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男性の育休が当たり前の社会に──育休取得推進企業の社員に訊く育休体験談 第1回「丸井グループ」

今年6月、自民党国会議員の有志が「男性の育休義務化」を目指す議員連盟を設立し、育休を巡る議論が新たに高まりを見せています。


厚生労働省でも2020年度までに男性の育休取得率を13%にする目標を掲げているものの、実際は6.16%(平成30年度・厚生労働省調べ)にとどまっています。

この現状を改善するには、国主導の義務化制定だけでなく、育休を取得しやすい風土や制度が各企業に浸透していく必要もあるのではないでしょうか。


これまで家menでは育休取得経験のあるパパの体験談をご紹介してきましたが、今回は育休取得推進に積極的な企業への取材を実施。育休を取得した男性社員にインタビューしながら、“男性の育休が当たり前”の社会になっていくためのヒントを探りたいと思います。


第1回でご紹介する企業は、男女問わず活躍できるよう早くから男性社員に育休取得を呼びかけ、男性の取得率が109%(2018年度3月期)(※)にまで達した丸井グループ。

昨年4月から半年間の育休を取得した押川剛一郎さんに、会社の育休制度を利用した体験談や実感について伺います。


※算出方法:育児休業取得者数 ÷ 配偶者が出産した社員数 ×100。配偶者の出産と育休の取得年度がずれる場合があるため、100%を超えています。

参照:丸井グループHP

http://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/theme02/org_02.html


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(写真右)

押川剛一郎さん

株式会社エムアンドシーシステム

デジタルトランスフォーメーション推進本部

R&Dセンター R&Dセンター担当 課長

(写真左)

加藤暁子さん

株式会社丸井グループ

人事部 人事企画・多様性推進課 チーフリーダー


会社の企業風土が育休取得の後押しに


──まず押川さんの家族構成を教えてください。

妻は専業主婦で、7歳の長男、3歳の長女、1歳の次女を育てています。長女が生まれた時に10日間の短期育休を取得し、次女が生まれた昨年の4月から半年間の育休を取得しました。


──2度の育休で取得期間に差がありますが、会社で育休期間に関する規定があるのでしょうか?

自分が取り組んでいる業務との兼ね合いをクリアし、上司に相談して申請が認められれば、育児・介護休業法に定められた期間を超えて最長3年まで育休を取得できます。ただ、男性社員が長期育休を取得した例は社内でまだ珍しいですね。


──押川さんが育休の取得を決意したきっかけは何でしょうか?

長女が生まれた時に短期育休を取得しましたが、次女を授かった時に、もっと家族と向き合う時間を作りたいと考えました。

以前『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)という本を読む機会があり、人生100年時代を生きていく上で、自分の中の「幸せの形」をある程度認識して意思を持って行動することが重要だと考えました。そして「自分が大切にしたいことは何か」を突き詰めていく中で、重要な位置を占めるのは家族との時間である、との考えに至り、決断しました。


──育休中は家事や育児を積極的に行ったと思いますが、もともと家事や育児に熱心だったのですか?

子どもが好きなので育児には積極的でしたが、家事はどちらかと言うと妻に任せきりでした。長期間育休を取得することで家事と育児を積極的に分担し、産後間もない妻の負担を少しでも減らしたかったのも取得の目的でした。


──2度目の育休は半年間取られていますね。その期間にした理由は何かあるのでしょうか?

最初の育休が10日間であっという間に終わり、今度は長期間育休を取得し家族としっかり向き合える時間を作りたいという思いがありました。また、今は元気ですが、次女が生まれた当初少し体が弱かったこともあり、なおさら家族との時間を大切にしたい、と考えました。

それ以外の現実的な理由として、厚生労働省から支払われる育児休業給付金が最初の半年間は給与の67%、それ以降は50%に下がるという金銭的な面も考慮し、妻にも相談して期間を半年に設定しました。また、会社も半年ごとに組織変更や異動が発生するため、復帰のタイミングも期中にはならずキリが良いと考えました。


──なるほど。男性社員の長期育休取得者は会社でまだ多くないとのことでしたが、半年間の育休を取得するにあたって不安はありましたか?

休職前に携わっていた仕事に一定の方向性が見えたこともあり、育休の取得を検討していましたが、正直なところ、育休が自分のキャリアにネガティブな影響を与えるのではないかという懸念も多少ありました。

育休取得の決断に至るまでは、当時の上司の方々に何度か相談しましたが、そうした不安に対しても「自分の意志と家族の状況を考えてはどうか」とアドバイスを頂き、自分自身、自分の人生にとってこれはプラスになる、という想いを持っていたので決断しました。

男性社員の育児参加を促進する企業風土が根づいている丸井グループだからこそできた決断だとありがたく思っています。


──育休の取得期間について奥様に相談したと伺いましたが、他にも育休前に話し合った話題はありますか?

