夫婦円満の秘訣は「ゆとり」!コロナ禍でも絆が深まる共働き家庭の時産術

夫婦円満の秘訣は「ゆとり」!コロナ禍でも絆が深まる共働き家庭の時産術

夫婦円満

目次[非表示]

  1. コロナ禍による生活の変化で絆が深まる/深まらない夫婦の分かれ目は?
  2. ニューノーマル時代の夫婦にはどんな「ゆとり」が必要か?
  3. 円満夫婦に必要なゆとりを産むコツ
テレワークへの移行や外出時間の激減など、コロナ禍で働き方やライフスタイルが一変したという家庭は少なくないでしょう。そうした状況下でたびたびメディアを賑わせたキーワードが、コロナ禍をきっかけに夫婦仲が悪化し離婚に至るという「コロナ離婚」。まだ統計上の確かな因果関係はないものの、コロナ禍が夫婦関係にも大きな影響を及ぼしていることは否定できません。

では、そんなコロナ禍において円満な夫婦関係を築くにはどうすればいいか? 今回は、時短(タスクの省略・手抜き)という考え方から、生活者の暮らしにゆとりや家族との豊かな時間を産むこと…“時産”を支援する「ゆとりうむプロジェクト」の理事長であり、立命館大学産業社会学部教授の社会学者・筒井淳也先生にインタビューし、ニューノーマル時代の円満夫婦のあり方を探ってみます。

インタビューに応じていただいた筒井淳也先生(立命館大学 産業社会学部教授 社会学者)

コロナ禍による生活の変化で絆が深まる/深まらない夫婦の分かれ目は?

──コロナ禍が家庭生活や夫婦関係に及ぼした大きな影響・変化として何が挙げられますか?

「ゆとりうむプロジェクトが2020年7月に全国の既婚有職女性400人に行った調査によると、ステイホームを通じて家事分担の必要性を感じたと答えた方が54.1%だったのに対し、実際に夫婦で協力する機会は変わっていないと答えた方は60.3%。つまり、コロナ禍をきっかけに在宅時間が増え、またステイホームで量が増えた家事を分担する必要性は認識しているものの、家事分担が進んだという変化はあまり見受けられないのが現状です」

──ステイホームで増えた家事の負担が夫婦の一方に偏りやすい状況にあるのですね。他にも夫婦関係に負の影響を与えかねない、気になる変化はありますか?

「大企業を中心にテレワークにシフトした企業が増えた一方、接客を務めるサービス業ではなかなかそうもいかない。その結果、夫が家にいて妻が外へ働きに出るというケースもありますが、それなのに夫が妻に家事を任せっきりだと『なんで家にいるのにやってくれないの?』と妻が不公平に感じても致し方ありません。実際に統計でも、家族の在宅時間が長いほど妻に不満が出やすいというデータが出ています」

──家で過ごす時間が増えるのはいいことですが、場合によってはそれが負の影響になりかねないということですね。

「もう一つコロナ禍で注意したいのは、外部との接触機会が制限されてしまうという状況。仕事仲間やママ友など家族以外の人との会話で精神的ストレスを軽減している女性にとって、これは深刻な変化です。家で子どもの世話に追われ、夫も話をちゃんと聞いてくれないとなると、精神衛生を保つことが難しくなります。しかし、おしゃべりが好きじゃない男性にとってそういうストレスは共感しづらく、夫婦間で行き違いが生じる可能性があります」

──そうした夫婦仲が悪化するケースとは対照的に、コロナ禍をきっかけに夫婦の絆が深まったという声も聞きます。なぜそのような差が生じるのでしょう?

「これはコロナ禍前後を問いませんが、重要なのは普段からコミュニケーションできていること。夫婦がちゃんと向き合い『今日こんなことがあったよ』『最近こんなことで悩んでるんだ』といった会話が日々できていると、夫婦間の問題はあまり蓄積されません。ただしせっかく話をする時間を確保しても、相手も自分と同じ価値観だと思っていると会話は機能しません。価値観が違うという前提に立った上で相手を尊重し相互理解に努めることが、夫婦として実のある会話を実現するためには大事です

