育休って大変だけど面白い!WOWOWドラマ『男コピーライター、育休をとる。』プロデューサーが語る“選択肢になるコメディ”制作秘話

育休って大変だけど面白い!WOWOWドラマ『男コピーライター、育休をとる。』プロデューサーが語る“選択肢になるコメディ”制作秘話

育休

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  1. コメディとして楽しみながら「育休ってアリかも」と思ってもらえたら十分
  2. 誰もが共感しやすい“意識フツー系パパ”瀬戸康史の誠実さと憎めなさ
  3. 家族も自分も喜べるパパライフのヒントに
改正育児・介護休業法によって2022年から企業が社員に育休取得の意思を確認するよう義務づけられるなど、男性が育休を取りやすい環境が少しずつ整いつつあります。そんな中、「育休を取ってみようかな」と関心を寄せるパパやプレパパも少なくないと思いますが、社会全体での男性育休取得者はまだ少数派(2019年度で取得率7.48%※)。それゆえ経験者の声を聞く機会に乏しく、「育休を取ったら何をするの? 生活はどう変わるの?」と現実的なイメージが湧きづらいことも…。
※厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集」

そんなパパたちにぜひ見てほしいドラマが、2021年7月9日(金)からWOWOWでオンエアされることになりました。広告代理店でコピーライターとしてバリバリ働く魚返洋平(うがえり・ようへい)さんのリアルな育休体験記を原作とした『男コピーライター、育休をとる。』です。今回は番組のプロデューサーを務めた井口正俊さんと中澤研太さんにインタビューし、ドラマ化の背景や、“意識高い系”ではない普通の男性の育休ドラマに込めた想いについて語っていただきます。

<プロフィール ※本文敬称略>
井口正俊さん(写真右)
株式会社 WOWOW コンテンツ制作局 ドラマ制作部 プロデューサー。1984年東京生まれ。「ドラマを作って人を感動させたい」という想いで2015年にリクルートを退社しWOWOWへ。主な担当作品に『食い逃げキラー』『彼らを見ればわかること』『密告はうたう 警視庁監察ファイル』など。

中澤研太さん(写真左)
株式会社 東北新社 映像制作事業部 プロデューサー。1975年東京生まれ。CM本部での下積み期間を経て実写ドラマ、映画、広告映像のプロデュースに携わる。尊敬する人はリュック・ベッソン。主な担当作品に『ロマンス』『さぼリーマン甘太朗』『GARO VERSUS ROAD』『声優探偵』など。

<WOWOWオリジナルドラマ『男コピーライター、育休をとる。』ストーリー>
広告代理店に勤めるコピーライターの魚返洋介(瀬戸康史)は妻・愛子(瀧内公美)から妊娠を告げられ、ふとしたきっかけで6ヵ月の育休取得を決意。そしてついに娘が誕生するが感激したのもつかの間、後輩のサポートも労働時間のルールもない波乱と混沌の日々が幕を開ける…。

WOWOWオリジナルドラマ 男コピーライター、育休をとる。/プロモーション映像【WOWOW】

出典: YouTube

コメディとして楽しみながら「育休ってアリかも」と思ってもらえたら十分

──まずは『男コピーライター、育休をとる。』をドラマ化しようと思ったきっかけを教えていただけますか?

井口「魚返さんのコラムを最初に読んだのは、まだ書籍化される前のWEB連載。当時は子どもが生まれたばかりでしたが撮影が重なっていたこともありなかなか育児に主体的に関わることができず、『ここまで育児を本気で考える人がいるなんてスゴイ!』と遠い世界のように感じる程度でした。その後、2020年の5月にコロナ禍の影響で1ヵ月ほど在宅することになり、共働きの妻と家事育児を分担しながら子どもと一緒に過ごすという疑似的な育休体験を通じて『こんな世界があったのか』と気づかされました。すると『実際に育休を取っていたらどうだったのかな?』と考えるようになり、コラムを改めて読み返すことにしたんです」

──最初に読んだ時と感じ方に変化はありましたか?

井口「腑に落ちることだらけで、全然違いましたね。特にあとがきのエピソードに心を動かされ、そのシーンにたどり着くドラマを作ってみたくなりました。また、個人的な動機ですが、自分が育休を取れなかったぶん、ドラマを通じてそのモヤモヤと向き合うことができるんじゃないかなとも思ったんです」
▼原作本『男コピーライター、育休をとる。』について詳しくはこちら
──魚返さんのコラムはユーモアを交えた軽妙なタッチで、シリアスな作品が多いWOWOWドラマの題材に選ばれるのは意外な気もしました。

井口「確かにWOWOWのドラマはシリアスなサスペンスが多くて、自分自身も携わっていますが、自ら企画を立ち上げるにあたり自分の身の周りの世界に関わるもので提案したいと思って、そうやって取り上げた題材が結果的にコメディだっただけなんです」

──男性の育休というテーマがテーマだけに、コメディタッチではなくシリアスな社会派ドラマとして描くこともできたと思うのですが?

