“いつもに近い暮らし”で災害を乗り切る!コロナ禍の防災アクションとして注目される「在宅避難」の方法と備え

“いつもに近い暮らし”で災害を乗り切る!コロナ禍の防災アクションとして注目される「在宅避難」の方法と備え

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目次[非表示]

  1. 在宅避難とは?そのメリットは?
  2. 災害時に「在宅避難」か「避難所」を判断する基準は?
  3. 在宅避難に必要な備えは?
    1. ①食糧・水
    2. ②エネルギー(ライフラインの代替手段)
    3. ③トイレ(簡易トイレ/非常用トイレ)
  4. “在宅避難に適した住まい”の作り方
    1. ①安全な部屋をつくる
    2. ②備蓄品収納用のパントリーを設置する
    3. ③太陽光発電&家庭用蓄電池を導入する
  5. 在宅避難の進め方は“非常時でも日常と変わりなく”が原則
2011年に東日本大震災が発生してから今年で10年。その間にも毎年のように全国各地で地震や豪雨などによる自然災害が起きていますが、発生頻度が低くなるとつい警戒心が緩みがち。しかし、災害は忘れた頃に突然襲ってくるし、人間の手で止められるものではない──。そこでパパに求められるのは、十分な備えの下にいざという時でも冷静に対処して家族を導き、“災害後”を無事に乗り切ることです

そんな今、密閉・密集・密接の3密回避を徹底すべきコロナ禍の避難対策としてぜひ知っておきたいのが、地域の避難所ではなく自宅で避難生活を送る「在宅避難」という選択肢。今回は、防災の専門家でもある旭化成ホームズ株式会社 くらしノベーション研究所顧問・松本吉彦さんへの取材を元に、在宅避難で取るべき行動や日ごろからの備えなどをご紹介します。

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在宅避難とは?そのメリットは?

在宅避難とは、災害が発生し津波や土砂災害のリスクがあるときは一度避難場所に逃げ、安全が確認されてから自宅に戻って避難生活を送ること。そのメリットとして、密になりやすい避難所での新型コロナウイルス感染リスクの回避を思い浮かべる方もいるでしょうが、実はテント等で区画するなど避難所での感染対策は進んでいます。しかしその反面、収容可能な人数が減ってしまい、大都市での災害時に膨大化する避難住民が入りきれないことが想定されます。そうした側面から、在宅避難が災害時の選択肢として注目されるようになっているのです。

また、避難所というプライバシーのない空間で見ず知らずの人と共同生活を送るよりも、住み慣れた我が家での“いつもに近い暮らし”の方が、大人はもちろん小さな子どもでも安心できてストレスも少なく、心身の健康を保ちやすいというメリットがあります。

災害時に「在宅避難」か「避難所」を判断する基準は?

災害発生後、避難所へ移らず自宅で避難生活を送るには「家にいても安全であること」が最低限の条件となります。

避難などの防災アクションは最初に対策から考えがちですが、まずは「災害(=難)」の想定から始め、難を避けるための「対策(=避)」を考えるのが基本。在宅避難の場合も、災害のリスクを把握しておくことがスタートです。普段から区市町村のホームページなどで公表されているハザードマップを参照し、居住地域の災害リスクを想定した上で、そのリスクを避けられる場所と事前の対策を計画しておきましょう。例えば浸水や土砂崩れなどのリスクがあれば、大雨警報発令時などには事前に家から避難し、自宅の安全を確認できてから在宅避難に移るのがベストです。

自宅の安全確認として重要なチェックポイントは、土地・家屋・部屋の安全です。特に土地は、地盤が崩れたり傾いてしまうと、どんな家でも危険なのですぐに避難所へ移動してください。家屋の安全確認として注意すべきは、主に傾きやひび割れです。床にゴルフボールを置いて自然に転がってしまう場合は、傾きを疑った方が良いでしょう。柱の傾きについては、天井高2.4mに対して天井が正常な位置より8~12cm以上ずれている場合は危険とみなされます。

これらの条件をクリアしていないのに在宅避難を続けると、逆に安全や健康を脅かすことになりかねないので、避難所への移動や車中泊など別の選択肢に移ってください。

在宅避難に必要な備えは?