──コロナ禍で外部との接触が制限される今、夫婦間のコミュニケーションはよりいっそう重要さを増しているのですね。

「子どもができると生活の中心が子どもになってしまい、コロナ禍で夫婦間に問題が生じているにもかかわらずお互いに向き合えず、関係が冷めるというケースは少なくありません。子どもが独立してからの長い老後のことも考えると、子どもがいない時に行う夫婦の会話や愛情のメンテナンス、そしてそのための時間づくりは重要でしょう

──子どものいる家庭ではありがちなケースですね。

「まだしっかりと立証されてはいませんが、私の研究では、結婚してから子どもを産むまでの期間、いわゆる“新婚期間”が長いほど夫婦関係がうまくいっているという傾向がみられました。『家族で賑やかに楽しく過ごせていれば問題ない』と楽観していると、夫婦としては長続きしないかもしれません」

──日々、仕事や家事育児に追われていると夫婦の時間が二の次になりがちですが、油断してはいけないということでしょうか。

「はい。もう一つ、夫婦円満に大切なポイントは“想像力”。仕事も家事も、自分がやってないことの大変さはなかなか実感が湧かないですよね。でも、例えば食事の準備であれば、単に料理するだけでなく、食材の調達や在庫管理、献立作りなど、通常の仕事と同じでいろいろ工夫も必要。そうした裏仕事の大変さまで想像できるようになると、よりパートナーを思いやることができるでしょう」

ニューノーマル時代の夫婦にはどんな「ゆとり」が必要か?

──夫婦が円満でいられるには具体的にどのような「ゆとり」が必要なのでしょうか?

「まず基本となるのは、自由な時間があるという『時間的ゆとり』です。自由な時間とは、やりたいことをやる、休みたければ休む、したくないことはしないなど、行動を自由に選べる状態のこと。共働き夫婦にとって仕事と家庭の両立は大きな目標ですが、仕事と家事育児をこなすだけで24時間が埋まったら、両立はできても何のために生活しているか分からなくなりますよね。また、家事育児という無償労働を行っている専業主婦にとって、家にいるからといってすべての時間が自由ではありません。そうした時間に対しての意識改革が必要なのです」

──他にも必要な「ゆとり」はありますか?

「時間の使い方と関連してくるものですが、『空間的ゆとり』です。日本の住宅事情で一人ひとりに個室や仕事部屋を与えるのは現実的に難しいので、同じ空間を『昼間は在宅ワークスペース、夜は家族がくつろぐ場所』と時間を区切って使い分けたり、あるいは同じ空間にいながら個々が別の趣味やタスクを行えるよう許容するといいでしょう」

※『空間的ゆとり』を産む住まいについてはこちらを参照ください(ゆとりうむプロジェクト)
https://yutorium.jp/suggestion/02.html

──夫婦いずれかがテレワークを行っている家庭だと特に、そうした工夫をしないと自分の空間の確保が難しいですね。

「もう一つ必要なのが『心理的ゆとり』です。夫婦といえど、お互いまったく同じ世界に生きているわけではないし、価値観がまったく同じわけではありません。そうした中で夫婦関係を持続するためには、個々が自立しながら心理的な距離感を程よく取ることが重要。つまり、ゆとりとは、いい意味での“家族の個人化”を確保することです」

──『時間的ゆとり』『空間的ゆとり』『心理的ゆとり』、この3つのゆとりを産むには夫婦でどう取り組めばいいのでしょか?

「まずはゆとりを産むための目標を夫婦で共有することが重要です。ただし、いざ実行へ移るにあたって、単に“家事を手伝う”という意識だとうまくいかないかもしれません。与えられたタスクをこなすだけだとパートナーの負担が増えかねないので、どうすれば相手の負担が行動面や心理面において減らせるか?まで想像してみてください。そうすることで、単に作業を分け合うだけではない、本当の意味での協力体制を築くことができるでしょう」

円満夫婦に必要なゆとりを産むコツ

──ゆとりを産むための具体的な第一歩を踏み出すには、どのようなアクションが有効でしょう?

