家事シェアも家族関係も部屋の“モヨウ替え”でうまくいく?『家事でモメない部屋づくり』とはー三木智有さんインタビュー

家事シェアも家族関係も部屋の“モヨウ替え”でうまくいく?『家事でモメない部屋づくり』とはー三木智有さんインタビュー

ライフスタイル

目次[非表示]

  1. “モヨウ替え”が家事シェア推進につながる?
  2. 夫婦のコミュニケーションにも役立つ「モヨウ替えのプランニング」
  3. 子育て世帯のお悩みに、コロナ禍の「新しい生活」に効くモヨウ替え
長期に渡る外出自粛生活を通じて、これまでとはライフスタイルが変化した方も多いのではないでしょうか。その中には、「家族で一緒に過ごす時間が増えた」というプラスの変化もあれば、「子どもが家で遊ぶ時間が増え、部屋が散らかるようになった」「在宅勤務の合間や終了後に家事を分担してるけど、スムーズにこなせない」などマイナスの側面もあることでしょう。

これからも続く「新しい生活」を快適かつ円滑に過ごしていくには、それにマッチした生活環境を整備する必要があります。では、「新しい生活」に即した生活環境とは、何に重点を置き、どのように構築すればいいのか? そのヒントを、家事シェア研究家であり子育て家庭のモヨウ替えコンサルタントでもある三木智有さんにインタビュー。7月発売の新刊『家事でモメない部屋づくり』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)に込めたノウハウやメッセージを語っていただきました。

“モヨウ替え”が家事シェア推進につながる?

──著書『家事でモメない部屋づくり』では、そのタイトル通り、家事シェアの推進につながるモヨウ替えを提唱されていますが、今回なぜそのようなテーマを選んだのでしょうか?

私が主宰しているNPO法人tadaima!では「10年後、20年後も『ただいま!』と言って帰れる家庭にしよう」というビジョンを掲げています。そのために重要となるのが「家族との関係性」と「家庭内での心地よい環境」です。とはいえ、「そうした“関係と環境”を実際にどうやって築けばいいか分からない」という方も多いはず。

そこで、モヨウ替えをきっかけに「家庭内での心地よい環境」を整えていくことで、「家族との関係性」のあり方も見つけていくことができるよう、モヨウ替えをテーマにした本を制作しました。

──そもそも家事シェアを推進させるために必要な観点とは何でしょうか?

家事シェアとは、一人の担い手が他の人に手伝いを頼むのではなく、家族みんなが家事をシェア=共有すること。つまり、家事や育児は“家族ごと”として考えるべきものであり、そうした意識を家族に根づかせることが重要です。

そうした意識を根付かせるには家族間のコミュニケーションが不可欠ですが、モヨウ替えを通じ部屋のコンセプトを話し合うことで、家族間のコミュニケーションを取ることができるのではないかと思います。

夫婦のコミュニケーションにも役立つ「モヨウ替えのプランニング」

──これまで三木さんはさまざまな家庭の「モヨウ替え」の相談を受けていますが、皆さんは特にどんなことで困っている傾向にあるのですか?

「家の中がゴチャゴチャして困っている」「もうすぐ就学する子どもの部屋をどうすればいいか」など部屋の状態に対する相談から、「ワンオペ状態の家事をどうすれば家族とシェアしていけるか」といったライフスタイルの改善を含めた相談までさまざまです。あと、実際にご自宅に伺ってよく目にするのが、普段使われていない洋室が“物置部屋”になっているケース。そうした部屋を子ども部屋にしたいけど「どこから手をつければいいか分からない」と悩んでいる方が多いですね。

──モヨウ替えの相談は男女どちらから寄せられることが多いのですか?

基本的には女性が中心ですが、最近は部屋の改善を“自分ごと”として考えている男性から相談を受けるケースも増えていますね。

──一般的なインテリア本では家具の配置や選び方など直接的なノウハウ寄りなのに対して、著書ではまず「どんな暮らしを実現したいか」というコンセプトを考え、続いて部屋の中を役割ごとに区切っていく「ゾーニング」を行い、それから家具配置を考える3ステップのプランニングを提唱していますね。このように段階を踏んでいくことには、どのような意味があるのでしょうか?

モヨウ替えにおける「家族の最適解」を探すには、まず夫婦で対話する必要があります。その時にいきなり家具配置など具体的なところの話から進めると、「どういう暮らしをしていきたいか」というモヨウ替えの原点を見落とし、結局どんな部屋にしたいのか分からなくなりがち。そこでまずはプランニングを行うことで家族の課題を可視化し、何のためにモヨウ替えをするのかという「ブレない軸」を全員で共有することが大切なのです。

『家事でモメない部屋づくり』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

──なるほど。あまりインテリアに詳しくないと家具の配置やセレクトに対してアイデアが湧きづらいですが、「どんな暮らしを実現したいか」というコンセプトであればいろいろ意見を出しやすそうですね。

そうですね。モヨウ替えを終えたお客様から「ウチのパパがこんなにモヨウ替えに真剣になるとは思わなかった」という感想を聞くことがよくあるのですが、普段あまり意見を出さないからと言ってインテリアに興味がないわけではなく、実はいろいろ考えをため込んでいることも珍しくありません。プランニングを通じて暮らしの課題を可視化していくと、自分たちにとっての理想の暮らしと必要な部屋について考えやすく、意見もどんどん出やすくなるのです。

──確かに、インテリアに興味がなさそうな人でも「こんな部屋だったら暮らしやすいのに」という思いは抱えているはずですからね。

とはいえ、課題が見つかったからといってすべて対応できるわけではなく、時には優先順位をつける必要もあります。その際にプランニングの過程を踏んでいれば、「パパが欲しい書斎を作る部屋の余裕はないけど、小さな空きスペースに設けることならできそう」というふうに、お互いの気持ちをないがしろにせず納得できるすり合わせを行えるのです。このようなすり合わせを行っていくと、夫婦の価値観もすり合わせることができますよ。

──そうなんですね。ということは、夫婦会議を普段なかなか行わない家庭にとって、モヨウ替えのプランニングは夫婦の足並みを揃える格好の機会になりそうですね。

はい。理想のモヨウ替えについて一緒に話し合うプランニングは、夫婦のコミュニケーションツールとして普遍的なものだと思います。

──そうした話し合いを家族間で行う際に注意しておきたいポイントはありますか?

例えばごみの捨て方を話し合うとして、提案されたルールが面倒くさいとつい「やりたくない」と切り捨てがちですが、それを言い始めると話し合いがどこにも進まなくなります。なぜ面倒くさいのか、どういう捨て方なら継続できるのか、と建設的に話し合うことをオススメします。

──ビジネスの場なら着地点が見つかるまで話し合いを続けるけど、相手が家族だとついそうやって甘えてしまいがちですよね。

もう1つ重要なポイントは、話し合いの場で相手を論破しないこと。たとえ理論でねじ伏せてルールを決めても、「それはあなたが決めたことだから」と納得を得られず、結局はルールが機能しなくなります。0か100か、正しいか間違ってるかではなく、お互いの主張が程よく混ざり合ったグラデーションのような「家族にとってのちょうどいいルール」を模索してみてください。
22 件