
料理を通じて家族と向き合う時間を作る──キユーピーグループ男性従業員向け料理教室レポート
働き方改革関連法の施行によって労働環境が改善されていく中、“長時間労働の是正”からさらに一歩先を見すえ、独自の施策を実践している企業もあります。
キユーピー株式会社では、働き方改革で生まれた時間を有意義に過ごす自己啓発の一環として、そして“男性=仕事/女性=家事”という性別役割分担意識を改革する家事参画応援プログラムとして、プロの料理人による男性従業員向けの料理教室を実施。
「男性が料理をすることで家族と向き合う時間を増やし、自分もみんなも笑顔にしよう」というコンセプトの下、家庭で普段あまり料理をしないという方(既婚・未婚は不問)が主なターゲット。
2018年10月から数カ月に1回のペースで開催され、リピーターが生まれるほどの好評を博し、前回のアンケートによると87.5%の参加者が教室で教わった料理を実際に家でも作ったそうです。
男性の家事参画を応援する興味深い取り組みを詳しく知るべく、去る6月13日に開催された料理教室を家men編集部が取材してきましたので、当日の模様をレポートします。
手早く作れるシンプルな家庭料理をプロのシェフが指導
今回で3回目を迎える料理教室。男の料理というと“食材や手間暇にとことんこだわる非日常的な料理”というイメージもありますが、この料理教室で教えるのは普段の食卓に出すシンプルな家庭料理。
過去の教室では親子丼やカレイの煮つけ、そして今回は蒸し暑くなるこれからの季節に向けて「そうめん つゆの味変3種」と副菜の「納豆とめかぶ くずしやっこ」を作ることに。
業務時間外の夕方5時から始まる料理教室には、20代から60代まで年齢も部署も異なる男性従業員24名が、ちゃんと事前に仕事を終えてから出席。
「結婚してほとんど料理を作っていないので、良いきっかけだと思った」
「簡単に作れる料理を知りたかった」
「家庭での料理のレパートリーを増やしたい」
など、皆さんそれぞれの想いから参加を決意したそうです。
スタートに先がけて、料理教室を企画したCSR本部スタッフの方が「男性従業員の皆さんに料理を楽しんでもらい、そして家庭でも実際に料理をしてもらうことが目的です。料理を通じて家事に参画し、ぜひ家庭に笑顔を生み出してください」と料理教室の趣旨を改めて説明。
さらに、料理教室=家庭料理の心得として「これができれば家でも奥さんに喜ばれますよ」と“さしすせそ”のスローガンを伝授しました。
さ:ささっと手早く
し:食材はリーズナブルに
す:少ない調味料で
せ:世界で一つの料理を楽しもう
そ:そのあと片づけ、すっきりと
料理教室の講師を務めるのは、キユーピーのコーポレートシェフとして商品開発や商品を使ったメニュー提案にも携わっている原 進シェフ。まず原シェフが作り方のお手本を見せてから、参加者が実際に調理を進めるというスタイルで進行していきます。
原シェフによる調理のお手本はカメラでモニターに映し出されていましたが、手際よいプロの技を間近で見ようと参加者全員がキッチンテーブルにかぶりつき、熱心に観察。
原シェフは料理教室の講師経験も豊富なだけあって、食材の切り方などの料理の基本から、包丁の切れ味が悪くなったときの応急処置といった裏技まで丁寧に分かりやすく解説。
さらにその合間に男のウンチク心をくすぐるトリビアを挟み、参加者の料理への興味と意欲をグイグイ高めていきます。
原シェフのレクチャーが終わってから、参加者が隣の人と2人1組になって調理をスタート。普段あまり料理をしない方が多い中、不慣れなぶん真剣な表情で慎重に進めている様子。
やがて「次はどうするんだっけ?」「お、いいんじゃないですか」といったコミュニケーションが、ほとんど初対面という参加者たちの間で自然と生まれ、次第に和やかなムードに包まれていきます。料理教室は世代や部署を越えた従業員同士の交流の場にもなっているようです。
原シェフは各テーブルを巡回して参加者の調子を観察し、時おりマンツーマンで熱血指導。プロから裏技を教わるまたとない機会に、皆さん目を輝かせながらアドバイスに聞き入っていました。
なかなか興味深かったのは、そうめんを茹でる時間だったり料理の盛りつけ方など、作る人たちの個性が随所に現れていたこと。他の男性が料理をしている姿を見る機会はなかなかないので、「へえー、こういうやり方もあるのか」「このやり方は参考になるな」といった発見を得られますね。
さらに、冒頭で伝授された“さしすせそ”の“そ”──大事な“あと片づけ”も調理の合間に並行。年長者も若手も関係なく、自分が使った調理道具は自分で洗って片づけていました。
楽しい料理体験が「家でも作ってみよう」という自発的な意欲に
料理が完成したら、お待ちかねの実食タイム。終業後ということで缶ビールが振る舞われ、参加者の皆さんも思わず笑顔に。「お疲れさまでした!」と乾杯し、自ら奮闘して作った料理を美味しそうに堪能。
「めんつゆに梅酒を入れると合う!」「オイルサーディンもアリですね」「副菜に加えたトマトの酸味もイイ!」など驚きや感嘆の声が挙がっていました。
最後に原シェフからデザートのどら焼き(生地の中にマヨネーズを使うことでしっとりとした食感に!)がプレゼントされ、料理教室は終了。
今回の料理教室の経験を踏まえて各自が「俺の宣言!」という抱負を記入して記念撮影。最後に人事本部のスタッフが挨拶し、「今回作った料理を、ぜひ自宅でも家族や友人に振る舞ってください。作った後の片づけもお忘れなく」という呼びかけで締めくくりました。
料理教室を終えた参加者のアンケートでは
「料理の裏技を先生に教えてもらえて良かった」
「他の人と料理をする機会がなかったので、手際の良さなど勉強になった」
「簡単なので家庭でもトライしてみます」
といったポジティブな反応が多く挙がっていましたが、そうした声も納得できる充実した内容!
男性の家事参画を後押しするには、ただ「やるべき」と押し付けるよりも、こうした楽しい体験を重ねた方がより効果的だなと実感できました。
今回のキユーピーグループ男性従業員向け料理教室のような取り組みが他の企業にも広がって、家事に携わろう!と自発的に思える男性が増え、全国それぞれの家庭に笑顔がたくさん生まれていくといいですね。