
子どもの成長につながる遊具とは?遊びを通じて子どもの今と未来を考える「こども環境サミット」レポート
近所の公園や幼稚園・保育園の園庭に設置され、子どもたちが遊ぶ空間に当たり前のように溶け込んでいる遊具たち。
皆さんはこうした遊具がどんな会社によってどのように作られているかご存じですか?
創業100年の歴史を誇る株式会社ジャクエツは、園庭などの遊具製造における国内トップシェア企業。厳格な安全性と“遊びの可能性”を追求したバラエティ豊かな遊具は高く評価され、全国の幼育園・保稚園や商業施設から依頼が絶えないそうです。
そんなジャクエツが「こどもの未来のために、この国だからできること」をテーマに、最新遊具などさまざまなコンテンツを揃えた第2回「こども環境サミット」を去る5月15日~17日にかけて開催。
このイベントで発見したこと・学んだことを皆さんにご紹介しながら、遊具が子どもに与える影響、そして子どもの遊びの可能性について一緒に考えてみたいと思います。
遊具のデザインにはこんな意図が!安心・安全のその先
ジャクエツが創業されたのは大正5年(1916年)。福井県敦賀市のお寺の境内で幼稚園を開設し、預かった子どもたちが使う色紙やクレヨンを手作りで製造したのが始まりだそうです。
以降は園児服・遊具・園庭や園舎の設計まで事業を広げて全国の子どもたちの成長を支え続け、その貢献を認められて過去に何度もキッズデザイン賞を受賞しています。
※キッズデザイン賞についてはこちらの記事をご参照ください
こうした歴史の中でジャクエツが一貫してこだわってきたのは、小さな子どもたちが笑顔で遊び続けられると同時に、パパママや先生が安心して見守ることができる遊具づくり。
一般的な遊具の安全指針よりも厳しい「JQ遊具安全規準」を定め、長年のノウハウや自社経営モデル園での調査・検証を通じて“安心して遊べる遊具”づくりを実現しています。
例えば、滑り台のスタート地点(滑り出し口)に、子どもの身長より低いフードやゲートが設置されているのを見たことありませんか?
実は、フードがあることによって子どもが自然と滑り出し口で座る形になり、危険な立ち滑りを防ぐ役割があるそうです。
今回の「こども環境サミット」に展示されていた総合遊具「プレイロード2」もまさにそうしたデザインで、異なる滑り方を楽しめる3種類の滑り台にはいずれも安全フードが設置されています。
他にも、膝が挟まらない規格の柵や、静電気を除去する特許技術「エレキトルライン」など、子どもたちが安全かつ快適に遊ぶためのこだわりが満載というから感心します。
そしてジャクエツが遊具づくりに込めているもう1つの思い。
それは、遊具での遊びを子どもの成長へつなげることです。
先ほど紹介した「プレイロード2」を含む総合遊具において、子どもたちの健やかな成長を目的に、次のような4つの運動スキルの向上を目指しています。
1. 空間認知能力や全身の筋力を育む「移動する運動スキル」
2. 姿勢を維持し平衡感覚を養う「バランスを取る運動スキル」
3. 全身の協応性を養う「操作する運動スキル」
4. ぶら下がったり押し引きすることで筋力や持久力を高める「その場での運動スキル」
また、今回の会場でひときわ存在感を放った螺旋タワー型の巨大総合遊具「PLAY COMMUNICATION」も、単に遊ぶ以上の機能を備えています。
螺旋状の複雑な通路をどのように登ればいいか自発的な創意工夫を促し、各パーツの配置やデザインも子ども同士がコミュニケーションを取りやすいよう配慮されています。
さらに螺旋構造によって省スペースながら最大6.5mもの高さを実現し、「勇気を出して高いところへ登ってみよう!」とチャレンジしたくなる精神的な強さも育むという、遊びの可能性を最大限に追求した遊具なのです。
世界的デザイナーとの遊び心豊かなコラボ遊具も
他にも「こども環境サミット」では、世界的な有名デザイナーとのコラボによる斬新かつ遊び心豊かな遊具も展示されていました。
プロダクトデザイナーの深澤直人さんが手がけ、グッドデザイン賞・キッズデザイン賞にも輝いた「OMOCHI MINI」。
一見するとオブジェのようですが、側面をよじ登ったりあらゆる方向に滑り降りたりと自由に遊べる遊具。丸みを帯びた優しいフォルムも、見た目の可愛らしさだけでなく、子どもの直感的な遊びを促す効果があるのです。
こちらは北欧フィンランドのデザイナー、エーロ・アールニオさんによるゾウの滑り台「ノルスmini」。
優しいカラーとシンプルなデザインが与える温かな印象は、北欧デザインならでは。抱きついたり、滑ったりと遊び方は自由自在です。
建築家の鈴野浩一さんが共同主宰するトラフ建築設計事務所による「PLAYRING」。
角度によってリングの見え方が変わり、登ったりぶら下がったりと自由な遊び方を子どもが発見できる“余白”が特長です。
またジャクエツは、遊びの空間演出においてもさまざまなコラボを意欲的に実現。
テレビ番組「デザインあ」の総合指導も務めるグラフィックデザイナーの佐藤卓さんが富山県美術館に設計した屋上庭園「オノマトペの屋上」には、ふわふわ・ぐるぐる・ぼこぼこなどのオノマトペ(擬音語・擬態語)をテーマにした不思議な形の遊具が並び、子どもはもちろん大人の遊び心もかき立てます。こんな美術館なら毎週でも子どもを連れて行きたいですね!
老舗遊具メーカーのジャクエツが開催した「こども環境サミット」をご紹介しました。
パッと見ただけでは気づきにくいものですが、遊具にこれほどさまざまな機能や意図が込められ、そして「遊べて楽しかった」以上の効果が期待できるとは!
これまでとは遊具を見る目が変わり、設備が充実した公園をもっと熱心に探したくなりますね。
皆さんもぜひ公園の遊具に込められた“子どもの安全・成長に配慮したポイント”に注目しながら、我が子に「これはどうやって遊ぶのかな?」「あそこまで登ってみようよ!」と積極的に声掛けしてみてください。
きっと遊びに夢中になるうちに、子どものさまざまなチカラが育まれていくはずですよ。