「19歳でパパになって、人生に対して本気になれました」Daddy's Talk 第6回・前編 西村創一朗さん(複業研究家)

「19歳でパパになって、人生に対して本気になれました」Daddy's Talk 第6回・前編 西村創一朗さん(複業研究家)

ライフスタイル

各分野で独特の感性を発揮し目覚ましい活躍を遂げているパパたちは、どのような家庭生活を送っているのか──。そんな気になる疑問を掘り下げる「Daddy's Talk」。



今回は、大学在学中の19歳でパパとなり、起業、子育て、社外活動などパラレルキャリアを実践している複業研究家の西村創一朗さんにインタビュー。前編では、若くしてパパになることで得られた体験について伺います。


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「“子育て”ではなく、“子育ち”。親のエゴを通さないことが大事」Daddy's Talk 第6回・後編 西村創一朗さん(複業研究家)
大学在学中に結婚し子どもを授かった、複業研究家の西村創一朗さんへのインタビュー後編。若くしてパパになった西村さんならではの育児体験や、パパ友作りのコツなどを伺います。
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理想とはほど遠い“学生パパ”…その違和感を解消したきっかけは

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──西村さんは大学在学中に結婚しパパとなりましたが、学生パパとしての暮らしはどのようなものだったのですか?


平日は大学の講義が終わったら家電量販店のアルバイトに直行し、家に帰るのは夜の9時半。住まいは妻の実家に同居させてもらい、ご両親が僕を温かく迎え入れてくれたので生活上のストレスはなかったのですが、そうは言っても血の繋がっていない家族と一つ屋根の下に暮らすのははじめてした。サザエさんで言う「マスオさん」状態で正直ホームがアウェーのように感じた時期もありました(笑)。


──時間の余裕がほとんどなさそうな生活ですね…。


学業とアルバイトのダブルワークを何とか両立させ、家では家事育児が待っていて、自分の時間はほとんどありませんでした。子育てだって初めての経験だったから、まだ赤ちゃんの息子を寝かしつけようと頑張ってもなかなか寝てくれなかったり、妻が1日家を空けることになった際に一人でお世話したら全然泣き止まなかったり、四苦八苦の連続でした。でも、そうした日々が苦痛だと感じる暇もないぐらい、毎日必死でしたね。


──赤ちゃんが泣き止まないときの、「ママじゃなきゃダメなの?」という落胆は、パパあるあるですね。そんなに多忙だと普段お子さんとゆっくり過ごす時間はなかなか取れなかったのでは?


大学の講義が2限目以降という日もあって、そういう時は登校前に子どもとお散歩したり遊びながら一緒に過ごしました。朝に親子のコミュニケーションを深めることができたのは、学生ならではのメリットでしたね。


──なるほど。他にも学生パパだからこそ得られたアドバンテージはありましたか?


やはり家族を背負わなければいけないわけですから、就職活動において自分の将来を考える本気度が他の学生と比べて高かったと思います。大学1年生の頃から就職活動を意識しはじめ、毎日日経新聞を読んでいました。

さらに就職活動が本格化してからは100人以上のOB・OG訪問を繰り返しながら「子どもに胸を張れる仕事は何だろう?自らワークライフバランスを創れる実力が身につく仕事は何だろう?」と考え抜き、最終的にリクルートエージェント(現・リクルートキャリア)に入社しました。つまり、僕が歩んだキャリアは、子どもがいたからこそ決断できたものだったと思います。


──若くしてパパになった西村さんには、結婚当初から理想の家庭像や父親像はありましたか?


僕の父親は典型的な昭和的な父親で家事育児をまったくやらない人でした。結局小学6年生の時に両親が離婚したんです。そういう父親をみて育ったからこそ、将来自分が結婚したら、バリバリ働いて家計を支えつつ、家事育児もしっかりやって子どもとも仲良し、いわゆる“良い父親”になろうと目指していました。


──ご自身の父親を反面教師にしたわけですね。そうした理想の父親像は実現できたのですか?


大学に通いながら家族を養う学生パパとなると、どうしても自分が思い描いていたようにバリバリ働くことは難しく、そのギャップにジレンマを抱く時期もありました。そんな中、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)代表を務める安藤哲也さんのインタビュー記事をたまたま新聞で読み、「“良い父親”ではなく、”笑っている父親”を目指そう」というメッセージに脳天を撃ち抜かれたような衝撃を受けたんです。


──その一言で理想の父親像に対するモヤモヤが解消されたわけですね。


はい。自分にとって大きな気づきを得られたわけです。このメッセージを若い世代に伝えていくのが学生パパである僕の務めではないかと使命感を抱き、安藤さんに直訴してFJの学生支部を立ち上げました。


家族ファーストで独立を決意

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──新卒入社の時点だとまだ同期で結婚している人はいなかったと思いますが、“学生パパ”から“新卒パパ”になって環境や生活は変化しましたか?


家庭と仕事の両立で相変わらず多忙ではありましたが、学生時代は土日もアルバイトで働くという “ひとりブラック企業状態”だったわけで(笑)、それと比べたら生活がシンプルになりました。リクルートも比較的ハードワークではありましたが、毎日終電、というようなことはなく、土日はしっかり休むことができたし、メリハリのある“パパらしい暮らし”を送っていましたよ。


──とはいえ、独身の同期社員と比べると大変なことも多かったのでは?


