
『リチャード・ジュエル』 | テロ容疑の汚名を晴らすため、名もなき男と弁護士が立ち上がる
ライフスタイル
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外見や限られた情報だけで他人を判断していないか?
近年はインターネットやSNSがインフラとして日常生活に根づき、必要とする情報、あるいは必要性を感じていなかったけど役立つ情報を簡単に手に入れられるようになりました。でも、そうした便利な環境に慣れてしまったあまり、手軽に入手した断片的な情報だけで人物や出来事をジャッジしていませんか?
芸能人のスキャンダルや公的機関の不祥事があるたびに、ネットやSNSで巻き起こる猛烈なバッシングを見ていると、「果たしてこの人たちは、当事者のことをどこまで知って叩いているんだろう?」と疑問に思わずにいられません。
そんな現代社会のあり方や、さらには自分自身の物事への判断基準を見つめ直すきっかけになる映画を今回はご紹介します。1月17日(金)から劇場公開される、実話を基にしたクリント・イーストウッド監督最新作『リチャード・ジュエル』です。
芸能人のスキャンダルや公的機関の不祥事があるたびに、ネットやSNSで巻き起こる猛烈なバッシングを見ていると、「果たしてこの人たちは、当事者のことをどこまで知って叩いているんだろう?」と疑問に思わずにいられません。
そんな現代社会のあり方や、さらには自分自身の物事への判断基準を見つめ直すきっかけになる映画を今回はご紹介します。1月17日(金)から劇場公開される、実話を基にしたクリント・イーストウッド監督最新作『リチャード・ジュエル』です。
決して他人事ではない!英雄から爆破事件の容疑者に…そして熾烈なバッシング
舞台はオリンピック開催目前の1996年アトランタ。警察などの法執行機関に属することに憧れる警備員リチャード・ジュエルは、市民が大勢集うイベントの真っ最中に、会場に仕掛けられた爆弾をいち早く発見。率先して市民を避難誘導し、多くの命を救ったヒーローとしてメディアに取り上げられます。
ところがFBIが「ジュエルの過去の経歴が爆弾犯の特徴と一致する」とプロファイリングして疑惑の目を向け、しかもその捜査状況がFBIから新聞記者にリークされ、実名と写真入りでスクープ報道されたことで状況は一変。ジュエルはFBIの厳しい追及にさらされるだけでなく、世間から容赦ないバッシングを浴びせられることに。
ところがFBIが「ジュエルの過去の経歴が爆弾犯の特徴と一致する」とプロファイリングして疑惑の目を向け、しかもその捜査状況がFBIから新聞記者にリークされ、実名と写真入りでスクープ報道されたことで状況は一変。ジュエルはFBIの厳しい追及にさらされるだけでなく、世間から容赦ないバッシングを浴びせられることに。
ⓒ 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
人を信じて疑わない善良な市民であるジュエルが、早く事件を解決しようと焦るFBIに厳しく追及される様は、その理不尽さと相まって胸が痛くなります。
そしてもう一つ印象的なのが、ジュエルのプライバシーだけでなく名誉まで踏みにじるマスコミの過熱報道。しかも報道の根拠は「ジュエルがFBIの捜査対象になっている」という事実だけ。事件に結びつく証拠は何一つ挙がっていないのに犯人と決めつけてジュエルを追うマスコミの姿に、“姿なき誹謗中傷”が蔓延する現代社会の病を感じずにいられません。
さらにそうした憶測やジュエルの過去を引き合いにした報道に煽られるように、世論は彼に容疑者のレッテルを貼って、まるで裁判官のように断罪しようとします。本当のジュエルは善良な心と正義を信じる男なのに、断片的な(しかも誤った)情報だけで彼のことを「爆弾テロを起こしそうな人間だ」と決めつけるのです。しかもジュエルが至って平凡な人間として描かれているので、見ている私たちも「いつ自分がジュエルのようになってもおかしくない」とゾッとする…。
