正解なきベビーカー論争の解決策になるか?「外出先でのベビーカーレンタル」という選択肢を考える

正解なきベビーカー論争の解決策になるか?「外出先でのベビーカーレンタル」という選択肢を考える

育児

家庭内で“家族の幸せを最大化”するためのアクションは何よりも優先されるべきですが、これが家庭内で完結しないこと、例えば公共の場に及ぶとなると話は変わってきます。


小さな子連れのお出かけに役立つベビーカーのように、子育て家庭と一般の方たちの間で“あるべき姿のギャップ”が深刻化し、ネットやSNSでたびたび論争が巻き起こっています。


電車やバスで厳しい目を向けられるベビーカー利用者…その理由は?


電車やバスなどの公共交通機関でベビーカーを利用する際、周囲に気を遣って利用しているパパママが一般的かと思いますが、他の乗客から厳しい目で見られて辛い気持ちになることも少なくないようです。


・ベビーカーを押して電車待ちをしていたら『邪魔だ』と怒鳴られた。

・ベビーカーはどの位置にいるのが、邪魔にならないか考える。子どもの足が当たったりとかで舌打ちされたり。

・迷惑にならないよう気をつけているが、『通路をふさぐな』と注意されることもある。ベビーカー利用者だけに負担を押し付けるのは疑問。

・ベビーカーは混雑した電車内で2、3人分の空間を取ってしまう。肩身が狭い。

・混んでいる時間はずらしているが、『邪魔だ』などと言われて嫌な思いをした。邪魔と思われても外出しないといけないこともあるし、周りの方にも理解してほしい。


※引用:国土交通省「公共交通機関等におけるベビーカー利用に係る現状と課題」

https://www.mlit.go.jp/common/001014270.pdf


一方、ベビーカーを利用していない一般の乗客からは、パパママが公共交通機関でベビーカーを利用すること自体には比較的寛容で、ベビーカー利用者のマナー向上を求める声が多く挙がっています。


・母親がスマートフォンばかり見て、ベビーカーに注意を払っていない。

・ただでさえ遅れがちなバスや電車で、ベビーカーに子どもを乗せたまま何とか乗降しようとするため、時間がかかって仕方がありません。「子どもがいるんだから当然」といった我が物顔で乗車する人もいて、よく足元にぶつけられたり、靴を傷付けられたりすることもあります。

・当たり前のように『どいてください』という感じで乗ってくる人がいて、嫌だと思うときがある。ただ、赤ちゃんを育てることは大変なので『ベビーカーを使うな』とは言えない。なるべくお互いさまと思うようにしている。

・子育て中だからと、他人に配慮しない母親が目に付く。公共交通機関を利用する時は抱っこひもで、ベビーカーを畳んで乗るのがマナーだ。


※引用:国土交通省「公共交通機関等におけるベビーカー利用に係る現状と課題」

https://www.mlit.go.jp/common/001014270.pdf


一般の乗客による具体的な指摘からは、ベビーカーが大きくて場所を取ることによる不満が目立ちます。その対策として「ベビーカーを畳むこと」を求める声が見受けられる一方、ベビーカー利用者からは「物理的に厳しい」という意見が挙がっています。


・オムツや着替え、水筒、哺乳瓶、買い物荷物。万が一それを乗せたまま、子をもし抱き上げてしまうとベビーカーは転倒してしまいますし、荷物を撒き散らすことになり、片身の狭い想いで乗っている上にさらに肩身が狭くなります。

・オムツやミルク・お湯・汚れたときの着替え、暴れた時に静かにさせるおもちゃ等々子供用の道具で非常に重い大きなカバンを持ってその上折りたたんだベビーカーを持って、泣く赤ちゃんを抱っこして1時間も電車やバスに乗れ、なんて事を言われたら、外出するなと言っているのと同じ。

・混雑時はベビーカーを畳んで乗るよう心がけているが、長男を抱き、荷物とベビーカーを持って乗車するのは大変。理解してほしい。


※引用:国土交通省「公共交通機関等におけるベビーカー利用に係る現状と課題」

https://www.mlit.go.jp/common/001014270.pdf


自分の立場や見方によって観点が大きく分かれるベビーカー論争。それぞれが抱く不満は必然的に芽生えるものであり、当事者にとってはそれこそが“正解”。

そうやってお互いの正義を信じてぶつけ合っている状況だからこそ、ベビーカー論争は冷静さと寛容さを欠き、互いに歩み寄る糸口がなかなか見つからないのでしょうね。


海外の事例から探るベビーカー論争解決のヒント

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小さな子連れのパパママがベビーカーを利用するのは日本だけではありません。では海外でもベビーカー論争が巻き起こっているかといえば、そうでもなさそう。