もう1つ在宅避難に欠かせない条件は、家で生活できるための備えが十分であること。基本的には、食糧・水、エネルギー、トイレが最低限必要な備えとなります。

①食糧・水

災害後はライフラインが長期間使えなくなったり、人口の多い都市だと支援物資が行き渡りにくいこともあるので、食糧や水は10日分程度備えておきましょう。例えば水の場合、1人あたりの水の必要量が1日3Lなので、4人家族なら3L×4人×10日=120L(2Lボトルで60本)が目安。また、トイレの水道が使えない時のため、汚物を流す水を風呂に貯め置きしておくとよいでしょう。
なお、在宅避難に必要な備蓄食糧は、災害発生後のシチュエーションに応じて次の3種類を想定しておいてください。それぞれ、賞味期限が近づいた物から消費し、その分を新たに購入し補充する「ローリングストック」を実践すれば、お金と手間を掛けず日常的に備蓄しやすくなるでしょう。

■行動食
津波や土砂災害などで家から緊急避難する際に持ち出し、避難中に食べる食糧のこと。ゼリー飲料や栄養補助食品など、すぐに食べられてカロリーを補給できるものを少量(1日分)準備しましょう。

■非常食
災害直後に自宅などで食べる食糧。そのまま食べられるカンパンや、加熱剤付き食品など温められる食事を数日分準備しましょう。

■備蓄食
ライフラインの復旧を待ちながらの在宅生活で食べる、インスタントやレトルトなどの食糧。在宅避難によるストレスを防ぐには、こうした普段食べ慣れた食事はとても重要です。1~2週間分買い置きし、ローリングストックで日常的に備蓄しておきましょう。

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②エネルギー(ライフラインの代替手段)

電気やガスや水道が使えない場合に備え、乾電池・ポータブル充電器、ペットボトル水や水道水の汲み置き、カセットコンロとガスボンベなどを用意しておきましょう。

③トイレ(簡易トイレ/非常用トイレ)

個人差もありますが1日にトイレに行く回数は1人あたり5回程度。簡易トイレを購入しておく、あるいはゴミ袋・新聞紙・ダンボールなど家にあるものを利用した非常用トイレの作り方も事前に知っておくと安心です。また、汚物を処理するための凝固剤・消臭剤・密閉容器も用意しておきましょう。

“在宅避難に適した住まい”の作り方

①安全な部屋をつくる

自宅で安全に避難生活を送るには、家具や家電の転倒・落下を防ぐことが大切。家族のケガを防ぐためだけでなく、地震など災害の影響で室内がめちゃくちゃになると、在宅避難そのものに支障を来たすからです。そのためにも家具の置き方には十分注意し、転倒・落下の防止策を怠らないようにしましょう。

■家具の置き方

(画像提供:旭化成ホームズ くらしノベーション研究所)

家具が転倒してドアがふさがれると部屋から避難できなくなるので、家具はなるべくドア付近に置かないこと。また、ベッドなど人がいる場所に倒れないよう、家具の向きや置き場所を考慮しましょう。なお、家を新築・リフォームするのであれば、ドアを引き戸にしておくと万が一家具が転倒しても開閉に支障を来たさないのでオススメです。

■家具や家電の固定

(画像提供:旭化成ホームズ くらしノベーション研究所)

大きくて重い家具や家電は、一度グラグラ揺れると勢いがついて転倒しやすいので、地震が起きても動かないようしっかり固定しておくことが重要です。突っ張り棒タイプの固定道具は縦揺れに弱く、天井が変形すると外れることがあるので、金具によるネジ止めが最も効果的(家具と留め具がしっかり密着するL型金具がオススメ)。ここはDIYが得意なパパの腕の見せどころですね。

なお、金具で固定する際は、壁の下地材など“ネジが利く”場所で固定するのが原則。また可能であれば、転倒方向に対して“せん断方向(横向き)”にネジを留めると、より強度が高まるので安心です。下地材の位置の探し方や詳しい固定方法は、東京消防庁のホームページを参考にしてください。

