言葉をしっかりキャッチしているはず。パパと赤ちゃんの授乳タイム、楽しんでくださいね。

<専門家プロフィール>
All About子育てガイド
高祖 常子

https://allabout.co.jp/gm/gp/463/
子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント
資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事や行政の委員、オールアバウト「子育て」ガイドも務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。

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