そうですね。仕事終わりに同僚と飲みに行く時間とお金の余裕もなく、そうしたジレンマは相変わらず抱えていました。その一方、家族を養わなければいけないからこそ、仕事へのコミット度・本気度は同期の誰にも負けない!という気概を勝手に持っていました。


──そんな中、2017年に複業研究家として独立したわけですが、その理由は?


リクルートでの仕事はやりがいがあり、会社も副業を認めてくれていたので、キャリア面ではあえて辞める理由はありませんでした。ただ、自宅から毎日往復3時間かけて通勤していたんですよ。週で15時間、年間で720時間というロスを家族のために使うことができたらな…という思いが募り、2016年に長女が生まれたことをきっかけに、働き方や労働時間を自分でコントロールできるよう独立しました。だからキャリアアップのためというより、ライフシフトを目的とした独立・起業ですね。勝手に「育休的起業」と呼んでいます(笑)。


──家族と一緒に過ごす時間を増やすためにキャリアシフトを果たしたのですね。その目的は実際に果たせましたか?


はい。朝早くから働くぶん夕方4時ごろには必ず仕事を終え、帰宅ラッシュになる前に帰宅できるようになりました。生まれて間もない娘と過ごす時間も十分取ることができ、おかげさまで娘はパパっ子になってくれましたよ。また、学校の行事に仕事の予定を合わせることもスムーズになり、今も家族ファーストの生活を実践できています。


妻は僕を“あるべき場所”に戻してくれる人

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──そうした順風満帆な生活を送る中、2018年に過労とストレスから体調を崩してダウンしたそうですが、その困難をどのように乗り越えましたか?


やはり家族の存在、特に妻のサポートが大きかったですね。当時の僕は、独立し誰にも守ってもらえないことへの底知れぬ不安に押しつぶされそうになったのですが、妻の「どんなことがあっても私はあなたの味方だからね」という言葉が大きな支えになりました。


──西村さんにとって奥様はどんな方ですか?


妻は正義感が強くまっとうな価値観を持っていて、僕が奇抜な発想でアクセルを踏みすぎたらブレーキを踏んでくれたり、言うべきこともちゃんと言ってくれます。調子に乗っていたらちゃんと戒め、落ち込んでいたら励ましてくれる、いわば僕を“あるべき場所”に戻してくれる人ですね。


──逆に西村さんが奥様へのケアとして心がけていることはありますか?


家事の分担は妻のほうが多いので、自分自身もっともっと家事を頑張らないと、と思いつつ、妻は料理が得意で僕は掃除や洗濯が得意なので、お互いの得意分野を活かす形でできる範囲で家事シェアを実践しています。もし将来、妻が何かやりたい夢を持つようになったら、僕の独立を応援してくれたように妻のことを応援したいですね。


──30歳前後で結婚する一般的な男性と比べて目まぐるしい日々を過ごしてきたと思いますが、今振り返って「19歳でパパになって良かった」と思えますか?


はい、もちろんです。若いうちにパパになると、子どもと同じ目線で接することができるし、エネルギーが必要とされる育児において体力的にも大きなアドバンテージ。それに、一般的なパパだと子どもが独り立ちする頃には50~60代に突入していますが、僕の場合は育児がひと段落する年齢になってもまだ若く、何かに新しくチャレンジする力がまだ十分残されている。つまり「人生を2回生きられる」わけですから。


──「人生を2回生きられる」ってすごくいい考え方ですね。では、子育てがひと段落してからやってみたいことはありますか?


結婚してから妻と2人きりで旅行をしていないので、海外旅行に出かけてみたい。好きなサッカーを本場イタリアで生観戦できたら最高でしょうね。


──今後の生活で「こうしたいな」という課題や願望はありますか?


先ほど話したように家族と過ごす時間を増やすため独立したのですが、それでも今は自宅から仕事場まで通勤時間が往復2時間あります。できれば地元で仕事が完結するぐらい、職住近接のライフスタイルを実現したいですね。そう言いつつも事業を創ることも大好きなので、結局「二兎を追って二兎を得る生き方」を模索しているような気もします(笑)。




19歳でパパになってから、家族を養うためさまざまな制約のある日々に明け暮れながら、自身の境遇を逆に強みに変えていく西村さんのタフさに驚かされました。自分を支えてくれる存在として家族のありがたみを実感してきたからこそ、現在に至るまで“家族ファースト”のライフスタイルに徹してこれたのでしょう。


後編では、3人のお子さんとの関係や育児へのこだわりについて伺います。

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「“子育て”ではなく、“子育ち”。親のエゴを通さないことが大事」Daddy's Talk 第6回・後編 西村創一朗さん(複業研究家)
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<インタビュー協力>

西村創一朗さん(複業研究家/HRマーケター)

西村創一朗

複業研究家/人事コンサルタント。『複業の教科書』の著者。1988年神奈川県生まれ。大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・人事採用を歴任。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、2017年1月に独立。独立後は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。2017年9月〜2018年3月「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経済産業省)委員を務めた。プライベートでは11歳長男、7歳次男、3歳長女の3児の父、NPO法人ファザーリングジャパンにて最年少理事を務める。