「新しい生活様式」が子どもにもたらす影響は?パパママにできる対策とは

「新しい生活様式」が子どもにもたらす影響は?パパママにできる対策とは

育児

目次[非表示]

  1. 自宅時間が増加し、外遊び時間は大幅に減少
  2. PCやスマホの1日平均使用時間は、1年前より20分も長い約80分
  3. 子どもの新しい生活様式でパパママが心配なのは?
  4. 専門家が警鐘を鳴らす「新しい生活様式が子どもにもたらす影響」
    1. 外遊び時間の減少と生活の過密化は“生きる力”の発育を損なう可能性も
    2. 外で過ごす時間が減ったことが近視急増に拍車がかかる可能性があるという研究結果も
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3密回避やテレワークに代表される「新しい生活様式」が少しずつ確立されつつあります。

そうしたこれまでの日常とは異なる生活を強いられているのは、もちろん大人だけではありません。子どもたちの生活は依然と比べてどのように変化し、そしてそれらが子どものどのような影響をもたらすのか?

そこで今回は、近視予防フォーラム事務局による生活実態調査の結果を交えながら、子どもたちの「新しい生活様式」について迫ります。

自宅時間が増加し、外遊び時間は大幅に減少

今回の調査は、夏休み短縮やオンライン授業など、例年と比べて何らかの変化があった小中学生の子どもを持つ20代〜50代のパパママ1000人(父親・母親各500人ずつ)が対象。コロナ渦で臨時休校や外出自粛を体験する中で、子どもたちの生活がどのように変化したかを答えてもらいました。

まず、1年前と比べた現在の過ごし方の変化を聞くと、時間が増えたのは「自宅で過ごす時間」(86.3%)が最多。次いで「パソコンやスマートフォンを見る時間」(72.9%)、YouTubeなどの「動画を見る時間」(67.2%)、スマホゲームも含む「ゲームをする時間」(61.2%)などでした。

逆に、過ごす時間が「減った」のが「屋外で遊ぶ時間」で、7割近くの小中学生の外遊びの時間が減少していることがわかりました。

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

では、外で遊ぶ時間がどの程度短くなったのか?

まず昨年の今ごろ、小中学生が外で遊んでいた時間は1日平均61.1分でした。緊急事態宣言に伴う外出自粛中の外遊びの時間はぐっと短くなり、1日平均24.2分。そして現在の外遊びの時間は1日平均35.4分。外出自粛中よりも10分程度長くはなっていますが、1年前と比べると25分以上、4割も短くなったままです。小学生では66.2分が42.4分(23.8分短縮)、中学生は56.0分が28.5分(27.5分短縮)と、それぞれ短くなっています。

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

小中学生の外遊び時間が短くなったと答えた671人の保護者にその理由を尋ねたところ、「新型コロナウイルス感染防止で外に出ていないため」(70.5%)が最多。次いで「新型コロナウイルスの影響で普段遊んでいた友人に声をかけにくくなっているため」(44.4%)、「新型コロナウイルスの影響で閉館していたり休業してしまっている施設が多いため」「ゲームなど、屋内での遊びが増えたため」(同率35.0%)などが挙げられました。

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

PCやスマホの1日平均使用時間は、1年前より20分も長い約80分

学校や塾でのオンライン学習・授業が一般化し、小中学生の日常でもパソコン、タブレット、スマートフォンなどの情報機器を見る時間が長くなっています。

これら情報機器の視聴時間を質問したところ、1年前は1日平均58.5分でしたが、外出自粛中は129.7分(71.2分増加)と倍増。現在の視聴時間は1日平均79.2分となり、外出自粛中よりも50分短くはなっていますが、1年前と比べると20分も長くなったままです

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

子どもの新しい生活様式でパパママが心配なのは?

これから新しい生活様式を取り入れていくことで、小中学生の健康・生活に対して心配なことを聞くと、心配な声が多かったのが「運動不足」(79.6%)、「体力の低下」(76.4%)、「視力低下」「学力の低下」(同率70.6%)。また6割のパパママは、外遊び時間が短くなったり生活スケジュールの過密化によって「太陽に当たる時間が短くなる」(61.9%)ことを心配しています。

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

続いて、6割のパパママが心配していた「太陽に当たる時間が短くなる」ことへの意識について掘り下げてみたところ、子どもが太陽光を浴びることを51.7%が「重要だと思う」、34.0%が「やや重要だと思う」と回答。その理由として「生活リズムを整え、成長に紫外線が必要」「免疫力を上げるため、ストレス解消のため」などさまざまな意見が挙がりました。

