焼酎聖地宮崎の蔵元さんを巡る旅 後編(県南・県西)

焼酎聖地宮崎の蔵元さんを巡る旅 後編(県南・県西)

趣味・遊び

目次[非表示]

  1. 【県南編】薩摩藩との食文化が交じり合う多様な地域性
  2. 小玉酒造
    1. 飫肥藩の歴史が息づく小京都で醸す焼酎
    2. 蔵人は東京から日南市へ
    3. 2つの蔵が融合した背景
    4. 地元の素材と手仕事にこだわり
  3. 古澤醸造
    1. 明治創業からの土蔵は「登録有形文化財」
    2. 甕に足跡を聞かせる焼酎造り
    3. しみじみと心に通う日南八重桜
  4. 【県西編】霧島連山の豊富な水系と良質なサツマイモの産地であることが特長
  5. 柳田酒造
    1. 元エンジニアの経験を活かした新概念の焼酎造り
    2. 5代目が切り開く焼酎界のイノベーション
    3. メーカーズディナーで表現する焼酎の新境地
    4. 「自分が飲んだことがない焼酎を作りたい」
  6. 須木酒造
    1. 焼酎界の至宝が次々と提案する焼酎の新世界
    2. 蔵つき酵母が目に見える仕組み
    3. 焼酎作りは麹作り
    4. 内嶋杜氏が見据える想いとは
  7. 宮崎焼酎聖地を巡る旅、まとめとして

【県西編】霧島連山の豊富な水系と良質なサツマイモの産地であることが特長

県西は大きく分けると、「都城」と「小林・えびの」の2エリア。

都城市は県の南西部に位置する南九州の拠点で、年間平均気温が 17度と暖かく過ごしやすい街です。焼酎業界のトッププレイヤー「黒霧島」で有名な霧島酒造は、都城市にて大きな存在感を放っています。また農業産出荷額が全国2 位で、そのうち牛、豚、鳥をあわせた畜産品の出荷額は全国1位と農畜産業が基幹となっている拠点でもあります。

小林・えびのエリアは古くからの米どころ。隣接県の鹿児島の芋焼酎、熊本の米焼酎からそれぞれ影響を受けた食文化が育まれてきた地域です

柳田酒造

元エンジニアの経験を活かした新概念の焼酎造り

都城市の老舗の蔵元。霧島水系地域自慢の美味しいお水が敷地内の井戸から供されている恵まれた環境です。
創業は明治35年(1902年)。家族の次男が家業を継ぐ歴史に応じて、現在の杜氏である柳田家の次男、柳田正さんが5代目として就任。元エンジニアという経験を活かし、仮説思考でシステマチックに焼酎業界の常識を緩やかに変革しています

将来は6代目を約束されるお子さん(長女)が蔵を継ぐことも想定した焼酎作りも、中長期的なテーマとして意識しながら日々まい進しています。
杜氏・柳田正さんは段階的にアクセルを踏み込み、新世代の足跡を残しています。

先代の判断で昭和53年(1978年)に麦焼酎専業蔵となりましたが、平成25年には創業時からの歴史ある1本「千本桜」を35年ぶりに復活させました。その先には熟成させる芋焼酎を使った新概念の焼酎の創出も目指しています。

数ある千本桜シリーズは柳田さんの挑戦の歩みでもあります。古くから愛される地域自慢の桜並木のように、柳田さんの焼酎も愛される存在として飲んでいただけるようにと願いを込めて。

5代目が切り開く焼酎界のイノベーション

また「焼酎界のエジソン」とも称される柳田さんには、発明家の顔もあります。蒸留技術を自らの試行錯誤で開発し、常温蒸留と減圧蒸留の中間で蒸留する「中間常圧」という新手法の焼酎も誕生させています。

二条麦の香ばしさが濃厚に味わえる麦焼酎「青鹿毛」に加えてラインナップされた「赤鹿毛」がその作品。素朴で柔らかい麦焼酎を目指して、もろみの沸点が中温度(約80度)に達したときの独特の個性を発見し、新焼酎の開発につなげました。100回以上蒸留器を分解して高みを追求する、目線の高い探究心は柳田正さんならではです。
また宮崎県の在来種ミヤザキハダカを原料とした麦焼酎も、果敢な挑戦の産物である渾身の1本。
材料の麦はかつて宮崎全域で栽培されていた在来種の裸麦。昭和35年(1960年)のピークには、宮崎県内の作付面積は約2万haを超える規模でしたが、外国産麦に駆逐されてしまいました。

この幻の麦を復活させ、個性的な香りの麦焼酎を誕生させたのが「ミヤザキハダカ 駒」。宮崎の風土を活かした宮崎伝統の麦による独自の麦焼酎です。

メーカーズディナーで表現する焼酎の新境地

先日、新宿のレストラン「宮崎風土 くわんね」で焼酎メーカーズディナーが開催されました。柳田さんの焼酎7種と宮崎食材をマリアージュさせた試みです。

緻密に焼酎と食材の相性を組み合わせたコース内容は、柳田酒造さんの焼酎を飲むバリエーションの可動領域を押し広げるものでした。
柳田酒造さんが提案したのは、赤鹿毛マイヤーズレモンサワー、芋焼酎千本桜の出汁割り、宮崎地鶏とあわせる麦焼酎青鹿毛ソニック、土鍋で炊いたしいたけ飯には栃栗毛15年のお湯割りなど、本格焼酎の新たな飲み方であるカクテルの楽しみ方が幅広く堪能できるもの

青鹿毛を練りこんだパウンドケーキをほおばりながら飲む青鹿毛のコーヒーが、本格焼酎が主役のディナーを締めくくってくれました。

「自分が飲んだことがない焼酎を作りたい」

「自分が飲んだことがない焼酎を作りたい」と迷いなく言いきる柳田さん。情熱ある行動の根底には、焼酎業界の未来のためにと次世代を見通した地元愛、そして次代が持続的に焼酎を作れるようにするためのエールがあります。

500年続く焼酎の歴史の歩みを止めないための柳田さんの希望の種まきを、作り手と飲み手が手を組んで扉を開き花咲かせたいものです。
■柳田酒造 HP
http://www.yanagita.co.jp/
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