※東京消防庁「家庭用家具の転倒・落下・移動防止対策」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-bousaika/kaguten/handbook/06.pdf

他にも、転倒のおそれがなくても冷蔵庫やピアノのように重い物は移動すると凶器になるので、耐震マット(ジェル)やストッパーで固定しましょう。また、テレビや電子レンジのように高い場所に置いてある家電は落下や飛び出しの危険が加わるので、耐震マットやストラップでの固定が必要です。

②備蓄品収納用のパントリーを設置する

(画像提供:旭化成ホームズ くらしノベーション研究所)

保存食や水を日ごろから備蓄しておくには、十分な収納スペースが必要となります。キッチンや押し入れの空きスペースだと限界があるので、新築やリフォームの際にパントリーを設けるのもオススメ。扉の内側にも棚を設ける仕様であれば、幅90cm・奥行45~60cm程度のスペースでも十分な量を収納できます。また、床とパントリーの段差をなくし、一番下の空間を高めに確保した造りだと、段ボールごと備蓄品を押し込めるので便利です。

③太陽光発電&家庭用蓄電池を導入する

写真左:蓄電池付き住宅(画像提供:旭化成ホームズ くらしノベーション研究所)
写真右:家庭用蓄電池(画像提供:リフェコ株式会社)

ライフラインが停止した時の代替手段として、水道はペットボトル水や汲み置き、ガスはカセットコンロ&ガスボンベによる備蓄が容易ですが、電気はそうした備えが困難。そこでオススメしたいのが、蓄電池付き太陽光発電システムを自宅に導入すること。昼間に太陽光で発電したエネルギーを蓄電池に蓄えておき、昼はもちろん夜でも電気を使うことができます。

ちなみに、一般的な家庭用蓄電池は容量が5.6kwhで、最大1500Wまで供給できます。(容量5.6kwhの場合、560Wの家電製品を最大10時間使用することが可能)災害時の具体的な活用法として、LDKの1部屋だけ電気を使えるよう回路を切り替え、テレビや冷蔵庫など在宅避難に必要な物にだけエネルギーを供給することが可能です。

在宅避難の進め方は“非常時でも日常と変わりなく”が原則

“いつもに近い暮らし”で災害を乗り切ることが在宅避難の目的なので、在宅避難だからといって何か特別な進め方は必要なく、むしろ逆に、非常時でもいかに日常と変わりなく過ごせるか意識することが重要。インスタントのように普段食べ慣れた備蓄食をストックしておくのも、そのためです。備蓄食の消費だけでなく、冷蔵品が傷む前に使いきれるよう料理の献立も考え、普段に近い食事をとるのも有効でしょう。

一方、非常時ならではの行動として、生活に必要な情報の収集や物資の入手・補給は常に必要となります。正確な被害情報や生活支援情報を手に入れられるよう、地域のラジオ局や自治体のSNSなど、どんな情報収集手段があるか日ごろからチェックしておきましょう。あるいはラジオやSNSでカバーしきれない地域単位の情報は、避難所の掲示板を確認するといいでしょう。

“いつもに近い暮らし”を送ることができる在宅避難は、大変な災害後を家族みんなで乗り切るにはとても有効な選択肢。そのために必要な準備は、家族の安全を守るパパの役割です。備蓄やエネルギーなどの備えが十分か、また自宅が“在宅避難に適した住まいかどうか”を一度見直し、必要な備えを計画的に進めておきましょう。

<専門家プロフィール>
松本 吉彦

旭化成ホームズ株式会社 くらしノベーション研究所顧問、二世帯住宅研究所長
一級建築士・インテリアプランナー・インテリアコーディネーター
家族とくらし、防犯対策の研究実績をベースに、木造の構造設計の経験を活かしてくらしの中での防災対策を研究中。防災には建物というハード面に加え、居住者の行動というソフト面が必要と考え、セミナー活動を行っている。東京都の応急危険度判定ボランティア登録者。

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