
『クリード チャンプを継ぐ者』 | 己の魂を次世代に受け継ぐ時が来た
『ロッキー』から派生した新たな“男の教科書”
以前にも「男の生きざまを語る映画」でオススメしたように、“男の生きざま”を学ぶ映画といえば『ロッキー』シリーズを抜きに語れません。
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己の栄光と愛する人のために戦うネバーギブアップ精神と、その熱い魂が込められた名セリフの数々からパワーをもらった人も少なくないでしょう。
今回は、そんなロッキーが“戦う側”から“指導する側”に回った、シリーズのスピンオフ作品『クリード チャンプを継ぐ者』をご紹介します。ロッキーの魂を受け継ぐ者とは?
師弟であり父子のような絆が熱い!
今回の主人公は、かつてロッキーと王座を争った後に親友となった、亡きアポロ・クリードの息子アドニス。
アポロの愛人が産んだアドニスはエリートサラリーマンとして成功しますが、父の血が騒いでボクサーとして頂点を目指そうと決意。父の威光を借りずメキシコの地下ボクシングで腕を磨き、もっと強くなるためロッキーにトレーナーを依頼します。
父親の愛情を得られないまま育ち、一方で偉大な父アポロと比べられることを嫌う。そんな複雑な内面を抱えるアドニスは、アポロのことをよく知るロッキーを、最高の指導者としてだけでなく父親のように慕います。
逆に、長年リングから離れて最愛の妻エイドリアンを亡くしたロッキーも、アドニスの若い情熱に触れることで、くすぶっていた余生を熱く燃え上がらせていく。
つまりこの2人は、自分にしか生み出せないプラスの影響をお互いに与え合える、組むべくして組んだ師弟。そんな彼らが育む絆のドラマは、世界王者を目指すアドニスの奮闘と共に胸を揺さぶってくれます。
またこの作品は、過去の『ロッキー』シリーズを知る者すべてが熱くなれるオマージュが満載!
鶏肉をサンドバッグ替わりに使うトレーニング、フィラデルフィアのダウンタウンを激走するロードワーク、さらにはアポロの名言やあの「ロッキーのテーマ」まで。アドニスだけでなく作品自体も、偉大なロッキーの魂を受け継いでいるのです。
人生100年時代──年齢に応じた“できること”がある
この作品は若きファイター、アドニスの成長が物語のメインとなりますが、家men世代が目を奪われるのはやはりロッキーでしょう。
かつての自分と同じように底辺から頂点を目指す青年を正しく導くため、技術や経験だけでなく不屈の精神を叩き込み、さらに人生という強敵と戦う心構えも伝授。
ファイターとしては燃え尽きても、次世代のため自分だけにできること、いや、しなければいけないことがある。指導者として魂を再び燃え上がらせるロッキーの姿が、そう教えてくれます。
たとえバリバリの第一線を退いても、人生というリングを降りることは一生ない。むしろ、年齢に応じたスタイルで戦い続けることができるのです。
「人生100年時代」といわれる今だからこそ、戦うことをあきらめないロッキーの魂を、ぜひ胸に刻み込んでください。
『クリード チャンプを継ぐ者』(2015年) /アメリカ / 上映時間:133分
Photo by Barry Wetcher - © 2015 Warner Bros. Entertainment Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
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