
「家事シェア力」第1位は兵庫県!47都道府県別ランキングから考える家事シェアの課題と成功のコツ
夫婦間の家事シェアがうまくできているかどうかは各家庭によって千差万別ですが、何か影響を与える要素があるのだろうか?
そう考えていた折に、家事をシェアしてハッピーになる「家事シェアハウス」を提案している大和ハウス工業株式会社から「家事シェア力全国都道府県ランキング」という興味深い調査結果を発見しました。
この調査は、20代〜40代の中学生以下の子どもがいる共働き夫婦を47都道府県ごと200人ずつ、つまり合計9400人に一斉調査したもの。家庭の家事シェアの実態を通じて「家事シェア力」をポイント化し、都道府県別ランキングを発表したのです!
今回は「家事シェア力全国都道府県ランキング」の結果を掘り下げながら、県民性博士・矢野新一さんに聞く「家事シェア力と県民性の関係」と、家事シェア研究家・三木智有さんが解説する「家事シェア力を高めるヒント」をご紹介します。
夫婦間の家事分担比率のギャップ + 家事負担者の満足度 = 家事シェア力
まずは今回のテーマとなる「家事シェア力」の算出方法を説明しておきます。
家計研究家である氏家祥美さん監修のもと作成した全42種の家事を8項目(①片付け ②補充・交換 ③買い物 ④料理 ⑤掃除 ⑥ごみ捨て ⑦洗濯 ⑧育児・その他)に分類。
それぞれの項目における夫と妻の負担度合いの実態を聞き、両者のギャップの割合を10点から差分を取ります(ギャップ1なら9点)。さらに家庭内の家事負担者の満足度を10点満点とし、合計20点満点を家事8項目、計160点満点で「家事シェア力」を点数化しました。
この方法で算出した家事シェア力を都道府県別にまとめたところ、総合ランキングは1位「兵庫県」・2位「岡山県」・3位「静岡県」。一方でワーストには「長崎県」「青森県」「佐賀県」などがランクイン。九州、東北の各県がワーストにランクインする結果になりました。
また、8分野別の家事シェア力ランキングでも、総合1位の兵庫県が8分野中5分野で1位を獲得。ちなみに5位までにランクインした都道府県は、本州の西寄りに多く見られる結果となりました。
他にもご当地版版“名もなき家事”をフリーアンサーで調査。その回答に地域性が現れていて興味深かったので、併せてご紹介します。
【北海道】 冬の除雪。お隣との境界が分からなくなるので、普段から関係を良くしておかないとトラブルになる。
【秋田県】お酒を飲むので、子どもの食事とあわせて、酒の肴になるようなものを作らないといけず、献立を考えるのが大変。
【静岡県】お茶処なので、お茶を飲む時に何度も茶葉を使い、片付けも大変。茶しぶのついた急須がキレイにならない。
【香川県】冷凍うどんを常にストックしているので、冷凍庫の空きが少なく、冷凍食品を買ったら収納するのに苦労する。
【新潟県】農家さんからもらったお米の精米作業に手間がかかる。無洗米があまり売っていない。
【大分県】 温泉が町のあちこちで湧いているので、車のサビ防止のためにこまめな洗車をしないといけない。
家事シェア力と県民性に関連性はあるのか?
今回で都道府県ごとの差が明らかになった共働き夫婦の「家事シェア力」。そこで県民性分析の第一人者である矢野新一さんに、今回の調査結果と、都道府県ごとの県民性との関係についてコメントをいただきました。
●「夫婦で普段から対等に話し合う」県民性が上位につながる
「県民性」の観点で見れば、兵庫県(1位)は神戸を中心にイギリス文化が根づく街。先進的な考えや方法を、真っ先に取り入れようとするお土地柄です。
岡山県(2位)は古くから「職人や技術者の街」として知られ、全国の中で一番真面目で仕事終わりもまっすぐ帰宅する人が多く、調査結果同様「夫婦の時間」を優先するようです。
また、静岡県(3位)と大阪府(4位)、石川県(5位)も「女性がしっかり主張する」土地柄と言われます。「夫婦で普段から対等に話し合っている」地域が、上位にあがっています。
●「俺はやっている!意識が強い」九州地方と「会話の内容を考えすぎる」東北地方
今回残念ながら低い結果となってしまった、長崎県(47位)や佐賀県(45位)、熊本県(43位)は九州地方特有の県民性が関係していると思います。「九州男児」は男らしく力強いイメージですが、実際は妻の手のひらで転がされているということが多く、家事においても「俺はやっている!意識が強い」部分も。男性が「やっている!」と思っていても、妻がお膳立てをしていることが多く、家事分担に対する認識のズレがあるのかもしれません。
青森県(46位)や山形県(42位)、岩手県(41位)、宮城県(40位)など東北地方でも認識に大きなギャップがあるようです。なかでも青森は「日本で一番テレビを視聴するエリア」であり、内向的な土地柄で知られます。 以前「同年代でも知らない人とはほとんど話さない」という青森県の人たちに理由を聞いたところ、「万が一でも相手を傷つけるようなことを言いたくない」と答えていたことからも、会話の内容を考えすぎて、やめることを選びがちなようです。