不確かで間違った情報をきっかけに、人はいつどこで被害者に(そして加害者に)なってもおかしくない──。そんな現代社会への警鐘を込めたイーストウッド監督の痛烈なメッセージが、事実として報道されたニュースの“真実”を見極める大切さと共に、胸に刺さることでしょう。
そしてもう一つ印象的なのが、ジュエルのプライバシーだけでなく名誉まで踏みにじるマスコミの過熱報道。しかも報道の根拠は「ジュエルがFBIの捜査対象になっている」という事実だけ。事件に結びつく証拠は何一つ挙がっていないのに犯人と決めつけてジュエルを追うマスコミの姿に、“姿なき誹謗中傷”が蔓延する現代社会の病を感じずにいられません。
さらにそうした憶測やジュエルの過去を引き合いにした報道に煽られるように、世論は彼に容疑者のレッテルを貼って、まるで裁判官のように断罪しようとします。本当のジュエルは善良な心と正義を信じる男なのに、断片的な(しかも誤った)情報だけで彼のことを「爆弾テロを起こしそうな人間だ」と決めつけるのです。しかもジュエルが至って平凡な人間として描かれているので、見ている私たちも「いつ自分がジュエルのようになってもおかしくない」とゾッとする…。
不確かで間違った情報をきっかけに、人はいつどこで被害者に(そして加害者に)なってもおかしくない──。そんな現代社会への警鐘を込めたイーストウッド監督の痛烈なメッセージが、事実として報道されたニュースの“真実”を見極める大切さと共に、胸に刺さることでしょう。
撮影中のクリント・イーストウッド監督(写真右)
ⓒ 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
孤立無援のジュエルに手を差し伸べる弁護士が体現する“希望と良心”
こうした巨大な圧力に押しつぶされそうなジュエルに唯一手を差し伸べるのが、かつて職場で交流を持ったことのある弁護士ワトソン。断片的な情報しか知らない大衆と違って、ジュエルの性格も人柄もよく知るワトソンは彼の無実を信じて疑わず、捜査で不利を被らないようジュエルをサポートしながら、汚名を晴らすため国家権力に立ち向かいます。
「ジュエルの名誉を挽回するため、この映画を作った」というイーストウッド監督にとって、ワトソンは自らの心情を投影したキャラクターと言えるでしょう。そしてそうしたイーストウッドの情熱が、誰もがジュエルに肩入れせずにいられなくなる、<b class="bold">感情移入を誘われるヒューマン・サスペンスへと昇華しているのです。過酷な戦いを通じて育まれていくジュエルとワトソンの絆も、胸を熱くしてくれることでしょう。
20年以上前の出来事なのに、今私たちの周りで起きていることと驚くほど似ている──。そんな実話映画に託されたイーストウッド監督のメッセージを、自戒の意味も込めて“自分ごと”として正面から受け止めてみてください。
『リチャード・ジュエル』(2019年) /アメリカ/ 上映時間:131分
1月17日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
ⓒ 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
「ジュエルの名誉を挽回するため、この映画を作った」というイーストウッド監督にとって、ワトソンは自らの心情を投影したキャラクターと言えるでしょう。そしてそうしたイーストウッドの情熱が、誰もがジュエルに肩入れせずにいられなくなる、<b class="bold">感情移入を誘われるヒューマン・サスペンスへと昇華しているのです。過酷な戦いを通じて育まれていくジュエルとワトソンの絆も、胸を熱くしてくれることでしょう。
20年以上前の出来事なのに、今私たちの周りで起きていることと驚くほど似ている──。そんな実話映画に託されたイーストウッド監督のメッセージを、自戒の意味も込めて“自分ごと”として正面から受け止めてみてください。
『リチャード・ジュエル』(2019年) /アメリカ/ 上映時間:131分
1月17日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
ⓒ 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC