
【災害の備え・対処法】もしもの備えはできていますか?家族と確認したい災害の備えや対処法
監修者
高荷智也(備え・防災アドバイザー)
目次[非表示]
- 1.今からやっておきたい災害の備え
- 1.1.ハザードマップの確認
- 1.2.地域の避難場所や避難経路の確認
- 1.3.家族の安否確認・合流方法を共有
- 1.4.家具の転倒・落下防止
- 1.5.食料・飲料水の備蓄
- 1.6.非常用持ち出しバッグの準備
- 2.もし災害が起きたら…知っておきたい緊急対策
- 2.1.止血の応急処置
- 2.2.骨折の応急処置
- 2.3.ヤケドの応急処置
- 2.4.消火器の使い方
- 2.5.身近な生活用品で食器や簡易トイレを作る
- 3.家族で防災ロールプレイングのススメ
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災から、今年で8年が経ちます。
東日本大震災は決して例外的な自然災害ではありません。それ以前からも日本では大きな地震が頻発し、例えば2000年から2009年の間に全世界で起きたマグニチュード6以上の地震のうち、実に20.5%が日本で起きたものでした(※)。
大切な家族のためにできること、それは今から災害の備えを万全にしておくことです。
「連載「目指せ我が家のHERO!家族を助ける特技を作る」第3回では、多岐にわたる防災アクションを具体的に解説した本『東京防災』を参考に、災害から家族を守るための備えや、いざという時の対処法をご案内します。
今からやっておきたい災害の備え
いざという時にあわてず落ち着いて行動するためには、万全の準備と心構えが必要。地震や津波などの自然災害が発生した時も、一つひとつの備えが身を守ってくれます。
まずは次のような防災アクションを事前に行っておきましょう。
ハザードマップの確認
@tokyo_bousai
ハザードマップとは、さまざまな自然災害による被害想定区域や避難場所・経路などの情報を表示した地図のこと。例えば地震ハザードマップでは、地震の揺れによって引き起こされる建物倒壊や液状化の危険度が地域ごとに表されています。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から、各市町村が作成したハザードマップにアクセスできます。自分が住んでいたり働いている場所でどんな被害が起こりうるか事前にシミュレーションし、大津波や土砂災害が想定される場合は素早い避難の準備、床下程度の浸水が想定される場合は土のうや止水板の準備が必要です。
また大地震だけはハザードマップの有無に関わりなく、日本全国どこでも生じる可能性があるため、自宅の耐震診断と耐震強化は必ず実施しましょう。
地域の避難場所や避難経路の確認
各都道府県の防災ホームページや国土地理院の「指定緊急避難場所データ」で、自宅および勤務先の避難場所や避難経路を確認しておきましょう。
なお、災害によって自宅が安全でなくなったり避難勧告・避難指示が出た場合は、原則として次のような手順で避難します。
@tokyo_bousai
1. ハザードマップなどを参考に、災害ごとに設定されている「避難場所(指定緊急避難場所)」へ移動して安全を確保します。避難場所は災害の種類により異なるため、どこへ逃げればよいのかの事前確認が必須です。(津波なら高い場所や避難タワー、火災なら広い場所)
2. 災害が落ち着いたら帰宅します。自宅が損壊していたり、ライフラインが停止していたりして生活ができない場合は、地域の「避難所(指定避難所)」へ移動して生活します。「避難場所」と「避難所」は別々の場合もあれば、同じ場合もありますので、確認が必要です。
(注意1)「避難場所」と「避難所」は役割が異なります。命を守るために逃げ込むのが「避難場所」で、生活をするための場所が「避難所」です。「避難所」は必ずしも安全な場所にあるとは限らないため、災害直後は「避難場所」へ移動するようにしてください。
(注意2)自治体によっては、「避難場所」へ移動する前に独自の「一時集合場所」などへ移動するようなルールを設けている場合もあります。地域の防災対策がどのように計画されているか、確認してみましょう。
(注意3)浸水害などで道路が冠水している場合、無理に避難場所へ移動することはかえって危険を招く場合があります。この場合は自宅の2階以上へ移動する垂直避難などを行うようにしてください。