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

多くのパパママに共通しているのは「太陽光を浴びることは健康のために大事」という認識。しかし、小中学生が1日1回は外に出て太陽光を浴びるようにしているかと尋ねたところ、実践しているのは51.5%と半数程度。小学生では60.2%が1日1回外に出て太陽光を浴びていますが、中学生では42.8%と少なくなり、中学生・女子では39.6%しかいません。

(画像提供:近視予防フォーラム事務局)

専門家が警鐘を鳴らす「新しい生活様式が子どもにもたらす影響」

外遊び時間の減少と生活の過密化は“生きる力”の発育を損なう可能性も

外遊びができている時間は、1年前と比べて4割以上減り35分程度という事実が今回の調査で明らかになりました。これが長期化すると、運動不足による体力低下や肥満の問題に加え、自由に遊べないことによる精神的なストレスなど、子どもの心身ともにさまざまな影響を与えることが懸念されます。

外出自粛は解除されましたが、今度は自粛中の遅れを取り戻すために授業や塾などのやるべきことが増え「子ども時間の過密化」も進んでいます。あれもこれもと、やらなければいけないことが増え、子どもの時間が分断されると、好きなことに集中することができなくなります。
子どものころに我を忘れて物事に取り組む経験がないと、大人になっても集中できないという傾向もあります。また、熱中して遊ぶことで、がまんして物事を成し遂げたり、みんなで協力してやり遂げる力などが育まれます。このような力は非認知能力といって、子どもが前向きに生きる力となるものです。

スケジュールが過密化することで、子どもの外遊び時間は簡単には元の水準には戻らないことが予想されますが、子どもの心と身体、生きる力への影響が非常に心配されます。子どもにはなるべく制約をかけず、自由に遊んでもらうことが中枢神経の開発であったり、コミュニティ形成や友情を育む力を伸ばす非常に大切なことになります。

(近視予防フォーラム発起人、株式会社環境デザイン研究所 会長、東京工業大学名誉教授 仙田満)

外で過ごす時間が減ったことが近視急増に拍車がかかる可能性があるという研究結果も

現代の子どもたちの生活は50年前と比べて顕著に外遊びの時間が減少していましたが、今回の調査で、屋外で過ごす時間がさらに減ってしまったことが明らかになりました。そしてつい先ごろ、眼科の国際ジャーナルにも、COVID-19で世界的に近視の増加に拍車がかかる可能性があるという警鐘が掲載されました(*1)。緊急事態宣言が解除されても感染予防対策が続き、これは子どもの近視予防においても、全身の健康においても、非常に由々しき問題です。

お子さんの視力を心配されている親御さんは、おそらくタブレットの使用や、ゲームの時間などが増えていることで心配されていると思います。しかし、世界の近視研究においては、外で過ごす時間が減ったことが、近視急増の最大の原因だという研究があります。さらに、我々の研究では、太陽光に含まれるバイオレットライトが近視の予防、進行抑制に働くことが解明されつつあります。

では、どうすればいいのか。家で過ごすときは、窓ガラスはバイオレットライトを遮断してしまいます。外光の入る明るい室内でも、実はバイオレットライトを浴びることができませんので、窓を開けたり、ベランダに出ることは重要です。感染を恐れて、外出を避ける傾向にありますが、子どもの近視予防、健康を考えると、散歩をしたり、公園で遊んだりする時間は、非常に大切です。

(近視予防フォーラム代表、慶應義塾大学医学部眼科学 教室 教授 坪田一男)
コロナ渦において家族の健康を守るためには、これまでと同じような生活を続けるのは困難な状況でしょう。しかしそんな中でも、子どもたちが健全な成長を遂げるためにパパママができることは少なくありません。

例えば、専門家が近視予防との関連性を指摘している「太陽光を浴びる」ことは、パパママのちょっとした働きかけですぐにでも実行できるはず。今回のアドバイスを参考にしながら、皆さんなりのベストな「新しい生活様式」を模索・確立して見てください。

<調査概要>
■実施時期:2020年6月25日(木)~6月28日(日)
■調査手法:インターネット調査
■調査対象:夏休み短縮、土曜日授業、オンラインでの授業、オンラインでの塾・習いごとを実施もしくは予定している小中学生の子どもを持つ全国の20代〜50代の保護者1,000人(父親・母親 各500人ずつ)
※本調査では、小数点第2位を四捨五入しています。そのため、数字の合計が100%とならない場合があります。