育休中に家事・育児を分担するにあたって価値観をすり合わせておく必要があると思い、育休の意義や過ごし方について妻と話し合いました。

少子高齢化が進む日本で生産年齢人口が減少していること、日本企業のROEの低さや出生率の低さ、女性活躍推進の必要性など、社会情勢から入りすぎたため、ピンとこなかったようでした。改めて場を設けることである程度理解してもらいましたが、妻の立場に寄り添えず、一方的に話しすぎたなと反省しています。


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家族と濃密に過ごすことで得られた、かけがえのない体験


──では、育休中について伺いたいと思います。半年間の育休中は主にどのように過ごしていましたか?

育児に関しては、長男と長女の世話や幼稚園・習い事の送り迎えは私が行い、生後間もない次女の世話は妻がメインという役割分担でした。家事は洗濯と洗い物を私、料理と掃除を妻、という分担でしたが、私もできることは意識的に率先して行いました。


──育休中に「大変だなあ」と感じたことはありますか?

同じ目的に向かって協力しながら動いてくれる仕事の仲間と違って、当然ながら子どもには大人の理屈が通じません。当時は3人とも未就学児で、時間に追われる中で親の思い通りに動いてくれない場面が多々ありましたので、その時に大変さを感じました。


──なるほど。逆に、育休を通じて得られたプラスの体験や良かったことはありますか?

子どもの日々の成長を間近で見て関われることが最も良かったことです。長男には水泳を教えてクロールができるようになり、長女にはトイレトレーニングに毎日付き合うことで一人でトイレに行けるようになりました。私の自己満足になりますが、子どもたちとの時間があればこその結果ではないかと思っています。

また家事と育児に追われる家庭の日常を体験することで、妻の大変さを身をもって理解でき、普段接する際の気遣いに活かせるようになったのではないかと思います。


──他にも育休中ならではの体験や変化はありましたか?

幼稚園の“父親の会”や町内会の活動に参加することができ、育休前より交遊の幅が広がりました。父親の会で知り合ったパパに育休を勧めたところ、私の育休体験を楽しそうと思ってくれたのか、後日「1カ月の育休を取得しました」と知らせてくれたのは嬉しかったです。


長期育休取得者としての貴重な体験談を発信し、男性社員の意識改革に貢献したい

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──育休後についてお伺いします。育休体験を経て自身の働き方やライフスタイルに変化は生まれましたか?

子どもの数多くの「初めての経験」を間近で見てきたことで、自分の中でも今まで以上にチャレンジ精神が湧いてきて、復職後は会社公認のビジネススクールへの通学や社内プロジェクトへの参加、資格の取得など新たなことにチャレンジする日々を過ごしています。

また、平日はどうしても子どもが寝る直前に帰宅することが多いのですが、子どもの行事には極力参加しようという想いが以前より高まりました。そのためにも、計画的に仕事に取り組むよう意識しています。


──自身の育休体験の社内へのフィードバックで考えていることはありますか?

「男性の育休取得率を上げるには当事者である男性の声が一番響く」という意見を聞いたことがあるのですが、私も同感です。まだ社内で珍しい長期育休取得者だからこそ、ポジティブな体験談を発信していきたいと考えています。現在所属している部署にちょうど子どもが生まれた男性社員がいたので、育休について話をさせてもらい、今年の秋に育休を取得する予定です。

最近は、育児休業の取得を検討している人から人事部経由で相談の依頼がきて、ランチミーティングをすることもあります。

また、自分が育休を体験したことで子育ての大変さを多少は理解できたので、子育てで大変そうな周りの社員の方々に対しても自分なりにケアできればと考えています。


──世の中には育休を取得したいけど躊躇している男性も少なくないと思います。そうした現状に対して、育休体験者としてどのように感じるか教えてください。

育休を取得したいと思ったら、まずは、職場の身近な人に相談する機会を設けることが必要だと思います。仮に上司や同僚が男性の育休に理解がなかったとしても、話し合いをきっかけに意識が変わることもあるので、まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか。

そして周囲の方たちも、可能な限り相談に乗ろうという姿勢で臨んでほしいと思います。そうした職場環境は社員の働きやすさやワークライフバランスの実現につながり、ひいては企業価値の向上につながるはずですから。


──最後に自らの体験を踏まえて、育休の取得を検討している方たちにメッセージがあればお聞かせください。

育休だからといって必ずしも完璧なイクメン生活を目指す必要はなく、単純に「家族ともっと深く向き合いたい」という思いから育休を取得するのも良いのではないかと思います。長い人生で子どもと向き合える時間というのは実はそれほど多くないので、育休ならではの貴重な機会をぜひ活用してほしいと思います。


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押川さんの体験談を伺う中で、男性の育休取得を推進するには、職場における理解やサポートが大きな後押しになることが実感できました。そうした意味で、丸井グループで男性社員の育休取得率が109%に達しているのも、男性の育児参加を促進する企業風土が根づいているからこそでしょう。


また、家族と向き合う時間を作るために育休を取得した押川さんの思いに触れることで、育休の動機や過ごし方に模範解答なんてないことに改めて気づかされました。多様なライフスタイルや価値観に合わせて育休を過ごせば良い──そう思えると、男性も育休をもっと身近な選択肢として感じられそうですね。



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