
【腕時計のお手入れ術】毎日の必需品であり第一印象を決める装飾品!一生モノの腕時計をずっと使い続けるためには
日々の生活用品や趣味のこだわりアイテムなど、大切なモノを長く愛用し続けるために必要な“お手入れ”術を、各アイテムの取り扱いを熟知した専門家たちに解説していただく「こだわり品のお手入れ術」。
第8回のテーマは「腕時計」。時計の修理・オーバーホール専門店のWATCH COMPANYさんに、日常的に手軽に行える腕時計のメンテナンス(お手入れ)や、定期的なオーバーホールのススメについて解説いただきます。
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ステンレスだってサビる! 外装部分のメンテナンス術
腕時計は肌に直接密着した状態で装着するため、他のファッションアイテムと比べて汗や汚れが付きやすくなります。
付着した汗や汚れをそのままにしておくと、外観の美しさを損ねるだけでなく、内部の精密機械の故障の原因となってしまいます。
高級時計の外装によく用いられる素材といえば「ステンレススチール」。
STAIN(汚れ・サビ)LESS(なし)という名の通り、汚れやサビに強い金属ですが、毎日の使用によって付着した汗・皮脂・ほこりなどの汚れを蓄積させたまま使用し続けると、腐食が起こってしまうことがあるのです。
(写真左)使用により汚れてしまったブレスレット
(写真右)付着したままにした汚れ部分が腐食
また、革ベルトの場合も、汗水を吸収してしまうと尾錠(バックル)の穴の部分からひび割れを起こすことがあります。
このようなダメージを与えないためにも、できれば腕時計を着用し終えるごとに、それが難しければ週に一度など一定期間のタイミングで拭き掃除や汚れの除去を行ってください。
基本的には次のような道具を使って丁寧に汚れを落とすだけで、専門的な技術は不要です。
お手入れアイテム1. マイクロファイバークロス
細かい繊維で作られたクロスを、乾いた状態でご使用ください。
他にも、シカの革を植物油でなめしたセーム革なども時計の外装を拭くのに適しています。
なお、クロスは革ベルトの拭き掃除にも使えますが、強くこすると革のコーティングを傷めることがあるので、ソフトに拭いてください
お手入れアイテム2. 豚毛ブラシ(ナイロン刷毛)
時計ケースとブレスレットの間や、ブレスレットの駒間を磨くことができるブラシです。
毛先が柔らかいため、時計を傷つけることなく汚れを落とすことができます。
防水性能のはずが水入りしてしまう…その原因は?
修理のため時計をお預かりしたお客様から「自分が持っている時計の防水性能はきちんと機能しているのか?」とよくご質問をいただきます。
メーカーが定めている時計の防水性能は、各部位の防水構造がきちんと整備されていることが前提になります。もしも部位の劣化や変形によって本来の防水性能が発揮できない状態だと、時計内部に湿気や汗が侵入し、サビついたり部品が損傷を受けるケースがあります。
時計ケースで水の浸入する可能性がある部分は、一般的に下記の箇所になります。各部位に異変がないか日ごろから気にかけておきましょう。
1. ガラス部(ガラスとベゼル、またはミドルケースの接合部)
2. 裏蓋部(裏蓋とミドルケースの接合部)
3. リューズ部(リューズとミドルケースの接合部)
4. その他特殊構造部(プッシュボタン、ヘリウムガスエスケープバルブなど)
また、時計のムーブメントをホコリ・湿気・水分から守るために、時計の使用目的別に耐水性の規格と防水仕様の区分が分けられています。これらの違いを理解した上で、ご自身の時計の防水性能に合った正しい使い方を守ってください。
【日常生活用防水】(3気圧防水程度)
・日常生活での汗、洗面、雨などに耐えられるもの。
【日常生活用強化防水1】(5気圧防水程度)
・水に触れる機会の多い水仕事、ヨットなどのスポーツに使用可。
【日常生活用強化防水2】(10〜20気圧防水程度)
・水に頻繁に触れる仕事や素潜りなどに使用可。
【潜水用防水】(100m、200m、300m防水)
・水深100〜300mまでの耐圧性と、長時間の水中使用に耐えることのできる性能。スキンダイビング、空気ボンベを使用するスキューバダイビングなど。
【飽和潜水用防水】(200m以上の防水)
・表示水深耐圧性と、ヘリウムガス対策の機密構造を持つ時計。ヘリウムガスを使用する潜水方式にも対応可。
また、実際に海やプールで腕時計を装着する際は、リューズやプッシャー(特にねじ込み式のモデル)の締め忘れがないようにしっかりとチェックした上でご使用ください。
リューズが開放していると、防水性がなく浸水する状態になります。そして使用後はしっかりと水気を取るなどのお手入れもお忘れなく。
プロによる定期的なオーバーホールのススメ
とはいえ、いくら日ごろから熱心にセルフメンテナンスをしていても、外装や内部の汚れを完全に防げるわけではありません。また、腕時計はどうしても使用と共に経年劣化(摩耗や変形)してしまいます。
機械式時計には多数の部品から構成されていて、一つ一つの部品がかみ合うことによって作動しています。部品と部品の間の油が劣化・酸化することによって部品が磨耗すると、時計精度の悪化や止まりにつながってしまいます。
腕時計を長い間良好な状態で使い続けるためにもぜひ、専門店で3〜4年に一度はオーバーホールを受けてください。
オーバーホールとは、機械製品を部品単位まで分解し清掃・再組み立てを行って新品時の性能状態に戻す作業のことです。
またオーバーホールのタイミングに合わせて、消耗した革ベルトの交換などもオススメします。
1. 分解
時計の部品を完全に分解します。
2. 洗浄
分解した時計をバスケットに納め、時計洗浄専用の超音波洗浄機にかけ、部品の細かい汚れもしっかりと落とします。
3. 組み立て&注油
洗浄が完了した部品を、元の状態に組み上げます。
また、組み上げと同時に部品間の注油を行います。注油することによって、時計のコンディションを新品さながらにすることができます。
4. タイミング調整
組み立てが完了した時計の精度を調整します。当社で修理した時計は、ご購入当時の精度に極力近づけるよう調整いたします。
ビジネスシーンやプライベートで身に付ける機会の多い腕時計は、普段アクセサリーを身につけない男性にとっては特に大切な装飾品。
しかし、せっかくの高級な腕時計でも汚れていたらあなたの印象を損ねてしまいます。
機械式時計は精密機器です。日常の使用方法やメンテナンス、さらにオーバーホールを受けていただく頻度によって、腕時計の寿命は変わってきます。
目立たない汚れやダメージでも蓄積されていくと腕時計は損傷し、その損傷が大きければ大きいほどメンテナンス費用も高額になってしまいます。
見た目の美しさと性能を保持できるよう、正しい使い方とこまめなお手入れを習慣づけ、大切なこだわり腕時計を末永く愛用してください。