大きな変化から取り組むよりも、まずはちょっとした工夫を積み重ねていってはいかがでしょうか。例えば、在宅ワークに適した住環境を作るにあたって、いきなり家の構造をガラッと変えるのは難しくても、ちょっと視点を変えた工夫を組み合わせることで変化を産むことは可能です」

──ちょっとした工夫だとアイデアも湧きやすいし実行にも移しやすそうですね。

「一方で、人間というのは年を取れば取るほど生活パターンを変えることを嫌う傾向にあります。ゆとりを産むために新しいシステムに取り組むのであれば、最初はできるだけ時間と意欲を確保し、気合を入れてスタートするといいでしょう。例えば、ゆとりうむプロジェクト理事の西川剛史さんが提案している『下味冷凍』。週末に食材に下味をつけて冷凍しておくと、平日にクオリティの高い手作り料理を楽に出すことができるというものです。慣れるまでが面倒ですが、最初の段階で頑張って覚えればすぐに慣れて効率的に行えるようになります」

※『下味冷凍』についてはこちらを参照ください(旭化成ホームプロダクツ)
https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/preservation/shita-aji.html

──仕事もそうですけど、最初は難しくても挫折せずに継続すれば、いつの間にか苦にならなくなりますよね。

「最初が肝心という意味では、仕組み作りも重要です。例えばちょっと忙しい時や休日に夫婦の時間を作りたい場合に子どもを預かってもらうなら、親以外だとベビーシッターに頼むのが現実的でしょうが、信頼できる人を探すのは大変ですよね。でも、そうした最初の面倒くささを乗り越えて仕組みさえ出来上がれば継続しやすくなります。また、子どもがある程度大きければ、マンションのコミュニティ内や信頼できる友人と子どもを預け合う仕組みを作るのもいいでしょう」

──面倒くささと向き合う覚悟が必要ということですね。他にも、ゆとりを産むためにオススメのアイデアはありますか?

「先ほど挙げた下味冷凍は料理のクオリティと時産を両立する手段ですが、一方でインスタント食品を使うなど“両立をあきらめる(妥協する)”という発想もあります。ただしインスタントといっても、フリーズドライ食品なんて最近はクオリティが高いし、今まで出汁から作っていたみそ汁をインスタントに変えても家族が気づかないこともあります。時間がある時は料理にこだわるのも大事ですが、そうじゃない時は遠慮なくインスタント食品を活用してもいいでしょう」

──家事に完璧を求めすぎないことも、ゆとりを産むには大切な発想ですね。

「ただ、家事の負担を軽減するにも効率化には限界があるし、育児はそもそも効率化できないもの。そこでオススメしたい発想の転換が、自分にとって楽しいと思える要素を混ぜることです。例えば、普段は出汁から作っているみそ汁をこっそりインスタントに変えて家族の反応を楽しむとか(笑)。こうしたゲーム感覚を取り入れることで、家事の負担軽減の根源にある『家事は辛いもの』という価値観も改革できるのではないでしょうか」

──家庭で家事や育児に費やす時間を産むには、働き方を見つめ直す必要もあるのではないでしょうか?

「働き方に個人の裁量が認められている会社ならいいのですが、最近になってテレワークから出社への揺り戻しが見られるように、個人の工夫で働き方を変えるには限界があります。そんな中で一社員にできるのは、働く仕組みを作るマネージャーに対して会議などで働きかけること。あるいは課単位の現場レベルで『この働き方はムダだな』と問題提起し改善するぐらいは可能でしょうから、管理職の方にはぜひリーダーシップをふるっていただきたいです」

──最後に、多くの夫婦がゆとりのある生活を送れるよう、ゆとりうむプロジェクトが目指すものがあればお聞かせください。

「まずは、ゆとりうむプロジェクトがキーワードとしている“時産”の大切さを伝えること。そして何より、日本人は働きすぎです。そうした価値観を転換するためにも、家事・育児・介護などの無償労働を含めた仕事で生活を敷き詰めてはいけない、というメッセージを伝えていきたいです」

■ゆとりうむプロジェクト
ゆとりうむプロジェクトは、「時産」により生活者の暮らしにゆとりを産むことを支援するプロジェクト。複数企業や団体が参画し、さまざまな各社の商品やサービスを活用した「ゆとり」を産むノウハウや情報を提供します。
URL: https://yutorium.jp

<専門家プロフィール>
筒井 淳也(立命館大学 産業社会学部教授)
1970年生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。博士(社会学)。現在は立命館大学 産業社会学部教授。主な専門は家族社会学・計量社会学。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)など。

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