Original

『運び屋』 | 仕事に生きた男が気づいた“人生で大切なこと”

仕事に追われる毎日…そんな時こそ一度立ち止まってみよう


充実した人生を過ごすために「ワーク・ライフ・バランス」の実現が注目を集めている昨今ですが、どうしても日々時間に追われ、家庭よりも仕事に比重を置いた生活になってしまっているという方も少なくないでしょう。


そんな時こそ、「自分にとって一番大切なものは何か」を思い出すため、一度ふと立ち止まってみてはいかがでしょうか


そこで今回は、そうした生き方を見つめ直すきっかけにピッタリの映画をご紹介します。

“ハリウッドの生きる伝説”クリント・イーストウッドが10年ぶりに監督・主演を兼任して描いた最新作で、3月8日から劇場公開される『運び屋』です。


生活のため、そして償いのためドラッグを運んだ老人


この作品は、なんと90歳という高齢で犯罪組織のドラッグを大量に運んだ“史上最年長の運び屋”の実話

さぞかし札付きのアウトローなのだろうと思いきや、これが実は犯罪歴ゼロの気のいいお爺さん。そんな彼がなぜ危険な運び屋になったのかが明かされていきます。


高級ユリの生産・販売者として広く名の知られた園芸家アールは、仕事に打ち込みすぎて家庭を顧みず、なんと娘の結婚式よりも品評会を優先する始末。

やがて家族に見放され、順調だった仕事もネットの普及とともに行き詰まり、すっかり居場所をなくしてしまいます。


そんな矢先に「ちょっと車を運転するだけで金になる」と話を持ちかけられたアールは、軽い気持ちで依頼を引き受けますが、その車に積まれていた荷物こそがドラッグだったのです。


途中で荷物の中身に気づくものの、生活に困っていたこともあり、「ただ車を運転するだけ」という罪意識の軽い仕事をズルズルと続けていくアール。そんな怖い者知らずな老人をクリント・イーストウッドが飄々とヤンチャに演じ、その行く末から目が離せなくなります。


そして物語をしばらく見守っていると、アールが運び屋をやめようとしない背景が深く掘り下げられていきます。


家族に見捨てられて孤独に暮らすアールの心によぎるのは、“仕事を優先し、ないがしろにした家族の絆を取り戻したい”という後悔

形はどうあれ、そして今さらながら、金銭を通じてでも家族を支えられたら、見向きもされなくなった妻子と再び接点を持つことができるのではないか…。


そんな償いにも似たアールの想いを噛みしめながら見ると、罪意識を感じさせないあっけらかんとした犯罪模様が切なく映り、“人生で最も大切なこと”を訴える尊いメッセージがすっと心に染み込んでくることでしょう。


俺みたいになるな──イーストウッドが教える人生の真理


仕事で結果を出して周囲から認められることは、確かに大きなやりがいです。

アールが娘の結婚式よりも品評会を優先するのも、まさに“認められること”に人生の自己実現を求めたからこそ。


そんなアールが仕事という拠り所を失い、孤独な境遇に陥ってようやく気づいた大切なこと──

そこに込められたテーマは、アールより若くて犯罪と無縁な人でも、我が身を振り返るのに十分な重みがあります。


クリント・イーストウッドが滋味深い演技で体現する“人生の教科書”を、ぜひ胸に刻み込んでください。


「男の生きざまを語る映画」他の記事はこちら>


『運び屋』 (2018年) /アメリカ/ 上映時間:116分

3月8日(金)全国ロードショー

© 2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

上村 真徹(ライター・編集者)
上村 真徹(ライター・編集者)

家庭では妻の笑顔と娘の成長を最大の生きがいに、週末の料理やデザート作りで家族の胃袋をつかんでいる。最近は娘が成長し、以前ほど甘えてくれなくなったのが悩みのタネ。映画は新作・旧作問わず、年間100作品以上鑑賞。マイベストムービーは『ゴッドファーザー』だが、実は泣ける映画好き。

Ranking ランキング

CATEGORY カテゴリ

TAGS タグ

QRコードでLINEの友だちを追加