「頑張らないと親にしか似ないぞ!」 Daddy's Talk第1回・前編 マキタスポーツさん(芸人/ミュージシャン/俳優)

「頑張らないと親にしか似ないぞ!」 Daddy's Talk第1回・前編 マキタスポーツさん(芸人/ミュージシャン/俳優)

育児

各分野で独特の感性を発揮し目覚ましい活躍を遂げているパパたちは、どのような家庭生活を送っているのか──。そんな気になる疑問を掘り下げる新企画「Daddy's Talk」


今回は、芸人、ミュージシャン、俳優など表現者として多彩な才能を発揮しているマキタスポーツさんにインタビュー。高校3年生の長女、中学1年生の次女、4歳になる双子の男の子を育てるパパとしての思いや、著書やラジオ番組でもたびたび披露しているユニークな子育て観について伺います。


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  「結婚とは嗜好品であり、夫婦でともに作り上げる作品」Daddy's Talk第1回 マキタスポーツさん(芸人/ミュージシャン/俳優) 各分野で目覚ましい活躍を遂げているパパたちの家庭生活に迫る新企画「Daddy's Talk」。芸人、ミュージシャン、俳優など表現者として多彩な才能を発揮しているマキタスポーツさんにインタビュー。後編では夫婦間や結婚観について伺います。 家men


売れない時代から共に歩んできた長女との特別な関係

Daddy


──2012年発行の著書『アナーキー・イン・ザ・子供かわいい』(アスペクト・刊)の中で、「自分の子どもが一番可愛い」と思う親たちの“正気でいられない奇妙さ”について「親気の至り」と表現していましたが、当時の心境を今でも覚えていますか?


だいぶ記憶が薄れましたけど、覚えていますよ。まだ長女が幼い頃に書いたコラムで、その頃は親になることの照れくささというか、若干のためらいや違和感があったんでしょう。

独身時代の延長で子どもが生まれて「あ、いけない! 親にならなくちゃ」なんて感覚で、親としての手応えを手探りで模索していた状態でしたね。


──そうした手探りの中で「子どもって可愛い!」と思う気持ちに目覚めたということですか?


「子どもは天使のよう」みたいなキラキラした純粋なものではなく、もっと“よこしま”な気持ちですけどね。そういう感覚も含めて自分の中で違和感を強く感じ、当時書き留めたのが「親気の至り」という言葉なんです。


──その違和感は、お子さんが1人2人と増えていく中で収まりましたか?


『アナーキー・イン・ザ・子供かわいい』は最初の子どもである長女から受けたインパクトをエッセイにまとめたもので、長女と接する中で抱いた違和感や疑念は、育児を重ねる中でいつの間にか収まっていきました。

実は次女がちょうど生まれた頃、ある女性雑誌から同じような趣旨のコラム連載を依頼されたのですが、長女の時と同じようなテンションで次女のことを書こうと思っても全然筆が進まない。そして最終的に、『アナーキー・イン・ザ・子供かわいい』と同じようには書けません、と編集長に相談しました。


──長女の頃と比べて親としての気持ちに変化が生じたからですか?


そうです。「親になった」のかもしれないし、ある種の感覚の麻痺かもしれない。もしくは、感覚が麻痺した状態が「親になった」ということなんですかね。次女が生まれた時は最初から自然に「可愛い」と思えました。だからと言って、長女が自分にとって可愛い存在でなかったわけではありませんよ。


──初めてのお子さんというのは、やはり特別な存在だったのでしょうね。


長女は僕がまだ売れていない頃に生まれました。ある時、僕が何かの勝負を競うテレビ番組に出演して負けた姿を見た時、泣きながらテレビ画面に抗議したことがあったそうです。そうした下積みから駆け上がっていく過程を長女は全部見てきたわけで、いわば“共に闘ってきた同志”のような感覚がある。そういう意味で、長女と僕との関係は特別なものと言えます。


“有名人を父親に持つ”ということ

Daddy


──お子さんたちは、有名人である父親=マキタさんが芸人・ミュージシャン・俳優として活躍している姿をどのように見ていますか?


出演しているバラエティ番組、ドラマ、ライブ中継なんかは、普通にテレビを見る感覚で接していますね。僕自身は「こうやってメディアで活動できるのは決して普通のことじゃないぞ」と自分に言い聞かせているけど、子どもたちにとっては普通の父親と自分の父親を比べようがないじゃないですか。だから、それが当たり前と勘違いしないよう、言い聞かせるようにしていますよ。

例えば、ロックフェスに出演する際に子どもがバックステージを当たり前のような顔でウロウロしていると「おい、ここに入って来れるのは当たり前じゃないからな。フェスに入場するのだって普通ならチケット代を払うんだぞ」と釘を刺します。


──そこは父親として線引きしているのですね。


芸能人の子どもにありがちなモンスターにならないようにね(笑)。


──マキタさんはコラムやラジオ番組で家族のことをたびたび話題にしていますが、それに対するお子さんたちの反応は?


ラジオ番組では面白い話にするためにオチをつける習性があるものだから、実際の話を演出して当たり前のように“盛ってしまう”んです。だから娘には「嘘ばかり言ってる」と言われます。


──自分たちの生活がメディアで披露されることへの抵抗感はお子さんになさそうですか?