家族の安否確認・合流方法を共有
NTTの災害用伝言ダイヤル「171」や各携帯電話会社の災害用伝言板やSNSに安否メッセージを残したり、自宅の玄関に張り紙を残すなど、家族で安否確認を取り合う方法を共有しておきましょう。
また、一時集合場所や避難所には多くの人が集まるので、勤務先や学校など別々の場所から避難する時のため「○○の前で待ち合わせ」と具体的な合流場所まで決めておきたいです。家族やペットの写真、連絡先などのメモを収めたポケットアルバムなどを普段から持ち歩くのも有効です。
家具の転倒・落下防止
@tokyo_bousai
建物の中で災害に遭った時に特に多いのが、家具の転倒や落下によるケガ。転倒防止グッズ(最も強度が強いのは、壁にネジ止めするL型金具。ネジ止めが難しい場合は、ポール式やストッパー式などを併用)で家具をしっかり固定し、引き出し・開き戸にもストッパーを設置しておきましょう。
また、ガラスが割れて床に破片が散乱すると危険なので、窓やサッシにガラス飛散防止フィルムを貼っておくのもオススメです。寝室の枕元にLEDライト・軍手・靴かスリッパを置いておくと、夜間の停電時、ガラスなどが割れても安全に移動することができますよ。
食料・飲料水の備蓄
災害発生から支援物資の配給開始やライフラインの復旧まで最低でも3日間、首都直下地震や南海トラフ地震など甚大な被害が想定される地域の場合は1週間程度かかるとされています。
その間は自力で生活できるよう、飲料水(大人1人につき1日2〜3L)や非常食(最初の1日はそのまま食べられる栄養補助食品。数日間は火を使わない缶詰など、その後はカセットコンロなどを準備してお湯が使えるようにすると、インスタント食品やフリーズドライの非常食が食べられるため大変役立ちます)3日~7日分備蓄しておきましょう。
水・食料とあわせて重要なものが非常用トイレ。食べ物を用意した期間と同量の非常用トイレも必ず備蓄しましょう(袋と凝固剤がセットになっているタイプを1日5回×人数分)。
また、せっかく備蓄したのに消費期限切れだった…という失敗を防ぐ方法として、普段から食料や飲料水を多めに買い置きして定期的に消費し、なくなったら新たに補充する「ローリングストック法」がオススメです。
非常用持ち出しバッグの準備
自宅から避難場所へ移動するまでの安全を確保するための道具や、避難した際に当面必要となる最小限の生活用品を持ち歩ける、非常用持ち出しバッグも準備しておきましょう。中に入れておきたい主な防災グッズをリストアップしますのでご参考ください。
- 体の一部(予備のメガネ、補聴器、杖、持病の薬など)
- 雨具、タオル、着替え(雨具は防寒具の代わりにもなる)
- 安全確保の道具(LEDヘッドライト、軍手、ヘルメット、ホイッスル)
- 情報収集の道具(携帯ラジオ、ハザードマップ、メモ帳、携帯充電器、乾電池)
- 救急セット(傷パッド、三角巾、包帯、十徳ナイフ)
- 飲食関係(非常用トイレ、飲料水、そのまま食べられる非常食)
- 生活用品(ポリ袋、ガムテープ、ウエットティッシュ、マスク)
- 貴重品(免許や保険証のコピー、現金、通帳、印鑑)
なお、バッグが重すぎて避難が遅れることになるのは本末転倒ですので、必ず背負ってみて、走って移動できるかどうかを確認してください。
もし災害が起きたら…知っておきたい緊急対策
災害が起きたら、ライフラインが復旧するまで限られた物資で生活する必要に迫られます。
また大規模な災害が発生すると、医療機関ではトリアージと呼ばれる初期分別が行われ、骨折やヤケド「程度」のケガでは診療を受けられない恐れもあるため、最低限のケガの応急処置は自分で行えるようにしたいところ。
そんないざという時の応急手当の方法も覚えておきましょう。
止血の応急処置
出血をすぐに止める方法として覚えておきたいのが「直接圧迫法」。ガーゼや未使用の清潔な布で出血部位を覆い、傷口を心臓より高い位置に上げてから、布の上から直接強く圧迫します(布が血に染まったら、その上から新しい布をかぶせる)。その際は感染防止のため血液に直接触れないよう、圧迫する人の手もゴム手袋やビニール袋で覆いましょう。
※詳細・イメージは『東京防災』P.178〜179参照
骨折の応急処置
