「家族がいることで“粘土道”の可能性がさらに広がった」Daddy's Talk 第12回 片桐仁さん(お笑い芸人・俳優・粘土造形家)

「家族がいることで“粘土道”の可能性がさらに広がった」Daddy's Talk 第12回 片桐仁さん(お笑い芸人・俳優・粘土造形家)

趣味・遊び

目次[非表示]

  1. “何かに粘土を盛る”という制約があるから粘土道は面白い
  2. 粘土遊びは子どもが創作を親しむ入口にピッタリ
  3. 言いたくないのにガミガミ怒ってしまうのが育児の悩み
各分野で独特の感性を発揮し目覚ましい活躍を遂げているパパたちは、どのような家庭生活を送っているのか──。そんな気になる疑問を掘り下げる「Daddy's Talk」。

今回は、お笑い芸人、俳優業の傍ら粘土造形家としても活躍している片桐仁さんにインタビュー。今年で20周年を迎えた創作活動“粘土道”の歩みと、2人のお子さんを持つパパとしての素顔を伺います。

“何かに粘土を盛る”という制約があるから粘土道は面白い

──片桐さんは1999年から粘土造形家として活動をスタートしていますが、それ以前はどのように芸術や創作に関わっていたのですか?

子どもの頃から絵を描くことが好きで、学校の写生会で金賞を受賞したこともありました。「絵の上手な仁ちゃん」というアイデンティティを維持できるよう努力していましたね。絵画教室に通ったり、写生会の前日にはベストな構図を探すためロケハンしたり…。そして画家になりたくて多摩美術大学に進学しました。当時はゴッホに憧れていましたね。

──大学在学中に相方の小林賢太郎さんと出会って「ラーメンズ」を結成しました。当時はお笑いブームだったとはいえ、美大生とお笑いという組み合わせはかなり異色ですね。

お笑いは好きでしたが、やる側に回るとは自分でも思ってもいませんでした。周りが絵の上手な人ばかりで「絵の上手な仁ちゃん」というアイデンティティが揺らいでいたところお笑いをやることになり、「お笑いのできるカッコイイ奴」という新たなアイデンティティを確立できました。

──お笑いという新たな軸ができたことで、アートへの関わりは二の次になりませんでしたか?

大学の講義や課題があったので、アートから一切離れることはありませんでしたね。とはいえ、専攻の版画で描きたいことがなくて悩んでいた時期がありました。そんな中、教員免許を取るための演習授業で彫刻を造形したところ「絶対向いてるよ」と周りにほめられたんです。確かにクラスの中で僕が一番うまかったし、作っていて楽しかったですね。

──現在の創作活動につながる原点と出会えたわけですね。粘土造形家の活動をスタートしたきっかけは?

プラモデルが好きでプロモデラーに憧れていたんだけど、“モデラー道”という職人的な世界を窮屈に感じていました。もっと自由に創作できるものはないかなと思っていたところ、雑誌の企画で粘土アートを作ったことをきっかけに、1999年から『ヤングマガジンアッパーズ』の連載が始まり“何かに粘土を盛る”という粘土造形に本格的に取り組むようになったんです。
──粘土造形という自由な表現方法において、片桐さん流のこだわりはありますか?

“何かに粘土を盛る”のは一見自由だけど、土台となる元の形があるため、不自由さがある。それに、例えばスマホに粘土を盛ると道具としては使いづらくなる。でも逆に、制約があったり不便になるからこそ面白いんです。不便を知ってこそ便利を知るという気づきもあるし、こんな目立つスマホだとお店で忘れてもすぐ「お客様のですよね」と気づいてもらえやすいですよ(笑)。

片桐さんのスマホケース『eyePhone』

──片桐さんの粘土アートは奇抜な造形が印象的ですが、そうしたインスピレーションに大きな影響を受けたものはあるのですか?

最近少なくなったけど、地元の公園にタコ型の滑り台があったんですよ。あれなんかまさに、僕の“変な造形物”の原点です。あとは岡本太郎さんの「太陽の塔」。あんなに訳の分からないものを公共予算で作るなんて、狂気としか言いようがありませんよね(笑)。今の時代だと絶対不可能でしょうね。

粘土遊びは子どもが創作を親しむ入口にピッタリ

──20年間の創作活動はあっという間だったと思いますが、現在まで続けてこられた秘訣をあえて挙げるなら何でしょうか?

粘土アートを“作ること”は好きだけど“作りたいもの”がなかなか見つからなくて、ネタ探しには常に苦労してきました。しかも誘惑に弱いから、創作そっちのけでゲームをやったり(笑)。締め切りがなかったら確実に続かなかったでしょうね。一昨年は全国各地で個展を開いていたため、ご当地アートをひと月に3つも作る必要があり、時間が足りなくて舞台の楽屋で必死に創作しましたよ。

──これまでの活動で印象に残っている体験があれば教えてください。

子どもの頃からずっと自信がなく引っ込み思案な性格だったけど、2012年に初めて個展(「ジンディー・ジョーンズ 感涙の秘宝展」)を開いてズラッと並んだ作品を見て、「面白いな」と自分の活動に自信を持つことができました。今振り返るとあの個展は僕にとって大きなターニングポイントになりましたね。

──子どもが粘土創作を楽しむメリットを挙げるとしたら何があるでしょう?

最近、粘土のワークショップを行う中で気づいたことですが、絵画は子どもによって上手下手の差がハッキリ出やすいけど、粘土だと不思議と誰でもそれなりの形の作品に仕上がるんです。たぶん筆で表現する絵画より、指で造形する粘土の方が直感的に作りやすいからでしょうね。それこそ親と一緒なら3歳からでも楽しめるから、子どもがアートに親しむ入口として粘土はピッタリだと思います。

──親子で粘土遊びを行う時に、楽しみ方や表現の幅が広がるオススメの方法はありますか?

目玉がキョロキョロと動くプラスチック型の目玉シールがあるじゃないですか。あれを貼り付けるだけで粘土が顔らしくなるんです。何を作ればいいか思いつかない場合でも、目玉シールで顔が出来上がったら、それを取っ掛かりにイマジネーションが一気に広がっていきますよ。

──片桐さんの“何かに粘土を盛る”というスタイルも、子どもにとって創作に励む格好の取っ掛かりになりそうですね。

そうですね。ベースになるデザインがあることでイメージが広がりやすいし、土台がしっかりしていると粘土作品の形も崩れにくいので、ゼロから作るよりスムーズだと思います。
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