日々の生活の癒やし的な存在であり、大切な家族の一員でもあるペットたち。打算とは無縁で本能のまま生きる彼らは、時に大切なことを教えてくれます。

周りの目を気にせず、ありのまま素直でいること。
過去や未来をあれこれ悩まず“今を生きる”こと。
そして、大切な人を思いやり、愛情を行動で示すこと。

そこで今回は、そうした動物たちの姿を通じて“大切な人の支え方”を学ぶことができる映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』をご紹介します。

歌手を夢見る青年ジェームズは路上ライブで日銭を稼ごうとしますが、薬物依存から抜け出せず、住む家もないどん底の暮らしを送っていました。

これではいけない！と一念発起し更生プログラムに本気で取り組むようになったある日、１匹の茶トラ猫が彼の前に現れます。
人懐っこいこの野良猫はジェームズの元から離れなくなり、根負けしたジェームズは生活費もままならない状況でありながら、野良猫を“ボブ”と名付けて飼うことに。

どこへ行くにも一緒の１人と１匹。ジェームズが出かける時はボブが肩の上にちょこんと乗り、その愛らしさに目を惹かれた通行人たちがすれ違いざまに笑顔で声をかけるようになります。また、いつものようにジェームズが街角で演奏すると、肩にちょこんと座っているボブが歩行者の関心を引き、次々と立ち止まっては演奏を聞き入ってくれるように。こんな調子でボブが思わぬ形で福を招いていき、ジェームズは人生をやり直すチャンスを手にするのです。

この物語はなんと実話で、ジェームズ自ら執筆しイギリスでベストセラーとなった伝記「ボブという名のストリート・キャット」を映画化したもの。しかも茶トラ猫ボブを“本人”ならぬ“本猫”のボブが演じているというから、ますます驚き！

モフモフの毛並み、クリクリした綺麗な目、そして愛らしい表情と動き──特別なことをするわけでもないのに（肩に乗る猫は珍しいですが）誰もが癒やされ、奇跡のような実話に素朴かつリアルな温もりを添えていきます。（ちなみにボブは乳製品が大好きで、映画の出演ギャラもWhiskasのキャットミルクとKRAFTのチーズだったとか）。

ここで面白いのが、見ず知らずの人たちが「こんな可愛い猫を飼っているんだから、悪い人なはずがない」とばかりに、ジェームズに笑顔で気さくに話しかけてくれること。

人というのは無意識のうちに思い込みや偏見にとらわれ、人間関係の限界を自ら狭めてしまうことがあります。

愛くるしいボブがそうした心の垣根を取り払うことで、交流の輪が無限に広がっていく光景を見ていると、なんだかこれまで以上に他人に対して優しくなれそうですね。

“幸運の招き猫”ボブのおかげで人生のセカンドチャンスを手に入れたジェームズですが、思わぬトラブルや薬物との戦いなど、次々と試練に見舞われます。そうやって何度もくじけそうになるたびに彼を支えてくれるのがボブです。

これがファンタジーであれば何か魔法のような奇跡が起きるところでしょうが、もちろんこの物語は現実なので、ボブはジェームズのそばにただ黙って寄り添うだけ。それでもボブの存在が「俺は一人じゃない」「ボブを養うためにも俺がしっかりしないと」と励みになり、ジェームズを立ち上がらせてくれるのです。

“大切な人を支える”という行為は、必ずしも具体的かつ直接的な手助けだけではありません。ただそばにいてそっと見守るだけでも、その人にとって大きな支えになる──そんなかけがえのないメッセージを1人と1匹が教えてくれます。

人間と動物が交わすかけがえのない絆で元気や感動を与え、さらに大切な人の支え方のヒントを与えてくれる、奇跡のような実話をぜひ家族みんなでご鑑賞ください。猫派ならずとも必見ですよ！

『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』 （2016年） ／イギリス／ 上映時間：105分
監督：ロジャー・スポティスウッド
出演：ルーク・トレッダウェイ（「アタック・ザ・ブロック」「タイタンの戦い」など）

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