中澤「男性に育休の意義を真面目に啓蒙するような優等生ドラマって、正直あまり見る気がしないと思うんですよ。井口さんとも話し合い、コメディとして爆笑するうちに“大切な何か”に気づいてもらえるような形がベストじゃないか、という共通認識に至りました」

井口「WOWOWでは配信サービスでも見てもらえるようなドラマ作りに力を入れています。私も『通勤時間で見られるような作品にしたい』という思いがあり、そうなるとあまりヘビーな内容にはしたくなく、クスッと笑えるような温度感がちょうど良いのではと考えました」

──このドラマを見てほしいターゲットとしてどのような人たちを想定しましたか?

井口「すごく狭く言うと、数年前の“育休を取ろうと考えていなかった時”の自分に向けて作りました。ただ、中澤さんもおっしゃったように『育休を取ろう』と1つの結論を押し付けるドラマにはしたくなく、視聴者が『育休を取ったらこんな世界がありますよ』と疑似体験し、あくまで選択肢の一つとして受け止めてもらいたいという思いがあります」

中澤「これから子どもが欲しいと思っている夫婦はもちろんですが、これから結婚したいと思っている男女にも、“男性の育休という選択肢”を見ることで結婚・出産をポジティブに考えてもらえると嬉しいですね。さらに自分もそうだったのですが、このドラマの主人公よりも上の世代であまり育児に関わらなかった男性たちが見ても、奥様への感謝の気持ちが芽生えたり、自分の部下や息子など若い世代の選択肢として育休を受け入れやすくなるかも」

井口「育休の当事者以外の方たちにも『育休ってこういうものなのか』と感じてもらえれば、職場で誰かが育休を取りたいと言った時に今までとは見え方が変わることもあるかもしれませんね

中澤「ドラマの本編をご覧になった方から『自分には子どもはいないけど、心が温まった』と感想を伝えていただいたことが今でも印象的で、そんなふうにリアルタイムの子育て世代以外にも広く楽しんでいただけると嬉しいですね。エンターテインメントドラマとして面白く見て、『育休って楽しそうかも』と思ってもらえたらそれで十分です」

誰もが共感しやすい“意識フツー系パパ”瀬戸康史の誠実さと憎めなさ

──コラムである原作をストーリー仕立てにするにあたって、重点を置いたポイントは?

井口「コラムには魚返さんの奥さんがあまり登場しませんが、ドラマとなるとその存在は不可欠なので、妻のキャラクター造形や夫婦の関係性を脚本家の細川徹さんと一緒に膨らませました。そのイメージに広がりを持たせるため、私と中澤さんと山口淳太監督で出し合った『育児絡みで妻に怒られたり気まずくなったエピソード』を、細川さんにお伝えして脚本執筆の材料にしてもらっています

中澤「私は妻に怒られた記憶があまりなく、むしろほめられたことの方が印象に残っています(笑)。今思うとうまくおだてられていたんでしょうが、男性は妻にほめられると嬉しくてやる気になるじゃないですか。そういう感覚を細川さんに伝え、脚本にも落とし込んでもらいました

井口「妻にしょっちゅう怒られている男性は世の中に多いかもしれませんが、中澤さんの経験をミックスすることで、妻が夫を怒ってばかりというステレオタイプな夫婦描写を避けることができたかもしれないと思います。そもそも怒っているシーンばかりだと、見ていて疲れますしね(笑)」

──複数の家庭の実体験を持ち寄ることで、リアルな夫婦関係を肉付けしていったわけですか。

井口「はい。もう1つ原作からアレンジした大きな要素が主人公のキャラクターです。原作では最初から魚返さんが育休を主体的にとらえていますが、そうしたスタンスをスタート地点にするとドラマ全体の最初と最後のギャップや主人公の成長が生まれづらい。そこで魚返さんの了承を得て、最初は育休のことを全然理解していないというキャラクターに変更することで、ドラマを見てくれる方たちも親近感が湧きやすく主人公と同じ目線に近づけたいと思いました」

──瀬戸康史さんを主人公に起用したのも、そうしたキャラクター像にマッチするという狙いがあったからですか?

井口「育休と向き合う主人公の目線を通して、視聴者が素直に物語を見れるかどうかがこのドラマの生命線になると思ったんです。その点、瀬戸さんは誠実さや人としての温かみが感じられる俳優さんで、視聴者も瀬戸さんの目線で見てくれる気がしたんですよね。そうした瀬戸さんの主人公とのバランスを考えて、妻役は自然なお芝居が魅力的な瀧内公美さんにお願いし、本物の夫婦にしか見えない『魚返夫婦』を作り上げて頂いたと思います」

中澤「このドラマでは夫が子どもじみていて、妻の方がはるかに大人。そうした大人になりきれない一面を瀬戸さんがうまく演じているので、男性が見ると共感できるんじゃないかな(笑)

井口「私が好きなのは、育休中に家を抜け出してラーメンを食べに行くシーン。その子どもっぽいけど憎めない魅力は瀬戸さんならではですね」
──他にもドラマのテーマ性を際立たせる上で意識したキャラクターはいますか?