一方で長崎も青森の人たちも「夫婦間で家事について会話している」(両県ともに15位)と回答しており、会話はするものの「本音が伝えきれない」県民性が認識のズレを生んでいるようです。お互いに気遣いを持ちながら、もう少し本音に「ふみこんだ会話」ができるようになると改善できるのではないでしょうか。
夫婦円満・生活満足・家事シェアは三位一体で実現できる⁉
また今回の調査では、県民気質以外からも家事シェア力アップのヒントにつながる統計が出されています。
●夫婦関係が良好な県は、家事シェア力も高い
家事シェアの実態と併せて夫婦関係について尋ねたところ、家事シェア力総合ランキングで上位を占めた都道府県が軒並み上位に。例えば、3項目すべてにランクインしている「岡山県」は、家事シェア力総合ランキングで全国第2位、「大阪府」は第4位でした。
つまり、夫婦関係が良好な県は家事シェア力も高い、という傾向が読み取れそうです。
●生活満足度が高い県は家事シェア力も高い
また、日常生活の満足度についても尋ねたところ、こちらも家事シェア力総合ランキング第1位の「兵庫県」が3項目すべてにランクインし、第2位の「岡山県」も2項目でランクイン。
夫婦関係の調査と同様の傾向が見て取れることから、夫婦関係が良好な県は生活満足度も高く、また家事シェア力も高いという相乗効果があるようです。
その逆に、家事シェア力を高めることで夫婦関係も生活満足度も高くなる、とも言えそうですね。
家事シェア成功の秘訣は良好なコミュニケーションにあり
最後に、「家事シェア力を向上させるにはどうすればいいのか」と「家事を通じて、夫婦がコミュニケーションをとっていくには」という課題について、「夫婦の家事シェア」の推進活動を行うNPO法人tadaima!代表の三木智有さんにお話をお聞きしました。
●「家事シェア」成功の指標は「負担」と「不満」のマネジメント
家事シェアの指標になるイライラの原因には2種類あります。 それが家事の「負担」と「不満」です。 「負担」とは掃除の面倒臭さや、日々の料理の大変さなどいわゆる手間のこと。 それに対して「不満」とは「自分が指示しないと誰も何もしない」「自分ばっかりが家のことを考えたりしなくちゃいけない」という言わば不公平感のこと。
今回の調査ではこの「負担」にあたる部分がどうシェアされているか、と「不満」にあたるコミュニケーションの部分がしっかりと取れているかを合わせて家事シェア力としています。
結果を見て面白いなと感じるのは、上位にランクインする県ほど「負担」と「不満」のシェアバランスが良いということです。また、家事の満足度に注目してみると、コミュニケーションの高さは作業シェアの低さをいくらかは補ってくれていることも分かります。
●「話を聞く」「情報シェア」「ねぎらいと感謝の伝達」が成功への架け橋
「家事シェアのためのコミュニケーション」を円滑に深めるポイントは3つあります。
①「お互いの話をちゃんと最後まで聞く」
コミュニケーションの目的は決して「家事の負担の軽減」だけではありません。状況や大変さの理解を求めることが目的の場合もあれば、ちょっとした工夫やこだわりを聞いてほしいだけの時もあります。
②「しっかりとした情報のシェア」
実はスケジューラーを夫婦で共有するだけで夫の家事育児時間が向上したという調査結果(※Google Women Will調査)もあるほど、情報の共有は大切なのです。
③「ねぎらいと感謝を伝えること」
感謝を伝えるなんて当たり前のようですが、伝え方にちょっとしたコツがあります。
例えば、「美味しいごはんをいつもありがとう」はもちろん素敵な感謝ですが「今日帰りが遅くなっちゃったの?そんな大変な中、 俺の分まで作ってくれてありがとう」のように「やってくれたプロセスや気持ち」に対して感謝を伝えるのです。相手の状況や環境を踏まえつつ伝えるだけで、ただの「ありがとう」が何倍にも大きく相手に伝わるでしょう。
「家事シェア力全国都道府県ランキング」から見えてくる家事シェアの実態と課題、さらに専門家からの家事シェア推進のアドバイスをお届けしました。
一概に「○○県だから家事シェア力が高い」とは言いきれないものの、各都道府県の県民性と照らし合わせることで、家事シェアがうまくいくヒントが見えたのではないでしょうか。
家事シェアというタスクの解決だけに目を奪われず、作業を分担し合う夫婦間の関係にも気を配り、家事シェア力・夫婦関係・生活満足を相乗的にアップできるといいですね。
■詳しい調査結果はこちら
https://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/kajishare/ranking2018/index.html
<調査概要>
◇実施時期: 2018年10月24日(水)〜10月29日(月)
◇調査方法:インターネット調査
◇調査対象:
全国の20〜40代の中学生以下の子どもがいる共働き夫婦(配偶者・子ども以外の同居人がいる方除く)。各都道府県200人を上限とし、合計9159人回収
※秋田県、山形県、福井県、山梨県、和歌山県、鳥取県、島根県、山口県、徳島県、高知県、佐賀県、大分県、宮崎県の13県が200人に達しておらず、ウェイトバックをかけて集計を行いました。