『幸せなひとりぼっち』 | ご近所との関わりは人生をこんなにも豊かにする

『幸せなひとりぼっち』 | ご近所との関わりは人生をこんなにも豊かにする

趣味・遊び

ご近所付き合いは面倒だし不要──本当にそう?


近年はマンションに住む人が増え、一軒家住まいと比べてご近所付き合いが希薄になりがち。なかには、同じマンションに住んでいる家庭のこともよく知らないという方も少なくないでしょう。


「地域とのつながりを作るのは面倒」

「ご近所付き合いにメリットを特に感じない」

という声が聞こえてきそうですが、果たして本当にそうでしょうか?


そんなご近所付き合いについて見つめ直すきっかけとなる作品として、スウェーデン発のヒューマンドラマ『幸せなひとりぼっち』をご紹介します。


他人を寄せつけない偏屈オヤジを変えたのは、異国から来たご近所さん


物語の舞台はスウェーデン郊外の共同住宅地。一軒家が団地のように集まるコミュニティで自治会長を務めていた59歳のオーヴェは、違法駐車からゴミの分別までとにかく規律に厳しい頑固オヤジ。あまりに口うるさいものだからコミュニティの住民たちに毛嫌いされる始末。


オーヴェが毛嫌いされるもう一つの理由は、いつも不機嫌で偏屈な性格にもあります。どれぐらい偏屈かというと、スーパーで1束50クローナの花束が2束70クローナで特売されていると、店員に「1束35クローナで買えないのはおかしい!」と難癖をつけるぐらいひねくれているのです。


そんなある日、オーヴェは最愛の妻を亡くし、あげくに長年勤めた鉄道会社をリストラされてしまいます。そして生きる意味を失い自殺を図ろうとした矢先に、一組のイラン人一家が向かいに引っ越してきます。

この一家はコミュニティの規律に無頓着でやたら騒がしく、しかも何かにつけて頼み事で訪問してくるものだから、落ち着いて自殺もできない。渋々ながらご近所付き合いを続けるうちに、オーヴェと近隣住民たちとの関係に少しずつ変化が訪れていきます。


偏屈な中年男が心を開いていくというストーリーはさほど珍しくありませんが、この作品は母国スウェーデンでは国民の5人に1人が鑑賞する大ヒットを記録。

その理由は、日本のみならず世界各地で希薄になりつつある「ご近所付き合い」をテーマとし、その描き方にポジティブな好感を抱いた人が多かったことに他なりません。


人生に絶望して死ぬことしか考えていなかったのに、物の貸し借りや車の教習といった頼み事に応じて関わり合いを持つうちに、「自分は一人じゃない」「誰かに必要とされ、役に立っている」と生きる意味を見出していくオーヴェ。

そして“コミュニティの規律を指導する監視対象”でしかなかった近隣住民が、関わり合いを持つことによって互いに理解を深め、“コミュニティで共に生きる仲間”へと変わっていく──


そんな変化を見守っているうちに誰もが温かい気持ちに包まれ、また自らのご近所付き合いについても見つめ直そうという気持ちにさせてくれます。


変えるのは“自分”ではなく“周囲に向ける目線”


このような偏屈オヤジの変化が見どころではあるのですが、実は主人公の性格自体はほとんど変わりません。


他人に対して常にぶっきらぼうだし、間違ったことや気に入らないことには遠慮せず物申す。

そんな自分を今さら無理には変えず、周囲の物事や人々を新しい視点から見ることで、自らの世界を少しずつ広げていく──。


天涯孤独の一人暮らしだけど“近くの他人”とつながりを持つ心地よい生活は、まさにタイトル通り『幸せなひとりぼっち』です


人生100年時代を豊かなものにするために、地域との関わりは大きな力となるはず。

自分らしさを失うことなく少しずつ周囲に歩み寄っていったオーヴェをお手本に、皆さんもご近所さんとの関わり方を見つめ直してみませんか。


『幸せなひとりぼっち』(2015年) /スウェーデン/ 上映時間:116分

© 2015 Music Box Films