井口「育休経験者として俯瞰的に寄り添ってくれるカマチ(赤ペン瀧川)と、まだ結婚しておらずニュートラルな立場にいる新入社員の今泉(福地桃子)を、視聴者に近い目線で主人公を客観的に見守る立場として描いています。彼らの目線を通して、主人公や育休というものが、より多面的に見えてくるといいな、と思っています」

──ドラマの世界観のリアリティを損なわないよう、気をつけたことはありますか?

中澤「監督も脚本家もプロデューサーも全員男性なので、ドラマが男目線にならないか?女性にとって絵空事に見えないか?という不安が常にありましたね。そこで女性のスタッフたちに脚本を読んでもらい『どう思う?』と何度も尋ねました」

井口「具体的なリアリティ構築は監督の山口さんや脚本家の細川さんにお任せしていましたが、私自身『誰かの選択を傷つけるようなドラマにはしたくない』という思いがあり、例えば育休について書かれているいろんな人のブログを読んだりして、ドラマの内容が誰かのことを傷つけたり、否定するものになっていないかは慎重に検証するよう心掛けました」

家族も自分も喜べるパパライフのヒントに

──ドラマで特に注目してほしいシーンやこだわりのポイントはありますか?

中澤「全体的に大きな事件が起こらない中でも見ている人の心に引っかかるよう、いろんなシーンに仕掛けをしています。例えば生まれて間もない、あまり外出ができない時期を描く第4話、本編15分間で描かれるのは、主人公の自宅のリビングルームでの出来事だけです。それでも細川さんの奇想天外な脚本構成と、山口監督の振り切った演出のおかげで飽きさせず、“新しい15分”を作ることができたと思います」

井口「最終話のエンドロールで各話の出来事がダイジェストのように流れるのですが、ぜひご覧いただきたいです。それまで主人公と一緒に気づきを得たり彼の成長を見届けた上で改めて見ると、各話で見た時とは感じ方が違ってくると思います。魚返さんは原作のことを『育休を体験するとどんな景色が見えるかを案内する旅行記』とおっしゃっていて、視聴者にも旅を終えてアルバムを見返すような感覚で最後まで楽しんでほしいですね」

──原作では全体の半分が育休後のエピソードを描いていますが、ドラマの全12話はどのように構成されていますか?

井口「10話で育休が終わり、残り2話で育休後のエピソードを描いています。現実の育休でも復職してからも苦労することが多いでしょうし、育休の前と後で仕事のスタイルに変化が生まれたりすることはこのテーマを描く上で外せないことなので、何をどのように描くか、何度も議論して脚本を作りました

中澤「育休描写がメインになりすぎて、仕事は二の次だと見えるようにはしたくなかったんです。育休後も主人公夫婦が育児と仕事を両立させようと頑張る姿を描くことで、『こういう選択も面白そう』と感じてもらえると嬉しいですね

──今回ドラマを作っていった中で、お二人が改めて育休について気づきを得られたことはありますか?

井口「いまだに『育休を取る=休暇を取る』と思われがちですが、原作でも書かれているように育休とは“休暇”ではなく、会社の仕事を休んで育児という仕事をする期間なんだと改めて気づきました。ドラマを見て頂くと、きっと分かって頂けるのではないかと思います」

中澤「子どもをちゃんと大人に育てるのは、実はスゴイこと。そのために半年間育休を取って自分の仕事を止めたとしても、子どもの将来を考えると全然アリだと思えるようになりました」

──最後に家menのパパ読者にメッセージをお願いします。

井口「見て頂く方の反応として一番気になるのが、実は家men読者のように家事育児に熱心なパパたちなんです。1話15分で12話構成のドラマだと、どうしても育児を断片的に切り取らざるを得ず、『実際はこんなもんじゃない』と感じるかもしれません。また、主人公もイクメンとして劇的に成長するわけではなく『魚返もまだまだ』と思うかもしれません。それでもどこかの台詞やシーンに『そうだよな』と共感して頂いたり励まされたりすることがあればいいな、と思っています」

中澤「私が家庭で家事や育児に励むのは『家族に喜ばれたい』『妻にほめられたい』という気持ちが行動原理となっていて、このドラマの主人公にもそうした自己満足はあると思います。ただし自己満足といっても、家族を喜ばせることが自分の楽しさにもつながるわけで、『仕事も育児も充実させるにはこういうやり方もあるのか』と感じてもらえると嬉しいです

■WOWOWオリジナルドラマ『男コピーライター、育休をとる。』
2021年7月9日(金)放送スタート
※第1回放送終了後、WOWOWオンデマンドにて全話一挙配信
原作:魚返洋平『男コピーライター、育休をとる。』(大和書房刊)
脚本:細川徹
監督:山口淳太(ヨーロッパ企画)
出演:瀬戸康史 瀧内公美 赤ペン瀧川 福地桃子 少路勇介 池田成志 村上淳 ほか
制作協力:東北新社
製作著作:WOWOW
番組HP https://www.wowow.co.jp/drama/original/ikukyu/
※「無料トライアル」を実施中!
詳しくはこちら https://www.wowow.co.jp/webdirect/

画像提供:WOWOW

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