なんだか子どもの動きがぎこちない?カラダの調整力を伸ばす親子ボール遊び

なんだか子どもの動きがぎこちない?カラダの調整力を伸ばす親子ボール遊び

育児

目次[非表示]

  1. ついつい家の中でゴロゴロしてませんか?
  2. 「動きを調整する」とは?
  3. 身体の動きの調整力を高めるボール遊びの紹介
    1. 手拍子キャッチ
    2. バウンドキャッチボール
    3. 後ろ向きキャッチボール
    4. 背中合わせウォーキング
  4. おわりに

ついつい家の中でゴロゴロしてませんか?

新型コロナウイルスの影響に加え、ここ最近の猛暑もあり、「休みの日は外で子どもと遊びたいけど、結局部屋でゴロゴロ過ごしてしまう」というご家族が多いのではないでしょうか。

本来であれば外で友達と身体を使って遊ぶことで、自然と子どもたちの運動能力が伸びてくるのが理想ですが、部屋で動画を見たりゲームをしたり、というような過ごし方が一日の大半を占めていては、なかなか運動能力の向上は期待できません。

筆者は定期的に親子運動遊び講座を主催していますが、家で過ごす時間が長く運動不足気味な子どもたちの様子を見ていると、身体の複数の部位を連動させてうまく動かす「協応性(=動きの調整力)」がうまく発揮できない場面が多い印象があります

そこで今回のコラムでは、運動能力を伸ばしていくうえでポイントとなる「動きの調整力」の解説と、その能力を高めるために親子でできる運動遊びをご紹介します。

「動きを調整する」とは?

身体をイメージ通りにうまく動かす能力のことを「協応性(=動きの調整力)」と言いますが、より具体的には「右手と左手」「両手と両足」「目と手」「目と足」というように、身体の複数の器官がかみ合ってスムーズな動きができる能力のことを指しています。

例えばスープをお皿からスプーンですくって口に運ぶ動きについて考えてみましょう。お皿の位置やスープの量を「目」で確認しつつ、同時に「手」の動きを調整してスープを食べやすいように口までもってくる、という一連の動きが途中で止まることなくなめらかに行われています。つまり「目と手の共同作業=協応」がうまくできているからこそ、スープをこぼさずに飲むことができると言えます。

また縄跳びやキャッチボールのように道具を使った動きになると、身体の器官だけではなく、物の位置や相手の動きに合わせて自分の動きを調整する「環境に対する動きの調整」という要素も含まれてきます。

同時に身体を動かす部位が増えたり、動作のスピードが速くなって難易度が上がると、この「協応性」の能力によって動きのスムーズさに大きな差が出てきます。

この協応性は、いろいろなスポーツをするうえで土台になる重要な能力として注目されています。協応性を高めるための練習は「コオーディネーショントレーニング」と呼ばれ、競技レベルのアスリートにも一般的に取り入れられるようになってきています。

もちろん大人になってからもトレーニングで鍛えることはできますが、できれば運動能力が伸びやすい子どもの時期から、遊びの中で協応性を伸ばしていきたいですよね

そこで今回はパパと一緒にできる運動遊びの中に、動きの調整力を伸ばす要素を取り入れてみました。さっそく親子で身体を動かしてみましょう!

身体の動きの調整力を高めるボール遊びの紹介

今回ご紹介する4種類の運動遊びはすべてボールを使って行うメニューになっています。あらかじめ柔らかいボールをご用意ください。なお、記事内の画像では100円ショップで購入した直径約20cmのフィットネスボールを使用しています。

※今回の記事でご紹介する運動遊びの難易度は、保育園の年長〜小学校1年生のお子さんを想定しています。運動能力には個人差がありますので、それぞれのお子さんに応じた設定、難易度にアレンジして遊んでみてください。

手拍子キャッチ

①立った状態からボールを真上に投げます。
②ボールが空中にある間に手拍子を一回!
③すばやく手の位置を戻してボールをキャッチします。
目と手の協応性を高める運動遊びです。ボールをどの高さまで投げると、余裕をもって手拍子できるか?とあらかじめ予想してから実際にやってみることが、成功のカギになります。

慣れてきたら手拍子する数を増やしたり、背中側で手拍子する、というようにやり方を変えていくと、さらに動きが難しくなります。

バウンドキャッチボール

①あらかじめ床にテープで目印をつけておき、親子で向かい合います。
②投げる前に目印の位置をよく見て、ボールの軌道をイメージします。
③目印にボールがワンバウンドしてちょうど相手に届くように投げ方を調整して、お互いにボールを投げ合います。
目と手の協応性に加えて、目印との距離感、相手との距離感を計算してボールを投げることで「環境に対する動きの調整」の要素も含まれた運動遊びになります。

お互いの距離を長くしたり、ボールを片手で投げるようにするとさらに難易度が上がります。

後ろ向きキャッチボール

①パパに背中を向けて立ち、ボールが十分に通る幅に足を広げて、身体をかがめます。
②足の間からパパに向かってボールを投げます。
この運動遊びは手や腕の動きを調整する「協応性」だけでなく、「身体図式」の発達を促す運動遊びになります。身体図式とは脳の中にある自分の身体の形や大きさについてのイメージのことです。

「どのくらい足を開くとボールが投げやすいか」「どのくらい身体を曲げると相手が見えやすいか」などとイメージして運動することが、自分の身体の輪郭をはっきりさせるよい練習になります。

背中合わせウォーキング

①背中合わせになり、その間にボールをはさみます。3m離れたところにゴールのカゴを用意しておきましょう。
②親子でタイミングを合わせて、ボールを落とさないように進みます。
③カゴにうまくボールが入ったらゴール!
「相手とタイミングを合わせて一緒に動く」という要素が入っているため、今回紹介する運動遊びの中ではいちばん難しいかもしれません。パパが「せーの、いちに、いちに…」というように声かけをして、動くタイミングを図りやすいようにサポートしてあげましょう。

ボールを背中ではさんでいると、ボールや相手の位置を目で見て確認できませんので、触覚(ボールが背中に触れている感覚)・固有感覚(姿勢や動きの感覚)・前庭感覚(動きの方向や速さの感覚)といった情報をもとに身体の使い方を変えていかなくてはなりません。ふだんとは違った形で身体の動きや姿勢を調整するトレーニングになります。

おわりに

今回はボールを使った運動遊びを4種類紹介しました。

こうした遊びを通して「動きを調整する能力」を伸ばしていくことは、体力の向上や怪我の予防につながるだけでなく、将来いろいろなスポーツに取り組むうえでの基盤にもなると筆者は考えています。

家の中の遊びでも、工夫しだいで子どもたちの運動能力を伸ばしていくことは可能です。親子で楽しく運動遊びに取り組んでいきましょう!

なお、この記事では主に年長〜小学1年生向けの遊びを取り上げましたが、年齢別の屋内でできる運動遊びについては、過去のコラムでもご紹介していますので、そちらも合わせてご確認ください。

※本稿における専門家による情報は、紹介している運動遊びの効能や有効性を保証するものではありません。また適切な難易度はそれぞれのお子さんの運動能力によって異なります。お子さんの身体の状態に応じて無理のない範囲で行ってください。

参考文献
小林隆司ほか著(2017)『学童期の作業療法入門 学童保育と作業療法士のコラボレーション』クリエイツかもがわ.


文・写真:奥山和人

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