
『シンクロ・ダンディーズ!』 | “生きがい”を見つけて中年の危機を乗り越えろ!
いつ訪れるか分からない“大人のアイデンティティ危機”の処方箋
皆さんは「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」という言葉を聞いたことはありますか?
「中年の危機」とは主に40代に起きやすい精神的な危機のこと。家庭・仕事・社会的地位が良い意味でも悪い意味でも安定することで、ふと
「何のために生きているんだろう?」
「俺の人生はこれでいいのか?」
といった不安に思い悩んでしまうのが特徴です。
20〜30代のパパにとっては「自分にはまだ早い」と感じることかもしれませんが、目標や何か大切なものを失った時、また人生に行き詰まった時など、中年の危機と似た苦悩を味わう瞬間がいつ訪れるか分かりません。
そんな“大人のアイデンティティ危機”の処方箋となる映画を今回はご紹介します。
スウェーデンに実在する中年男性シンクロナイズドスイミング・チームに着想を得て製作され、9月20日から劇場公開されるスポ根コメディ『シンクロ・ダンディーズ!』です。
中年オヤジたちがシンクロで世界一を目指す?
男性がシンクロナイズドスイミング(※)に挑戦する物語といえば、日本だとこちらも実話に着想を得た『ウォーターボーイズ』が有名ですね。
当作はまだまだ若くて運動神経もある男子高校生が主人公でサマになっていましたが、『シンクロ・ダンディーズ!』でシンクロに挑戦するのはサエない中年オヤジ8人。本当にやるの?という違和感が半端ありません!
主人公のエリックは会社から高く評価されている有能な会計士ですが、職場と自宅を往復するだけの毎日に張り合いのなさを募らせていました。一方、妻は地方議員に当選しイキイキ輝いているものだからなおさら、自分の人生の代わり映えのなさに意気消沈するばかり。
そんなある日、日課で通っていた公営プールで、中年男性ばかりが集まるシンクロチームに誘われたエリック。初体験のシンクロに久々のワクワクを感じた彼は、無謀な挑戦を決意するのです。
シンクロに挑戦するぐらいだからそれなりにアスリートタイプのメンバーたちかと思いきや、写真を見ても分かるように体力のピークはとっくに過ぎたザ・オヤジばかり。
そんないい大人たちがゆるんだ体&海パン一丁でプールに飛び込み、まるで溺れもがいているような集団演技を披露する悪戦苦闘は、端から見るとバカバカしい以外の何ものでもありません。
でも、男というのは何歳になっても“バカバカしいこと”が大好きなもの。
普通の男性が見向きもしないシンクロに本気でチャレンジし、心から純粋に熱中するエリックたちの姿は、もはや哀愁や滑稽なんてものを通り越し“一周回って”カッコイイ!
年を重ねるとなかなか得られない胸の高ぶりやワクワクはうらやましい限りで、形こそ何であれ生きがいを持つことの大切さを実感することでしょう。
そんな彼らに、なんと世界大会出場のチャンスが訪れるのだから実にドラマチック(でも実話!)。
さらなる高みを目指して猛練習を積む中年オヤジたちの奮闘と、実際にブートキャンプで猛練習した俳優たちの上達ぶりが文字通りシンクロし、ちょっと滑稽だけど真に迫る驚きと興奮を与えてくれますよ。
生きがいに燃える姿を見せれば家族の目も変わる!
またこの物語では、共通の目標に向かって団結し突き進むシンクロチームの奮闘と並行して、中年の危機に差し掛かったオヤジの家族ドラマも掘り下げています。
何の目標も持たず淡々と毎日を生きるエリックに対して、妻は愛想を尽かし、息子も尊敬の念のかけらも示さない。
そんな彼が(たとえ周囲からバカバカしいことのように見えても)世界の檜舞台を目指し、これまでの自分を変えようとしていく──。その真っすぐな奮闘を通じて、すれ違ってしまった家族との関係がどう変わっていくか、そして絆を取り戻すことができるのか目が離せません。
中年の危機まっさかりのオヤジたちが泥臭く奮闘する、シンクロ版『フル・モンティ』というべき熱く清々しい感動をぜひ味わってください。
明日を生きるエネルギーと、ちょっとだけ自分を変える勇気を得られるはずですよ。
※国際水泳連盟は2017年7月から「シンクロナイズドスイミング」の競技名を「アーティスティックスイミング」に変更。日本でも2018年4月から変更しています
『シンクロ・ダンディーズ!』(2018年) /イギリス/ 上映時間:96分
9月20日(金)から全国順次公開
© SWM FILM COMPANY LTD 2018