公共交通機関においてベビーカー専用スペースが設けられているほか、周囲の人々も手助けすることが多いなど、社会全体でベビーカー利用を受け入れる状況が定着しているようです


・私は今欧州に住んでおりますが、市バスにはベビーカーがそのまま入れられるスペースはあり(こちらのベビーカーはかなり大きいです)、電車でももちろん誰も迷惑に思いません。ベビーカーの子連れが堂々と公共機関を利用しています。アメリカでは、子連れだとドアを開けるのを手伝ってくれたり、何かと優先してくれます。

・ヘルシンキでは、ベビーカー利用者によるエスカレーターの利用禁止はしっかり守られており、エレベーターの中には、ベビーカーか車椅子の利用者しかおらず、健常な学生や会社員と乗り合わせることはほとんど無い。フィンランドのベビーカー・車椅子専用スペースでは、ベビーカーは畳めないので座席が畳めるようになっており、乗客同士で混み具合を見ながら立ったり座ったりして譲り合っている。

・車両にベビーカーを載せようとすると、乗客たちは我も我もと争うようにして運び入れてくれる。乗車後も、誰一人として嫌な顔をすることはない。キンダーワーゲン(ベビーカー)に場所を譲るのは当然のマナーだ、と心得ているからだ。一方、親たちは他人の好意に甘えきっているのではなく、親たちは皆、他人に迷惑をかけることを案じており、巨大なキンダーワーゲンを当然のように載せることに抵抗感を感じる人も多い。他人がキンダーワーゲンを最優先してくれても、親たちは御礼をすぐさま述べるのではなく、まずは「迷惑になりませんか?」と尋ねることを心得ており、だからこそ他人が、一層気を遣って、我先に手助けをしたくなるのかもしれない。


※引用:国土交通省「公共交通機関等におけるベビーカー利用に係る現状と課題」

https://www.mlit.go.jp/common/001014270.pdf


こうしたベビーファーストな文化は、必ずしも海外だから成立しうるものではありません。

「卵が先かニワトリが先か」という話になりそうですが、ベビーカー利用者が周囲に十分気を遣い、その姿を見た一般の方たちが「手助けしたい」「温かく見守ろう」という気持ちになる──そうした思いやりの連鎖が育まれたら、きっと日本のベビーカー論争も解消されるのではないでしょうか。


目的地までは電車・バス、移動先でレンタルベビーカーというスタイル


とはいえ、そうしたベビーファーストな文化は一朝一夕には根付かないでしょうから、当面はベビーカーを利用するパパママが“気遣いを示す対策”を講じて、無益なトラブルを回避しながら周囲の理解を得ていくのも一つの手段。

その選択肢として提案したいのが、外出先での「ベビーカーレンタルサービス」です。


公共交通機関での移動中は子どもを抱っこしたり歩かせ(あるいは自転車で移動)、目的地でべビーカーをレンタルするというスタイルが近年広まりつつあり、百貨店・ショッピングモール・テーマパークなどレンタルサービスを導入している施設も少なくありません。


ただしこうしたサービスの唯一のネックは、施設の外ではレンタルベビーカーを利用できないこと。買い物が終わって別の場所に移動したいけど、子どもがウトウトしてしまって起こせない…というケースもあることでしょう。


そんな悩みに応えるべく生まれたサービスが“街歩きのできるベビーカーレンタル”です。


■サービス例① JR東日本

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JR東日本では2019年9月19日(木)~10月19日(土)の間、東京駅・品川駅・新宿駅・上野駅の手荷物預かり所にてピジョン製ベビーカーのレンタルサービスをトライアルで実施中。

1回につき500円を支払うだけで、営業時間内であれば駅ナカだけでなく改札外にも持ち出すことが可能です(予約優先)。レンタルの受付が駅にあると、利用が楽で嬉しいですね。

<詳細>

ジェイアール東日本物流 http://www.jrbutsuryu.jregroup.ne.jp/


■サービス例② コンビウィズ株式会社

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ベビー用品の大手企業・コンビの子会社も東京都観光情報センターバスタ新宿にて、2019年9月1日(日)~11月30日(土)の期間限定でベビーカーの貸し出しサービスを実施中(当日受付のみ)。

東京の玄関口といえる新宿を拠点に、観光スポットや商業施設の周遊にレンタルベビーカーを活用できるのは便利ですね。

<お問い合わせ先>

東京観光情報センターバスタ新宿 TEL:03-6274-8192


今回ご紹介した企業のほかに、一部の自治体でも街歩きが可能なベビーカーレンタルサービスを提供しています。まずは一度実際に体験してみると、外出先でベビーカーをレンタルするメリットを実感できるはずです。


公共交通機関での無益なトラブルを回避すると共に、また移動中の荷物が減って外出そのものも快適にしてくれる手段として、ぜひ選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。