折れた骨を支えるそえ木の代わりになるもの(厚みのある雑誌や折り畳み傘など)を用意し、折れた骨の両側の関節とそえ木を布などで結んで固定。そえ木で固定した手を首から吊るす際は、三角巾や大きめのレジ袋・ポリ袋が使えます。なお骨折部位が皮膚の外に出た開放骨折の場合は止血だけ行い、安静な状態を保って医師に処置を引き継ぎましょう。
※詳細・イメージは『東京防災』P.180参照
ヤケドの応急処置
ヤケドの深さや年齢にもよりますが、体表面積の10%未満(片手の手のひらサイズが1%目安)のヤケドであれば、きれいな水で15分以上冷やすことで応急処置できます。衣類を着ている場合は無理に脱がさずそのまま冷やし、体が冷えすぎないよう患部以外は保温しましょう。
※詳細・イメージは『東京防災』P.182参照
消火器の使い方
火災の拡大を防ぐために重要となるのが、消火器による初期消火。大地震の際には初期消火が正しく行われるかどうかで、被害の規模も大きく変わってきます。
火元に対して逃げ口が背になるよう立ち位置を決めてから、まずは消火器の上部に付いている安全ピンを抜きます。そしてノズルをしっかりと持って火元に向け、レバーを握って消化剤を放射しましょう。
ただし初期消火ができるのは、炎が天井に達するまで。天井まで燃え始める規模になった場合や、それ以前にも危険を感じた場合は避難を優先してください。
身近な生活用品で食器や簡易トイレを作る
食器が使えなくなったり水道水が止まった時など、さまざまな「困った」が身近な生活用品によって解決できます。
・ペットボトル…2Lサイズの固くて大きいペットボトルは、飲み口を切り取ってからさらに縦に切り分ければ、お皿にできます。
・新聞紙…新聞紙を丸めてビニール袋や上着の中に詰め込むと、空気の層が断熱効果を発揮するため保温することができます。新聞紙を肌や服にピッタリ密着させると空気の層ができず断熱効果が得られないため、丸めて空気層を維持するようにしましょう。
・ポリ袋…ポリタンクやペットボトルがない場合、給水所から水を運ぶ容器に使えます。リュックサックにポリ袋を入れれば、背負える水タンクとして使えるため、段差のある場所を越えて給水を受ける場合は役立ちます。また、バケツや段ボールの内側にポリ袋を二重にかぶせ、吸水力のある新聞紙を丸めて入れたら簡易トイレにもなります。
※詳細・イメージは『東京防災』P.192・199・201・208参照
家族で防災ロールプレイングのススメ
ここまでさまざまな対策をご紹介しましたが、知識だけにとどめず、いざという時にちゃんと実践できることが何よりも大切。そのためにオススメしたいのが防災ロールプレイングです。
地震直後にテーブルの下に隠れて身を守るところから、近隣の避難場所への移動・合流まで、災害が起きた時の一連の行動を家族みんなでひと通り練習しておきましょう。特に地域の防災訓練などには積極的に参加をしてみてください。普段から防災アクションに慣れておけば、いざという時の判断や行動が早くなるし、災害への危機意識を保つことにもなります。
防災知識や事前の備えを万全に、そして日ごろから危機管理を怠らず、大切な人たちを災害から守れるようになりましょう。
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<参考資料>
『東京防災』https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1002147/1007120.html
※ 自然災害の多い国 日本(国土技術研究センター)
http://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary09
※本記事は2018年3月時点の内容です。最新情報は各種WEBサイトをご確認ください。
監修:高荷智也(備え・防災アドバイザー)
「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「死なないための防災対策」のポイントを解説するフリーの専門家。地震や噴火などの自然災害だけでなく、感染症や原発事故などの広域災害まで、個人と家庭が行うべき事前対策と事後行動を詳しく紹介。分かりやすく実践的なアドバイスに定評があり、テレビ・新聞・メディアなどへの出演多数。
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