どうなんでしょう。去年、ラジオ番組の「東京ポッド許可局」で「ウチの高校生の長女にコンドームを持たせるべきか」という性教育の悩みを取り上げた時は、そうした話題をラジオで話すことに周りから賛否両論が出ました。

長女がその番組を聴いていたかどうかは知らないけど、娘には正直でありたいので、最終的には本人に直接言いましたよ。「お前にコンドームを持たせるかどうかママと相談してるんだよ」って。そしたら「えっ、キモイ!」と一笑されましたね。


「クソジジイ」という言葉の中にある愛情を感じ取る

Daddy


──お子さんがマキタさんの芸能活動について意見や感想を言うことはありますか?


いやあ、さすがに言ってきませんね。でも気がかりなことがあるんですよ。


──どんなことですか?


どうやら次女に芸能人志向があるようで、今年の3月に小学校の卒業式で一人ずつ将来の夢を宣言する時にも「私は父みたいな芸能人になりたいと思います」なんて人前で言うものだから、誇らしいどころか恥ずかしかった。“父みたい”なんて言うんじゃねえよ!と。


──次女はマキタさんが売れている時代の姿しか見ていないから、なおさら父親や芸能人に憧れるのかもしれませんね。


逆に、長女が父親のことをどう考えているのか、分からないところがありますね。あ、でも長女が通っている高校の先生から最近こんな話を聞きました。

先生が僕のファンで、進路指導で長女に「君のお父さんはテレビの番組でこんなことを分かりやすく話していて、賢い人だと思うよ」と言ったそうです。普通ならそこで「先生、そんなことないです」と謙遜か否定しそうなものなのに、娘は「はい」と答えたらしいんですよ。


──父親のことをしっかり認めていたということですね! そのやり取りのことを長女に尋ねましたか?


さすがに照れくさくて聞けませんよ。でも、俺のいないところで親父のことを自慢げに思ってたのか…と長女の本音を垣間見た瞬間でしたね。


──ちなみにご家庭での長女との関係は?


生意気な口をきいたり態度が悪い時には厳しく怒ってますが、長女も負けじと「おいクソジジイ、くせえんだよ」みたいなことを平気で言ってきます。でもそれは本気でいがみ合っているというより、じゃれ合っているようなもの。面と向かって父親を称えることはないけど、「クソジジイ」という言葉の中に娘の愛情を感じながら受け止めています。


──反抗期を越えて、より成熟した関係を結んでいるのですね。


例えば長女に悩み事がある時なんかも真剣に向き合っています。「君には思ったことをズバリ言うけど、それが正しいことかどうか分からない。でも親としての立場があるから言うんだよ」「うん、分かってる」と、今までより次元の高いコミュニケーションを実践できているという自負はありますね。


子どもには親に似ないよう頑張ってほしい

Daddy


──お子さんの中では誰がマキタさんに似ていますか?


一番下の双子はまだ4歳で何とも言えないけど…ハッキリ似ているところ、ボンヤリ似ているところが各自に混ざり合った、モザイクのような状態ですかね。ある時は妻の性格が前景化していたり、ある時は僕に似ている面がグルッと出てきたり。


──「この子は自分似だ」と一概に括れないわけですね。


子どもというのは学校で標準的な教育を受けて社会へと馴染むうちに、生まれ持ったワイルドな一面を消していこうとし、またそうした成長過程を一巡すると不思議と親に似ている部分が再び顔を出すもの。

でも自分もそうだったけど、若い頃って「親に似てる」と言われるのはすごく恥ずかしいじゃないですか。だから、親に似ている部分を消そうと努力し、親以外の人や要素から影響を受けようとするのは当たり前。長女は今まさにそうした過程の真っただ中にいるわけです。


──思春期の子どもが親のことを否定しようとするのは、そうした気持ちが根底にあるのですか。


でもね、油断してるとつい父親に似ている部分が出てしまうんですよ。家でテレビを見ている格好とか(笑)。だから最近よく言ってるんですよ。「頑張らないと親に似るぞ」って。


──「頑張らないと親に似るぞ」いうのは、具体的に何を頑張ればいいのでしょう?


ちゃんと社会と接しているかどうか、いわば社会性ですね。親とは離れた要素から影響を受けようとするマインドは、自分をアップデートできる態勢にもつながります。でも、他者と接したり何かを吸収しようとすることが億劫になり「これでいいや」とあきらめてしまうと、気がつくと親にしか似てないということになる。そういう意味で「頑張らないと親にしか似なくなるからな。自覚してないかもしれないけど、今のところ俺にソックリだぞ」と忠告しています。




有名人を父親に持つ家庭ならではの親子関係が、マキタさんの飾らない言葉によって等身大にイメージすることができ、とても新鮮な感覚でした。また、「頑張らないと親に似る」という言葉も、決して自分を卑下しているわけではなく子どもの成長を願ってのメッセージで、親としての愛情がひしひしと感じられますね。

後編では、マキタさんの夫婦関係や結婚観についてインタビューします。


profile

マキタスポーツ

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1970年生まれ。芸人/ミュージシャン/コラムニスト/俳優。音楽制作ユニット「マキタ学級」のリーダーとして独自の音楽観を深化させる一方、ビートたけしや浅草キッドも認める実力派芸人として活躍。さらに文筆家として鋭い時評・分析を展開し、「東京ポッド許可局」などのラジオ番組で人気を博すなど、表現者としてマルチな才能を発揮。2012年には映画『苦役列車』で出演と挿入歌を担当し、ブルーリボン賞新人賞および東京スポーツ映画大賞新人賞を受賞。役者としても注目を集め始める。


Photo: 木原基行


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